第5話 可愛い後輩ができた?【前編】
紗奈との同棲生活が始まってから一週間が経過した。
当初はちょっとした茶番劇のせいで今後の生活が心配になっていたが、今のところは順調な日々を送っている。
同棲生活においての役割分担も紗奈の要望もあって、家事全般を任せており、唯一俺がやることと言えば、日用品や食材などの買い出しくらいだろう。
その買い出しをするべく、三限目の講義が終わった後、大学近くのスーパーへと立ち寄っているのだが……
「夕方午後五時のタイムセール!! お野菜全品十パーセント割引! また、お肉、お魚の一部商品が割引価格だよー!!」
午後五時過ぎ。
タイムセールを知らせるアナウンスが流れたと同時にマダムたちが一斉に野菜コーナーへと押し寄せる。
「ちょっと押さないでよ!」
「これはあたくしが先にっ!」
マダムたちによる荒波にもまれながらも俺は当然のごとく、目当ての商品をかけた戦いに参加していた。
バイトとある程度の生活費がおばさんから振り込まれるとはいえど、決して裕福なわけではない。
少しでも節約を意識しなければ、すぐにお金は底をついてしまう。
――やっと手に入ったぞ……。
餌に群がるアリのような現状から汗だくになりながらもなんとか目当ての食材を手に入れた後、広告チラシにもあった「おひとり様一個限定」のたまごを取りに向かう。
これに関しては広告商品のため、タイムセールとは違い、在庫も十分に確保しているようだから急ぐ必要もない。あとたまごさえ手に入れば、頼まれていた買い出しは終わり。
そう思っていたのだが、たまごコーナーへ向かうと……残り一パック、だと……!?
「たまご一パック百五十円! 残り一パック! 早い者勝ちだよー!」
店員によるアナウンスと同時に俺は無我夢中で陳列棚へと向かう。
あとこれさえ手に入れば、ミッションコンプリート!
紗奈には明日の夕飯を大好物のオムライスにしてもらうように頼んだし、絶対に負けられない。
――よしっ! 貰った!
俺の手がパックに触れた瞬間だった。
「「あ……」」
俺ともう一人の声が同時に重なってしまった。
隣を見ると、ポニーテールに綺麗な瞳をした美少女がいた。よくよく見ると、この近くにある高校の制服を身にまとっている。
「す、すみません! これ、どうぞ……」
「え、いいんですか?」
「はい、遠慮なさらず貰ってください!」
「そうですか……?」
彼女は俺に譲ってはくれたものの、表情は明らかに落ち込んでいた。
「はぁ……。今月、ただでさえピンチだというのに……(ボソ)」
「あのー、やっぱり譲りしょうか?」
「え?!」
「いやその、心の声が聞こえてたと言いますか……」
彼女は急激に顔を赤くしてしまう。
「こ、これはお恥ずかしい……」
「俺は大丈夫なんで是非とも貰ってください」
「あ、ありがとうございます……」
俺はそれじゃあと別れを告げると、その場を離れた。
たまごは手に入らなかったが、それ以外に頼まれていた食材は全て確保した。たまごはまた明日でもいいだろう。
俺は会計を済ませると、帰宅する。
――それにしてもさっきの子、可愛かったなぁ。謙虚な性格もいいし、また会えるといいなぁ。
「おかえり、裕くん……って、何ニヤニヤしてるの?」
やべ。顔に出てたか?
「な、なんでもない。ただいま。たまご売り切れで買えなかった」
「そうなの? まぁ、たまごくらいまた後日でいいよ! それよりお疲れ様、裕くん♡ 今すぐ夕飯準備するからお風呂にでも入って来て」
「おう……」
可愛い子に会ったという話はもちろんしなかった。
万が一にでも口に出してしまえば……平穏な日常が崩れかねないからな。今日の出来事はそっと胸の内に秘めておこう。
【あとがき】
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昨日は投稿できなくてすまん!
バイトから帰った後、18時からずっと寝てて起きた時には朝方の4時になってた……。
後編と同時に投稿したかったけど、漫画動画のシナリオもあるんでまた明日!
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