第13話第二試験(4)

 急遽作戦会議をするべく、シャルルの目配せを合図に俺は地面に炎中級魔法・ファイガを地面に叩きつけ、砂埃を起こし同時に防御結界を展開して作戦会議を始めた。



「残ったのはこの四人ですか……、これからどうしますか?」


「それより、お前らはどうやってあいつの攻撃から身を守ったんだ?」


「とりあえず、全力で逃げていた」


「私も同じです」


「運だけではないだろ? お前ら二人も中々の実力者だと思うが」


「そういうあんたもかなりの実力だろ? 俺たちの実力を測れるってことは」


「御託はいい、お前らのできることを教えろ」


「俺は接近戦しかできない。この刀が俺の武器だ」


「私は魔法による支援です」


「王女様、この布陣でどう動く?」


「それは、あなたも全力で戦うと判断していいのですか?」


「あぁ、一応は全力で戦うつもりだ」


「わかりました。ではまず、三人のオリジンスキルを教えてください。ちなみに私のは星五導く者というスキルです」



 その言葉を告げそれが事実であるのを確認させるために、シャルルは自身の右手の甲に浮かび上がっている、紋章を俺たちに見せてきた。これは、俺はどうするべきなんだ? 真実を話すべきか? それとも、偽るのが正解なのか? それを決めるのは他の二人の出方を見てからにするべきだろう。



 シャルルの行動で他の二人も信じたのか、次々と自身のスキルについて語りだした。



「じゃあ、俺のは星五剣神というスキルだ。権能は絶対両断、神羅万象、身体能力向上だ」


「次は私、星五支持する者。権能は後方支援向上、詠唱破棄です」



まさかの二人共星五のオリジンスキルを所有するとんでもない奴らだった。というより、何でそんな凄いスキルを持ちながら今までこそこそと隠れていたんだ?



 残る俺に対し、シャルルも他の二人も俺に視線を向けていた。いや、ここでオリジンスキル無いですとは言えんだろ。急ぎ俺はバレないように右手に星五の紋章を創り出し、三人の前にかざした。



「俺も星五破壊(クラッシュ)。権能は術式解体だ」



 なんとか疑われずに終了した。ひやひやしたが、案外大丈夫だったな。



 皆のスキル紹介が終わった後にシャルルはそういえばと言い、言葉を続けた。



「皆さんの名前を教えてください。指示を出すのに名前がわからないのは少々やりにくいですから」


「俺はクロム・ジルキア」


「俺はキョウヤ・ナグモ」


「私はイズミ・ワカツキ」



 残りの二人の名前が妙に珍しく感じた俺とシャルルは二人して顔を合わせ、シャルルが代表して二人に問いかけた。



「お二人のお名前はなんとも珍しいものですね。どこの出身の方ですか?」


「俺たちは実は……、異世界からの転生者なんだ」


 異世界からの転生者? 聞いたことが無い。昔の時代にはそんな奴らの話は耳にした記憶すらない。だが、困惑している俺とは別に何故か合点がいったと言わんばかりの表情をしているシャルル。



「そうでしたか、通りで聞き慣れない名前だと思いました。それにお二人のオリジンスキルのランクにも納得がいきました」



 シャルルは一人で納得している様子で、俺は全く理解が及んでいなかった。それを聞くべく俺はシャルルに向けて、言葉を放つ。



「転生者とはなんだ? それに、こいつらのスキルのランクが高いのが当たり前の様な言い方をしているのは何故だ?」


「あなたは異世界人を知らないんですね。異世界人はこのクシャナス王国で編み出した、召喚術式により、異世界から魂をこの世界に召還してこの世界に新たな生として生まれ変わった人のことを言います。なんでもこの世界には女神様が居て、召喚される際にとても強いスキルを祝辞(ギフト)してくださるそうですよ」


「ほぅ? なるほどな、なんとか理解した。話を振っておいて申し訳ないが、話を戻そう。この布陣でどう戦うのか」


「それなら、私の作戦で行きたいと思います。細かい策は必要ありません。前衛はあなたとナグモさん。中盤に私とワカツキさんで行きます」


 正直その作戦がかなり妥当だと全員思ったのか反論するものは誰一人いなかった。そして、戦いに入る前に俺はどうしてもしておかないといけないことがあるので、それを行うべく皆に言葉をかけた。



「最後に、ここに居る皆には一つ誓って欲しいことがある。それは、この試験をもし勝利で収めたとしても、お前たち三人で冒険者を倒したことにして欲しい」



 俺の言葉にシャルル以外は怪訝な顔をしてその言葉の真意を問いてきた。



「俺は目立ちたくないんだよ。だから、お前たちが倒したことにしてくれると助かる」


「よくわからないけど、まあ了解だ」


「私もわかりました」


「なら誓いの契約をしてもらう」


 そう言い、俺はスキル契約(カーマ)を使い三人に契約の誓いを立ててもらった。俺は昔から口約束、書面での約束を信じていない。だが、この契約(カーマ)を使うことで誓いを違えることはほぼ完全に無いと自負している。それもそのはず、この契約に反した場合代償は己の魂の消失。すなわち死を意味する。



 三人はこの契約に賛同し、俺と契約を交わした。これで俺も全力で戦える。そして、戦う準備が整うのと同時に先程時間稼ぎのために召還した影の戦士たちの反応も消えた。結界を解き冒険者の方に視線を向けると、今まさに最後の影の戦士を打ち取ったところだった。俺たちの準備ができたことを悟った冒険者は声高々に叫んだ。



「よくぞここまで生き残った! だが俺もsランク冒険者としての意地がある! ここでお前たちに負けるわけにはいかない。これで最後だ! 全力で来い」



 俺たちはその場で目配せを交わし、最後の戦いが始まった。

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