第2話:月城澪の場合
■ 澪side
私、
学校では、人にそう思われるように心がけている。そして、ミスがないようにずっと気を貼っている。いつもクールだと思われるように。
本当の私は全然そんな訳はなく、いつもドジばかり。特に、武に見つめられるとテンパってミスが多い。一番ミスったらダメなところでミスってしまう!
今日は、玄関で躓いて、冷蔵庫はあろうことか、自分の右手を自分の左手でドアに挟んでしまったし、スマホは落としてしまった。
多分、あまり周囲から理解されないと思うので、冷蔵庫の下りだけはもう少し詳しく説明させてほしい。冷蔵庫からソースを取り出そうと思ったの! 左手でドアを開けるじゃない?
ソースをドアポケットのところに見つけたので、右手で取ろうとする。でも、慌てているので、右手が冷蔵庫から出る前に左手で扉を閉めてしまう……説明してもあまり理解されない気がしたから、やっぱりいいや。
武と二人きりになってしまうと緊張からかクールビューティーの仮面は外れてしまってボロがでる。
でも私には、クールビューティーであり続けなければならない理由があった。武の理想のタイプはクールな女の子だから。
昔、武が好きだったマンガのヒロインがクールだった。本当は甘えたいけど、それは武の理想とは真逆。甘えることはできない。
*
今日その矛盾を解消できるいいことを学校で聞いた!
凄くかかりやすい催眠術だという。素人の催眠術は催眠状態に持ち込むことが難しい。その点、いま学校で話題の催眠術は眠っている間に暗示をかけるのだという。
睡眠学習の効果と催眠術の効果で本人も知らない間に暗示にかかっていると話題みたい。あまりに効果が大きすぎるので、催眠を解く「キー」も一緒に入れないと危ないのだそう。
その人が嫌いな食べ物を食べると暗示が解けるとか、絶対に行かないところに行くと暗示が解けるとか、そういった「暗示を解くキー」を一緒に入れて暗示をかけるという方法。
食後、武がリビングでうたた寝をしていた。髪の毛を触ってみても起きない。これは絶好のチャンス!
顔を覗き込んでもやっぱり寝てる。今しかない!
「あなたは
大丈夫。起きないみたい。1回しか言わないと不安だから、もう何回か言っていこう。
「あなたは月城澪が好きになる。あなたは月城澪が好きになる」
そうだ。クールなイメージの私のことを好きになったとしたら、私が甘えることで暗示が解けてしまうかもしれない。追加で暗示をかけておこう。
「月城澪が甘えてきても好きなまま。嫌いにならない。絶対に嫌いにならない……」
これで大丈夫。あ、忘れるところだった。この催眠術は、必ず「暗示を解くキー」を入れるルールだった。これがないと利かないのかもしれないし、ルール通りに入れておこう。
武が嫌いな食べ物……そういえば、武は甘いものは食べない。きっと甘いものは嫌いに違いない!
「甘いものを食べるまで暗示は解けない」
再度、武の顔を覗き込むけど特に変化はない。ぐっすり眠っている。疲れているのかな? 寝顔を見てもやっぱりカッコイイ……はぁ……好き。
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