第34話最後の戦い

 あの魔人との戦いから数か月が経過した。本来離れ離れになると思っていた仲間たちとも皆のお陰でこうして今も学園に在籍できている。


 あれからも色々なことがあった。全学年対抗魔道演武に、学園代表選抜大会、学園最強決定戦などなど沢山のイベントがあった。俺はその全てで優勝を果たして学園内でもかなりの人気者になっていた。スキル成長(ラクア)を使ったことで俺は皆より少しだけ大人びた状態になっていて、上級生問わず女子生徒からモテモテになるという事件が起きていた。その度に今俺の恋人になっているシャルルから睨まれ、終いにはお説教を受ける毎日だった。俺悪くなくないですか? などといつも思っているのだが、シャルルは全くお構いなしだった。


 問題がそれだけならいいのだが、一番の問題はもっと身近にあった。それは、シャルルを除くワカツキ、ルイネ、ルミナスの存在だった。俺とシャルルが交際を始めた直後から彼女等はあからさまに俺とシャルルの邪魔をしてくる。ルイネに至っては王女様の護衛兼メイドの役目を遣わされているのにも関わらず、シャルルに言われても

「仕事とこれは全くの別カテゴリーです」とか言って言うことを聞かない。ワカツキは前にも増してグイグイ攻めてくるようになり、正直心臓に悪い時もある。ルミナスは相変わらずの距離の近さでシャルルが居ようと居まいと関係なく俺に寄り添ってくる。いや、嬉しんだよ? すごくね、だけどね、君たちの居ない所で俺がどれだけシャルルに怒られていると思っているの? もうね、あの子怒ると凄いんだから。この前なんて目の前で爆裂魔法を繰り出そうとしていたからね?


 それにナグモもかなり薄情な奴だ。いつも俺がそういった問題に苛まれると決まって顔を焦らせ、急用ができたとか適当なことを言ってその場からフェードアウトしてしまうのだ。


 今日もいつもと変わらぬ日常だった。少し変わったところと言えば、いつも居る筈の時間にシャルルの姿が見えなかった。それを今こうして俺を取り囲んでいる三人の内の一人であるルイネに問いてみた。


「ルイネ、今日はシャルルと一緒じゃないのか?」


「ん? あぁ、シャルル様は何やら早朝から国王陛下に呼び出されておられたな、私には一人で先に行くように命を受けた」


 ほぅ? 国王に呼び出されたと、このタイミングで? 一応今年度の行事は全て終わったことにより、学園絡みの案件ではなさそうだ。だがどうしてだろう、とても嫌な予感がして心中穏やかではない。こういう嫌な予感ってかなりの確率で当たるんだよな……。


 ルイネたち女性陣と会話を楽しんでいると、何やら廊下から慌ただしい足音が聞こえてくる。慌ただしい物音のする方にスキル透視化(エコー)を使い確認すると、そこには全速力で廊下を駆けるシャルルの姿がそこにはあった。何をそんなに急いでいるのかと思ったのだが、シャルルが来ればその答えも聞けるだろうと思い透視化を解除してシャルルを待つことにした。


 シャルルの足音が教室の扉の前で止まり、その扉が力強く開けられてシャルルが大きな声で俺に声をかけてきた。


「クロム! どうしよう、大変なことになっちゃった……」


 シャルルの言葉を受けた俺は顔を引きつらせていたに違いない。やっぱり俺の悪い予感は当たるんだよな……。


 教室の扉の前で叫ぶシャルルは一度落ち着きを取り戻し俺の元に赴き、俺の手を引いて教室を後にした。


 シャルルに手を引かれながら、学園の長い中廊下を早歩きで歩みを進める。会談に差し当たりそれを一段一段登っていく。どうやら一番上の階である屋上を目指しているらしい。


 学園の最上階の屋上に辿り着き、屋上に通ずる扉を開けた。屋上の景色は都市を一望できるほど眺めが良く、眼下には今も栄えている市街地が見えた。風通りも良く、吹き抜ける風と暖かな日差しがとても心地よく感じる。その穏やかな風景の中、心中穏やかではなさそうなシャルルが俺に向き直り言葉を放つ。


「クロム、あのね、あのね。昨日お父様にクロムとのことを話したらお父様急に怒りだしてクロムを一度連れて来いって言われちゃったの……。だけどそれをどうにか押し切ろうとしていたんだけど、お父様言うことを聞いてくれなくて……、どうしよう」


 な、な、なんだと⁉ 国王に俺との交際を話しただと⁉ そりゃあそうなるわ! だって一人娘だろ? 絶対溺愛してるじゃん。この前の伝言的に絶対認めてくれないよ。何してくれてるの? あぁ、最悪だ……。もしかして俺、指名手配とかされるんじゃないのか? 本当に大丈夫なのか? 公開処刑とか言われたらどうしよう……。

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