第21話最終試験(6)

「氷創成魔法・ダイヤモンドダスト」



 開始直後スノウの巨大な魔法攻撃を回避することをせずに真っ向から受け止めた。スノウが繰り出した魔法はまるで氷山が突き刺さったように見えるほど大きく尖った氷の塊が闘技場内を埋め付くしていた。



 会場内の静けさからして、今の一撃で俺が敗北したのではないかと皆が思っているに違いない。だが、俺はこうしてぴんぴんしている。攻撃を受ける際に俺が昔から使っている武術、崩殺拳破の型「虚空」により、俺の目の前には氷の塊は抉り取られ、一つの空間が出来ていた。



「早く出てこい。この程度ではお前はやられないだろ?」



 スノウも俺の生存には気付いている様子だった。こうして隠れている意味もないので俺は氷を一発殴り粉々に破壊した。俺の登場に闘技場内が異様なほどに湧き上がっていた。



 俺が出てきたのと同時にスノウは新たに氷の槍を先程までとは比べ物にならないほどの数を出して解き放ってきた。



 崩殺拳砲の型「空破」魔力を纏った拳圧でスノウの攻撃を尽く防御している。それでもスノウもまた一手と攻撃の手を緩めない。っち、攻撃をするまでの動作が早すぎて、破壊が間に合わない。



 俺が防戦一方になったと判断したスノウは少し溜めを作り魔法を構築してきた。今だ! 俺はその瞬間を狙い。即座に術式を破壊した。その光景には流石のスノウも驚きの表情を隠せてはいなかった。



 そして、その驚きの硬直を逃さずに、俺は全力で技を繰り出した。



「崩殺拳奥義「閻魔」」



 闇の魔力を拳に乗せそれを拳圧に上乗せする形で放つ俺の必殺技。触れるものすべてを闇に葬り去るこの攻撃を果たして止められるかな?



「氷創成魔法・絶河氷壁」



 スノウは一度驚きはしたものの、すぐさま防御魔法を使い俺の攻撃に立ち向かっていた。だが、スノウの防御魔法は次々と破壊され、そのままスノウに直撃した。



 衝撃による砂埃の中から、一瞬だがきらりと何かが光るのを見た。そして、その光が何かはすぐに理解できた。透視化と魔力探知から察するに、スノウが俺の技に耐え抜いていたのだ。氷を自身の後ろに何層も展開して、シャルルの攻撃から身を守っていたのと同じように。だが今回に限って言えば、スノウは無傷とはいかなかったことだ。



 全身がボロボロになっているスノウが俺を睨み付けながら口を開いた。



「はぁ、はぁ、正直お前を舐めていたよ。ここまでやるとは思っていなかった。俺も本気で相手をしよう」



 その言葉が終わると、スノウの体から途轍もない冷気が溢れ出ていた。危機感を感じた俺もすぐさまモード七つの大罪になり、様子を窺った。だが、ここで俺は選択ミスをしていた。あの状況で様子を窺っていたからこそ、スノウに魔法を出す準備をさせてしまっていた。



「氷創成魔法・氷の世界(アイスワールド)」



 その魔法が発動すると、闘技場内が一面氷の世界と化した。そして、この氷の世界を作り上げた目論見がすぐに理解できた。



 突如俺の背後から氷の槍が襲い、防御結界が二層も砕かれていた。魔力探知にもかからず俺の背後を攻撃してくるだと⁉ 術式を構築した形跡もない、これはかなりまずいな。スノウの攻撃が読めないのなら、未来を予知すればいいだけの話だ。そう思い、未来予知の魔眼を行使した。



「ほぅ? 魔眼も使えるのか、だが、どこまで防げるかな?」



 その後もスノウの攻撃を未来予知の魔眼の効果で躱し続け、隙を見ては創造を使い弓矢で攻撃したり、双剣で転移して背後から攻撃したりをしているが、スノウの周囲には自動防御(オートガード)のようなものが発動していて、どの攻撃も防がれてしまう。更にその氷壁は並みの防御力ではなく、炎属性の武器での攻撃も、炎最上級魔法・クリムゾン・ファイアでさえもその氷壁を崩すことができなかった。ふむ、これは中々面倒な相手だな、転生前も防御だけは俺を上回る者は何人か居たが、こいつもその類の人間か……。面倒なんだよな、いっそこの時代にはない魔法で倒してしまおうか。いや、流石にそれだと俺の素性を怪しむ者も出るかもしれない。この手は無しだな。



 打開策を思いあぐねていると、一つの原理的策を思い付いた。例え氷とはいえ水から生成されているのだから、この手は使えるかもしれない。



 策を思い付くと同時に俺はスノウに水下級魔法・アクアを放った。そのアクアを自動防御が遮るがこれが狙いだ。すぐさま転移して、上空より神の裁き(ラグナロク)を放出した。



 神の裁きがスノウの自動防御に遮られるが、どうやら俺の見立て通りこの攻撃は有効なようだ。先程まで傷一つ付かなかった氷壁に大きなひびが見受けられた。



 今俺が用いた策は、電気分解だ。電気分解をより引き出すために、敢えて水を氷にかけ電気の通りを良くしたのだ。



 効果を十分に得た俺は、一度に無数の神の裁きを放ち、やっとの思いでスノウの氷の世界を攻略した。

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