第42話最後の戦い(9)

「何が起こったかわからなかっただろ? これからは君の攻撃が俺に当たることは無いよ?」


 ウルクが勝ち誇った笑みを浮かべた。その言葉を裏付けするように俺が放った魔法は尽くウルクの横をすり抜け一度も当たることは無かった。放出系の魔法に何か細工をしたかもしれないと考えた俺は次に重力魔法をかけたのだが、これも無意味だった。ウルクは重力の荒波の中に居る筈なのに、重力を感じない歩みを見せていた。ふむ、これはどういうことだ? 魔法そのものが効かないのか?


 俺が思考を纏めきれていないところにウルクの攻撃が迫ってきた。先と同様のテオ・ファイガが迫り俺は防御魔法を展開して備えていたのだが、そこにも俺にも理解できない事柄が起きた。俺の防御魔法に一切干渉せず、更に俺の防御結界すら干渉せずにすり抜けて俺に直撃した。


「ぐあああああ!」


 ウルクの攻撃が直撃した。久々にノーガードで魔法を喰らい、意識が朦朧としている。やばい、これはまじでやばい。流石の俺も無防備な状態で攻撃を喰らえば無事では済まない。意識が途切れかけている。俺は負けるのか? このまま……、あいつに負けるのか?


「クロムー! 頑張れー!」


 意識が途切れかけながら、不意に俺を呼ぶ声が聞こえた。この会場の喧騒の中でもハッキリとその声が俺に届いた。この声はシャルルだ、シャルルが俺を呼んでいる。その声に反応するように俺の意識も戻ってきた。


 なんとか意識を取り戻したが現状はあまり芳しくない。ウルクのネタがわからなければ打開策が浮かばない。


 魔法そのものが効果が無いのだとすれば、次は物理的攻撃しかあるまい。そう考えた俺は転移し、ウルクの背後から魔力を纏わない攻撃を繰り出した。結果はウルクの魔力壁に遮られ、その攻撃も効果がなかった。まあこれは流石に計算内には入っている。だがしかし、この状況はどうすればいい。魔法も物理も効かない。こんな相手は転生前ですら戦ったことが無い。この俺がここまで追い詰められるとは正直思ってもいなかった。


「どうした? もう攻撃は終わりかな? 次で決めるよ」


 ウルクは勝利を確信したのか、ゆっくりと手を上げて、俺に魔法を放った。


「クロム!」


 シャルルの声が鳴り響き、俺はその声に反応するように、最後の力を解放した。


 全身を闇が包み込み、辺り一面が暗黒に染まった。


 闇の繭から解き放たれた俺は全身から闇の力を放ちながら、転生前に身に付けていた装備一式を身に付けてして現れた。



「モード冥王神ハデス」

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