【短編】ツンな幼馴染が俺が寝ている間に「私を好きになる」と催眠術をかけて来たのだが

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

第1話:ツンの幼馴染が耳元で「私を好きになる」と囁く

 部活は割とハードだ。だから、俺は食事の前後で急に眠気に襲われることはよくあること。家のリビングのソファでうたた寝をしていると、幼馴染の月城澪つきしろみおが耳元でささやき始めた。



「あなたは月城澪つきしろみおが好きになる。月城澪が甘えてきても好きなまま。嫌いにならない。絶対に嫌いにならない……」



 なんだこれ!? 俺は何を聞かされているのか。

 そう、全てはここから始まったのだ。



 ***



 俺と澪は、家がマンションの隣同士。親同士が仲が良いこともあって物心ついたときから家ぐるみの付き合いだった。しかも、両家とも共働きとあって夕飯は一緒に食べることがデフォになっていた。



たける、今日の夕飯何が食べたい?」



 別々にご飯を作ると非効率という、とても合理的な考えのもと、両家は一緒に食事をとることが多いのだ。


 しかも、親の帰りはそれぞれ遅い。いまどきどんな仕事をしているのか……だから、親たちが遅い時は、俺と澪だけの時もよくあった。



「うーん、カレーかハンバーグか……」


「小学生!? もうちょっとこう……高校生として恥ずかしくないメニューを言って!」



 そうは言っても、澪の料理はおいしい。カレーでも、ハンバーグでも、それ以外でも俺はきっと満足する。そもそも、好きな女の子が作ってくれた料理に文句をいうヤツなんているのか!?



 俺たちの夕飯は親が作ることもあるけれど、両方の親が遅くなる時など俺が夕飯を作ったり、澪が作ったりしていた。「お隣」という認識ではなく「兄妹」か「家族」という認識かもしれない。


 じゃあ、澪のことはどうでもいいかというと、全然そんなことはない! 俺は小さい頃から彼女をバリバリに意識していた。


 俺は小学生の頃から空手をやっていて、高校生になった今でもそこそこの成績を出しているので続けている。


 澪の理想が「硬派な人」みたいで、小さい時に澪が好きだったマンガのキャラが空手をやっている硬派なヤツだった。だから、俺はいまだに律儀に空手を続けている。


 ただ、本当の俺は甘いものが大好きな「スイーツ男子」だ。


 空手をやっている限り、毎日毎日練習でスイーツを食べに行く時間はない。こっそりコンビニスイーツを買って楽しんでいる程度。


 ただ、スイーツよりも澪のことが好きなので、空手は続けている。本音を言えば、もういい加減辞めたい。6月のインターハイも終わったし、8月の全国高等学校空手道選手権大会も終わったので、もう引退していい頃だろ。


 でも、甘いものを食べている軟弱な男は澪の理想とは真逆だ。だから、俺がスイーツ好きなのはトップシークレットにしている。



「あれ? 買ってきた合いびき肉がない!」


「あ、さっき澪が冷凍庫に入れてたよ?」


「知ってるわよ! 肉は冷たい方がおいしくなるから冷凍庫に入れたの!」



 澪の方は学校では、クールビューティーを通していて人気も高い。

 ただ、家では澪を見ていると挙動が不審になって行ってドジも多い。

 このポンコツぶりが可愛くて好きなのだが、彼女は失敗すると逆切れして誤魔化すクセがあった。


 だから、俺と澪はいつもケンカばかり。一見すると仲が悪いように見えた。澪のことはすごく好きだったけど、もっと甘えて欲しいと思っていた。いつも気丈に振舞うクールビューティーの彼女に少しの寂しさも感じていた。


 学校では、完璧超人と言ってもいいほどの有能ぶりだけど、今日は既にうちに入ってくる時に、玄関の段差で躓いた。「湿気で玄関の段差がいつもより1mm高くなっていたのよ!」って言ってたけど、本当だろうか。


 冷蔵庫は右手でソースを取ろうとしつつ、左手で扉を閉めて手を挟まれていた。「手なんて挟んでない!」と言い張っていたのだけど、本当だろうか。


 しゃがんだ時に胸ポケットに入れたスマホを落としたのだけど、「強度試験よ!」と言っていたのだけど、本当だろうか……


 本当だろうと、嘘だろうと、彼女の可愛い行動は俺の琴線に触れまくっていた。

 澪可愛い……




 

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