第5話入学試験(2)

 俺はその指示通り正門をくぐりそこには大きな中庭が広がっていた。中庭の中心には噴水があり、木々の手入れが滞りなく入っていて、暖かな日の光が中庭全体を照らしていた。



 その風景に少々気が緩んでしまったが、すぐさま気を引き締め直すのと同時に入学試験参加者の待機している状況に違和感を覚えた。それは、ほとんどの参加者が中央に集まっているのに対し、ごく一部の者たちは中庭の端の方に待機していた。最初は人付き合いが苦手な者なのだと決めつけていたが、中庭の中央には大きな円があった。そこに足を踏み入れた瞬間に俺はこの配置の謎が解けた。



 この円状のサークルは転移陣だと、これも何かの試験内容なのかもしれないと思い、俺も円の中から抜けて端の方にて待機をすることにした。なるほど、これに気付けるか気付けないかで大きく実力が分かれるということか。



 今現時点で端に居るのは俺を含めて六人の参加者だった。俺の天使、いや、王族の少女も端にて待機している。やはり少女と言っても流石は王族だ、魔力の量も俺を抜いて群を抜いている。かなりの実力が伺える。



 そんなことを思っていると不意に試験官らしき人から声をかけられた。



「そこの君も早く円の中に入って」

「転移されるとわかっていて、入らなければいけないんですか?」



 俺のその言葉に試験官は目をギョッとさせ驚いていた。あれ? 端に居る人たちって転移に気付いている人じゃないの?



 試験官は驚きを押さえつけ、喉を鳴らしわざとらしく誤魔化してきた。



「て、転移? 何のことだか。それより、試験は円の中心に入らないと不合格になってしまうよ」



 まあとぼけるならそれで構わないか。それに、不合格になるのは不本意な訳だしここは素直に従っておくのが吉だろう。転移されるのがわかっていれば咄嗟の判断もしやすくなるし、今は試験内容に気を張ろう。



「これより、試験を始める」



 突如として俺たちの前に現れた一人の試験官らしき男が試験開始の合図を送る。

 周りの参加者も一気に気を引き締めている様子が見て取れる。だが、その緊張感も一瞬で消え去った。そう、先程から俺たちの周りを囲っていた転移陣が光を放ち起動したのだ。



 転移の光が消えて辺りを見渡すと周囲の風景がガラリと変わっていた。先程まで学園の中庭に居たはずなのに、俺たちが今現在居る場所はどこかの島に居るようだった。



 辺りには参加者全員が居るとはとても思えなかった。そして、その疑問にはすぐさま答えが返ってきた。



「入学試験参加の皆さん、一次試験の内容をお伝えします。まず皆さんは合計で四つのグループに別れて試験を行って頂きます。そしてこの第一試験では皆さんは各々転移で飛ばされた島で一日生き抜いてもらうことです。生き残った参加者は明日の丁度この時刻にまた当学園に自動的に転移されます。それでは、第一試験開始!」


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