第3話その男、独身につき

中原はホワイトボードの名前の欄に、直帰と書いて営業に出た。

自由になったのは、夕方5時過ぎ。

得意先からぶらぶらとガード下の居酒屋付近に汗を流しながら歩いていると、

「中原さ~ん」

と、呼ばれ振り向くと総務課の水原と田中が近付いてくる。

「中原さん、居酒屋さがしてるの?」

「水原ちゃんじゃないか、ガード下の居酒屋が目移りしちゃって、オススメの居酒屋ない?」

すると、田中が、

「千代はどうですか?」

「千代?あの外観が汚え店?」

「千代は外観悪いけど、店内はきれいなんですよ!ね、 水原さん」

中原は決心して、

「じゃ、千代にしよう。早く涼みたい」

3人は居酒屋千代に向かった。

店内は中原が思っていた以上にキレイで客が入っている。

テーブル席に座り、生ビールと旬のタコぶつを注文した。

3人は乾杯して、中原は1口でジョッキのビールを3分の2くらい飲んだ。

「プファ~生き返る~」

「中原さん、タコ美味しいです」

「でしょ?水原ちゃん。他のも頼んでいいよ。ここは僕の奢り」

水原はスズキの洗いを注文し、田中はトマトスライスだった。

「中原さん、秋の異動で係長になるそうですね?」

「田中ちゃん、誰から聞いたの?」

「え~と、中間庭さん」

「あのバカ、口が軽いな!」

「どうせ、秋には皆にバレるんですから」

「まぁ、いいだろう。君たち恋してるかい?」

「何ですか?いきなり」

「いや、うちの会社出会いがないじゃない」

「中原さん、何歳まで独身貴族を生きるんですか?」

「水原ちゃん、僕も好きで独身を貫いているんじゃないの!」

田中がトマトスライスんを頬張りながら、

「好きなタイプは?芸能人で言えば誰ですか?」

中原は黒ビールを凛ちゃんに注文した。アイドル並みにかわいい女の子だった。


「キャメロンかなぁ~」

「……」

「……」

「なんで黙ってるの?」

「じ、じぁ好きなタイプは?」

「週4ペースで、外で飲んでも怒らない人」

「はぁ~、中原さんに結婚は難しいわね。田中さん」

「右に同じく」

「あっ」

「なんですか?中原さん」

「岩がきがある」

「はぁ~、ダメだこりゃ」

水原は額に手を当てた。


3人は軽く飲んで梯子した。中原はチェーン店には絶対に行かない。

そして、なるべく日本料理しか食べない。

千代を出てから10分程歩き、中原御用達の店、居酒屋夜明けに入店した。

ここの店はもつ鍋が旨い。

中原は黒ビール、水原と田中はレッドアイを飲んでいた。

3人は座敷に座って、もつ鍋を食べていた。

カウンター席にいた客がハイボールを飲みながら、刺し身を食べていた。

刺し身にハイボールはないだろ?と思っていた。その客が喫煙するために席を立つとこっちを振り向いた。

「あっ」

「あっ」

「中原君じゃないか?水原ちゃんと田中ちゃんもいて」

「課長も一緒に飲みませんか?」

「え、いいの?」

「いいですよ、課長さん」

水原が言うと加藤課長はニッコリ笑って喫煙所に向かった。中原も一緒に向かった。

「課長、刺し身にハイボール合うんですか?」

課長は首を横に降った。

「ミスオーダーだった」

「でしょうね。ちなみにここのウイスキーはホワイトホースです」

「やっぱり」

2人は座敷にむかった。

課長は赤星で、もつ鍋を食し満足した。

4人が店を出たのは、22時であった。そこで、解散した。

女子がタクシーで帰るのを見届けた男2人は、

「中原君、バーボンでもどうだい?」

「そうくると、思ってました」

2人はオールド・クロックへ向かった。

翌日、課長と中原は激しい二日酔いに襲われて午前中まで死んでいた。

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