第30話来訪者(4)
「うおおおおおあああ!」
千体以上もいる魔人に対し絶叫と共に、俺は魔法攻撃を繰り出した。炎最上級魔法・クリムゾン・ファイアに雷最上級魔法・神の裁き(ラグナロク)を魔力の許す限りを尽くし全力で解き放った。
魔法による衝撃で最早あの緑豊かな草原は完全に焼け野原と化していた。そんな中、砂埃に紛れて俺の体を何本もの光線が撃ち抜いた。
「ぐっ……」
今の攻撃でも魔人の数は計り知れないほど生存していた。その魔人たちの一斉攻撃に俺は為す術なく蹂躙されていた。
そして、瀕死の状態に追いやられた俺に止めの一撃が迫ろうとしていた時、驚きの光景が目に入った。
俺の目の前には美しく綺麗な金色の髪が揺れ、その小さな背中からは想像もできない頼もしさが溢れる後姿をしたシャルルが俺に向けられていた光線を身代わりとなり受けていた。
「シャルル!」
今にも倒れこみそうな状態であったが、それでもその時だけは声を荒げた。あの状況で何故シャルルは動けたのだ? それよりも何故、俺が回復できるのを知っているのに俺の身代わりになるなんて行動を取ったんだ……。
「……く、クロム。だ、大丈夫ですか?」
「もういい、喋るな! 今回復する」
シャルルに向けて復元魔法・リカバリーを使い、シャルルを復元した。
「馬鹿! 何でこっちに来た!」
「あなたが傷付くところをこれ以上見たくありませんでした。そしたら体が勝手に動いてくれました」
シャルルの身を挺した行いが俺の心に覚悟を決めてくれた。例えこれが永遠の別れになっても、俺はこの選択を悔いはしないだろう。何故なら、こんなにも楽しい時間を送れて、俺にしては充分すぎる幸福だった。それにこんなにも焦がれた気持ちにさせてくれた。生まれて初めての経験もできた。もう充分だ、後はここにいる皆を無事に学園まで帰還させよう。
決意が固まると、俺はシャルルを抱き寄せながら唇を合わせた。
「感謝のお礼と、俺の気持ちだ。シャルル、ありがとう。さよならだ」
「──え……?」
戸惑っているシャルルを他所に、ルイネに合図を送り、シャルルを引き離させ皆に向けてスキル通信(テレパシー)を使った。
「全員聞いてくれ、これからとんでもなく恐ろしい体験をすることになると思う。それでも決して屈さないでくれ。気持ちを強く持って欲しい」
通信を終えた俺は深呼吸をして、スキル成長(ラクア)を行使した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます