居酒屋へ行こう!

羽弦トリス

第1話夏と言えば

外回りの営業から会社へ戻ってきて、汗を拭いている男は、この物語の主人公である中原拓也(43)である。

「あ~、あっつ~い。なぁ、大島。今夜一杯どうだ?」

「中原さん、汗水垂らして僕らは外回りしてるんです。ビールくらい飲みましょう。バチはあたりませんよ」

彼の名は大島大介(37)。中原の後輩である。

「え、大島さん達、飲みに行くんですか?僕も参加していいですか?」

「もちろん、仲間庭なかまにわも、来いよ」

と、中原が声をかけた男は仲間庭秀一(29)である。

「うふん、ゴホン。君たちまだ仕事中だぞ」

「すいません」

「その飲み会に私も参加していいかな?」

こう言ったのは課長の加藤直樹(50)である。

「後、30分我慢しなさい。今日は金曜日だ。みんな、定時でアガるぞ!」


キーンコーンカーンコン


「よし、定時だ。今夜は割烹料理屋早水でいいかな?」

「はい。宜しくお願いします、課長」

中原達は内心、ラッキーだと思っている。必ず、課長が支払うからだ。


割烹料理屋早水


「こんばんはー」

「あら、中原さん。皆さんお揃いで」

「君たち、先ずは生ビールでいいかな?」

「はい」

「はい」

「うっす」

「ななみちゃん、生4つ」

「つまみなんだが、旬のスズキの洗いとゴーヤチャンプルでいいかな?」

「課長、後、焼きナスも」

「いい意見だ、中原君。大人になったな」

「はい、僕が入社した時は、加藤課長は主任でしたからね」

「君は万年、主任でいいのかね?」

「はい。出世には興味ありません」


「はい、お待ちどうさま。生ビールです」

「はい、ありがとう」

「みんな、暑い中外回りご苦労様。乾杯」


かんぱ~い。


「先ずはスズキの洗いです」

「これこれ、課長さすがですね?」

「まあな、大島君。仲間庭君も遠慮せず食べて飲みなさい」

「はいっ!」

しばらくして、ゴーヤチャンプルと焼きナスが出てきた。

「プファ~、焼きナスに生ビールは最高ですよ!課長」

「焼きナスの味が分かるとは。シブイ男になったな中原君。結婚はしないのかい?」

「相手がいません」

「君は総務課の水原君や、田中君とよく飲んでるではないか?」

「彼女らは、単なる呑み仲間ですよ」

大島は黒ビールを飲みながら、

「そのうち、恋が芽生えたり」

「ば、バカ言うでねぇ、恋か~。ななみちゃん、鯉の洗いを頂戴」


中原は鯉の洗いを酢味噌で食した。

旨い!

この会は、21時に終了した。

支払いは全額、課長が支払った。一万二千円くらいだった。

「君たち、二次会はどうだろうか?焼き鳥の三嶋屋でも」

全員が行きますと言った。

さて、焼き鳥屋はどんなエピソードが隠れているのか?

4人は外の喫煙所でタバコを吸ってから、三嶋屋へ向かった。

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