転生した最強の死霊使いは平凡な日々を求めるが……

第31話古の戦い

　千体を超える魔人を前にして、俺は普通の少年を辞めることを決意した。スキル成長（ラクア）を行使した俺の体が黒い影に包まれる。暗闇の中、自身の体が成長しているのがわかる。筋肉は増え、手足は伸び、髪も転生前の長さに生え変わる。全盛期の俺は十八の時人としての進化を終えた。それはその頃に半神（デミゴッド）になったことが関係している。

　成長を終え、体には影の王としての紋章が全身に巡り、自身の魔力の流れを確かめていた。ふむ、完璧に全盛期に戻ることができたな。

　成長のスキルから解き放たれた俺は黒い影の中から現れ、魔人に相対した。その姿に周囲の皆は、驚きのあまり声も出せていない様子だった。だがそれと同時に先程俺が言った恐ろしい体験の意味をはき違えているようにも伺える。今皆は俺の魔力を感じることができないはず。何故なら半神の状態の俺は普通の魔力とは異なり神力というものにすり替わっているからだ。この神力は同じ神の位置に君臨する者しか感じることはできない。俺が警告した恐ろしい体験とはこれからの出来事である。

「貴様、魔力が感じられなくなったな。それなのに貴様から感じるこの感覚はなんだ？」

「光栄に思え、お前の力に敬意を表し、全力で殺してやる。実に久しいからな、直ぐにやられるなよ？」

　俺から感じる雰囲気が変わったのを悟ったのか、爵位持ちの魔人は警戒しながら俺の様子を窺っている。

「来い！」

　俺が右手を上に上げ、声を放つと俺の周囲にかなり広範囲のゲートが現れた。その中から続々と影の戦士たちが現れる。そして、十影雄たちが姿を現した時、彼等彼女等に恐ろしいほど濃密な魔力が押し寄せた。

　影の戦士たちは俺を正面に捉え、全員が膝を付き頭を深く下げていた。

「お帰りなさいませ王よ。王の完全復活心よりお喜び申し上げます」

　影の戦士を代表して一番隊隊長兼全軍統括のウラノスが言葉を放つ。

「皆、待たせたな。あちらが総力戦を望むのならこちらも乗ってやらねばな」

　召還された千体を超える影の戦士たちが魔人に向かい合っていた。

　十影雄から放たれる魔力には流石の爵位持ちの魔人も顔を引きつらせて、叫んでいた。

「な、な、なんなんだこいつらは。それにこの魔力量、かつての魔王様を超えているだと」

「行くぞ」

　その言葉と共に影の王のスキル、王の領域を展開した。全盛期の俺が使うこの王の領域ですら先程の状態とは比べ物にならないほどの規模で行使されている。辺り一帯は暗闇に包まれその暗闇全てが影の戦士の魔力となる。ちらと皆の方に視線を向けると、予想はしていたが散々な光景が広がっていた。泣き叫ぶ者、嘔吐する者、意識を失い倒れている者その中には十傑たちも例外ではなかった。

　彼等彼女等を長く苦しめることは避けたいと思い、俺は速攻で片を付けに行った。

　影の戦士と魔人たちの総力戦、いや、戦いにはなってはいなかった。一方的な蹂躙。俺の召喚した戦士たちにより魔人たちはいとも簡単に殲滅されていた。

「王よ、あの指揮官はどういたしますか？　必要とあらばこちらで」

「いや、いい。あいつは俺がやる。この体に戻ったんだ、少しは慣らしておきたい」

「仰せのままに」

　ウラノスとの通信を終え、俺は上空に避難していた爵位持ちの魔人へと転移した。

「どうした？　さっきまでの余裕が嘘みたいだな」

「貴様、一体何者だ！」

「そうだな、古の時代勇者と魔王をも超越した死霊使い」