第9話 修羅場?【前編】
次の休日。
自宅マンションから徒歩二十分のところに最寄駅がある。今となっては人件費削減ということもあって、昨年度から無人駅と化してしまったが、住宅街ならびに大学がこの地にあるということもあって、一日の平均利用客数は五千人前後と田舎でもある鹿児島の中では地味に多い方である。が、近年では自家用車の普及もあって、年々利用客数は減少傾向にあるらしい。
まぁ、買い物するにしてもスーパーは近くにあっても大型ショッピングモールや家電量販店とかは少し離れた場所にある。車があれば、大量に荷物を運べるし、通勤通学にも使えるから交通費の点から考えると、そうなってしまうのも自然的な成り行きだ。
俺はまだ免許は取得していないため、当然ながら電車移動。
そう言えば、電車に乗るのは何気なく久しぶりだなと思いつつも、俺は流れていく車窓を眺めていた。
車内は休日ということもあって、多少混雑はしているものの平日と比べると空いていて冷房も程よく効いている。
「それにしても初めてのデートがねぇ……」
隣に座っている紗奈のジト目が胸に突き刺さる。
「マジでごめん……」
俺としては、面白そうだったから健人たちとのダブルデートを引き受けたが、紗奈としては二人っきりの方がよかったらしい。
事前に相談してから決めるべきだったなと今さらながらに後悔している。
「まぁ、裕くんとデートできるのなら別にいいですけどね♡」
「って、くっつくなよ。恥ずかしい……」
つくづく思うのだが、紗奈には羞恥心というものが欠如しているのだろうか?
こんな周りに人がいる中でいちゃつこうという考えを持っている奴らの頭が理解できない。
愛ゆえにそうなってしまうのか……よく巷では「恋は盲目」と言われているが、物理的な意味でも見えていないのだろう。
「え〜なんで嫌がるんだよ〜。昔は一緒にいちゃついてたじゃん〜」
「身に覚えのない記憶を捏造するな。あれは紗奈が勝手にくっついてきただけであって、別に俺からくっついてきたことは一度たりともないだろ」
昔からそうだ。
小さい頃はなんとも思っていなかったが、大きくなるにつれて、それが嫌になってきた。紗奈を異性として見ていたという証拠でもあるのだが、当時の俺からすれば女子にくっつかれるなんて恥ずかしさの骨頂でしかなかった。
「ふ〜ん、そうかな〜?」
紗奈が小馬鹿にしたようなニマニマとした嫌な笑みを浮かべる。
「何が言いたい?」
「あれは小学四年生の時だったかな〜? うちのおばさんが連れてきたトイプードルにビビり散らかして、私に抱きついてきたのは〜?」
「っ!?」
「あんなにちっちゃくて可愛いトイプードルにギャーギャー泣き喚いてたの今でも鮮明に思い出すなぁ〜。あれれ〜? 顔、真っ赤だけどどしたの?」
「……ふっ。あの時はまだ子どもだっただけだ。今は犬なんて怖くないぞ……?」
「ホントかな〜? この前だって一緒に大学から帰る時に犬の散歩をしていたおばあちゃんと横切る際に私の反対側に逃げて行ったじゃん〜。もしかして気付いてないと思ってたぁ〜?」
––––うっぜぇえええええええ!!!
なんだよさっきから勝ち誇ったような顔は!? ニマニマしやがって……っ!
「ま、そんな裕くんもかっわいいけどね〜! ずっと私が守ったげるからね」
「……」
こんな時こそ無視で限る。決して何も反論できなかったからとかじゃないぞ?
最寄駅を出発してからまだ十分程度。目的地でありながら待ち合わせ場所となっている駅まではあと停車駅を五個程度過ぎなければ到着できない。時間にしてあと十分。それまでの間だけは黙っておこう。何を言ってもマウント取られそうだからな。
【あとがき】
作品フォロー(ブクマ)、☆、レビューなどよろしくお願いします! 執筆の励みになりますでやんす!
サブタイトル変更で申し訳ないです。修羅場修羅場修羅場ッ…?
それにしても時間がなさすぎて、マジで1話あたりが中途半端な気がする……。見直しの修正とかもしたいのに……。今日中に★200超えたら明日2話投稿できるように頑張ろうかな…。明日昼11時から23時までバイトですけど…徹夜ッ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます