第4話 裸エプロンはお好きですか?【後編】

 帰宅ついでに大学からほど近いスーパーにて食材や日用品の買い出しを済ませてきた後。

 すぐ近くにある自宅マンションへ帰宅するや否や俺は目の前の状況に言葉を失ってしまう。


「裕くん、おかえり♡」

「……」


 玄関先で出迎えてくれた紗奈はいつもと様子がおかしい。

 可愛らしいフリルが付いたエプロンを身につけてはいるけど、そこから伸びている白くて長い手足が妙に艶めかしくて、下には何も着用していないように見える。


 ――俺の幻覚、か……?


 とうとう今までどこにも行き先がなかった性欲が美少女幼馴染との同棲で爆発してしまったのだろうか……いや、ないな。

 今は興奮というよりかは驚きの方がどちらかというと勝っている。

 よって……


「お前、何してんの?」

「えっ?! なんで冷静なの!?」


 思っていた反応と違って焦っているのかあわあわとしている紗奈。


「男の子って、裸エプロンが好きだって、ママが言ってたから着てみたのに……」

「……」


 おばさんマジで何教えちゃってんの?

 まぁ、たしかに裸エプロンは男の目線から言うと、性癖を刺激される部分はあるけど……。


「あ、そっか。私の体が貧相だから興奮しないのか……」

「別に貧相ってことないだろ」

「じゃあ、なんで鼻息を荒くしないの! 平然とした顔してるし! このままじゃ、女としてのプライドが……!」


 紗奈は泣き崩れるように床へと落ちていった。

 こんなことで女のプライドとは小さすぎるのではないか?

 何はともあれ、とんだ茶番劇だ。購入した食材や日用品を片付けようと玄関を上がろうとした時、紗奈が不気味な笑みを浮かべながらスッと立ち上がる。


「ふふ、ふふふっ……こうなったらもう最終手段。強制的に裕くんを興奮させるしかない……」

「お前、何言って――っ?!」


 ドンッと胸元を押されたかと思いきや、玄関ドアを背にして壁ドンを受けている俺。紗奈の表情を見ると、自暴自棄になっているのか、顔は赤くて息遣いが荒い。


「ほ、ほら、間近で見る女体はどう? 興奮するでしょ!?」

「ちょっと落ち着けって!」


 ちょくちょく紗奈の胸が腹やら腕に当たる。

 その度にこの一枚の布を隔てた先には秘宝があるのだなと自分でも訳の分からんことを思ってしまう。


 ――このままでは本当にマズいかもしれない……!


 俺だって、立派な男だ。今は理性で何とか耐えてはいるけど、この押し問答のような状態が続けば、奥底に眠っている俺のオオカミが眠りから目を覚ましてしまうかもしれない。

 結婚もしていないのにましてや同棲生活一日目で行為に及ぶのはさすがにシャレにならん。


「お、落ち着け! 一旦、落ち着こ? な?」

「イヤだ! 絶対に興奮させてやるもん!」

「って、お前どこ触って――アッ!」


 紗奈の手がズボン越しから俺のムスコに当たる。

 正直、カッチカチ状態だが紗奈は俺を興奮させることに夢中になっているため気がついていないようだ。


「もういい加減にしろ――あっ」


 紗奈を引き剥がそうとした時、不本意にも胸を触ってしまった。

 だが、その瞬間、エプロンの隙間から透明なシリコンのような物が落ちてきた。


「これって……?」


 なんだろうと思い、拾い上げると、紗奈の表情がみるみるうちに青ざめていく。

 と、同時に胸の方に視線が移る。片方と違い、右側がぺったんこになっていた。


「もしかして……パッ――」

「ああああああああぁぁぁ!!! 笑えばいいじゃない! そうよ! パッドよパッド! 本当はAカップの貧乳なのよ! 悪い!?」


 一応、強がった口調はしているものの、顔はそれとは裏腹で涙がポロポロと溢れていた。


「グスン……裕くんが昔、巨乳が好きって言ってたから毎日バストアップ体操してたけど……グスン」


 嗚咽をしながら泣いている紗奈に対して、俺はどんな言葉をかければいいか、わからなくなった。

 巨乳はたしかに好きだけど……


「これじゃあ、もう裕くんに嫌われちゃう……既成事実を作るしかない……」

「お前はアホか」

「え……?」

「巨乳は好きだけど、俺が一番好きなのは好きな女の子の胸だ。だから、その、女子に対して言っていい言葉なのかはわからないけど、そんなことでいちいち泣くな。嫌いになんてならないから……」


 帰宅して早々の出来事に疲労感を隠せないでいたが、紗奈が俺に対して何かをしてあげようとしてくれてた気持ちだけは正直嬉しかった。内容はともかくとして。


「本当に……? 私ずっとパッドだったんだよ? 騙してたんだよ?」

「これくらいの騙しならむしろ可愛いもんだろ。気にするな」


 その言葉をかけた瞬間、紗奈の表情がパァーっと明るくなる。

 そして、俺にすかさず正面から抱きついてきた。


「お、おい……」

「えへへ♡ 裕くんが私のこと好きって言った! やっぱり私の好きな裕くんは優しいね」

「あ、あれは言葉のあやというか、まだ好きでも嫌いでもねーよ。だいたいこれくらいで優しいって言われても……と、とりあえずちゃんと服を着て来い!」

「え〜なんで〜? これじゃダメ?」

「ダメというか……」


 ある意味で目に毒。


「き、着替えて来ないと嫌いになっちゃうかもな……」

「え、イヤ! 今すぐ着替えてくる!」


 ようやく紗奈は離れると、駆け足で自分の部屋へと消えて行った。

 同棲生活一日目でこの有様。

 これから先、大丈夫だろうか……不安でしかない。



【あとがき】

 作品フォロー(ブクマ)や★、レビューなどよろしくお願い致します!執筆の糧になります!

 

 やはりヒロインはちっぱいでなきゃダメだよなぁ!( ゚∀゚)o彡゜

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る