第2話焼き鳥の正しい楽しみ方

4人は焼き鳥の老舗、三嶋屋に入店した。

さすが金曜日、テーブル席が埋まっていて、カウンター席に並んで腰かけた。

付きだしはゴーヤの肉詰めだった。

中原と大島は黒ビール、中間庭はハイボール、加藤課長は日本酒のひやを注文した。

「では、諸君!二軒目乾杯」

ここの焼き鳥はきちんと備長炭で焼いている。

店内が肉の焼ける香ばしい匂いが充満している。

串盛りを2つ注文した。

「いや~、君たちのお陰で営業の伸びが良くてね、秋の人事異動で部長に昇格することになったんだ」

「おめでとうございます。課長!」

と、中原が言うと、

「君の係長昇格の話も固まっているのだよ」

「辞めてください。僕は役職者にはなりたくない!」

加藤は中原に耳打ちした。

「!!ほんとですか?」

「あぁ、本当だ」

「僕、係長頑張ります」


さて、串盛りが届いた。一番若い中間庭が、割り箸で串から肉を外そうとしていた。

大島が、

「中間庭、何やってるの?」

「みんな食べれるように、串から外してるんです」

それを聞いた中原が、

「おいおい、外すんじゃない。焼き鳥は口で串から離して食べるものだ。職人に怒られるぞ。なら、フライパンで焼こうか?ってね。気にしないで好きなの食べればいいんだ」

「勉強になります、中原さん」

それを聞いていた、職人が、

「お兄さん、分かってるねぇ」

「三嶋屋は大将の焼き方で繁盛してるんですよ」

「ありがてえなぁ~、お兄さん」


課長が、

「そういう、中原君も入社したては、何でもレモン搾っていたなぁ」

「あれは、若気の至りです」

「私はレモン嫌いなのに」

「なんだ、中原さんも僕と同じじゃなないですか」

と、中間庭が言うと、

「そうだなぁ」

と、言いながら黒ビールのジョッキを傾けた。

「中原さん、さっき課長から何言われたの?」

「大島、別に大した事じゃないよ」

「もしかしたら、給料の大幅値上げですか?」

「値上げはありあない。値上げは全然考えぬ~♪」

「高田渡じゃないんですから」

「ま、気持ち上がるだけ」

「いくら?」

「それは言えない」

「いくら?」

「こら、大島君。役職者は給料を口外しちゃいけないんだ。ま、特別だ。中原君の場合は、勤続年数と営業売上の成績で、これだ」

加藤課長は、指を8本立てた。

「な、何ですって!」

「口外するなよ、大島!よし、課長、ここは僕の奢りです。みんな、じゃんじゃんやってくれっ!」


気付けば、23時になっていた。中原は3万円払い、今夜の飲み会は解散した。

課長と中原はタクシーで帰って行き、大島は家族に車で迎えに来てもらい、中間庭をアパートまで送り、帰宅した。

大島は、中原や課長と仲良くしていて良かったと思った。


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