第16話新たな出会い(3)
「お帰り、あんた随分と男前になったじゃないか。ん? それとその子は?」
「やめてくれ。クレアさん今日は二人分頼みます、ちなみに空き部屋はもう一つあったりしますか?」
「あいよ、あー、ごめんよ。さっき丁度埋まっちゃったんだよ」
「え……」
つまり今日は彼女と同じ部屋で寝るのか? いや、別に女と同じ部屋で寝泊まりするのは千歳ともよくしていたから慣れてはいるが……、今日出会った奴と共にっていうのは少し気まずい気もする。
「わ、私はご主人様と同じ部屋で構いません!」
「ご主人様? ……あんた、まさか」
突如クレアさんが怒りを露わにした。まあ概ね俺が奴隷を買ったことに対して怒っているんだろうけど。
俺は彼女を購入した件をクレアさんに話した。
「なるほど、冒険者になるためにその子を買ったってことかい。それ以外の目的は無いんだね?」
「あぁ、誓うよ」
「それなら良かった。取り敢えず夕食の準備しておくから先にお風呂済ませてきちゃいな」
クレアさんの指示に従い、俺と彼女は部屋に戻った。
「あ、あのご主人様?」
「どうした? 先に風呂に入ってきていいぞ」
「いえ、あの、お風呂の入り方がわからなくて……」
「……」
それもそうか、考えてみれば彼女は生まれた時には奴隷商の下で育ってきたんだ。となれば生活習慣に関心が無いのも頷ける。さて、どうするか? クレアさんを呼んでクレアさんに入れてもらうのが正解なのだろうか? いや、俺がこいつの主人であるなら俺が入れてやるのが正しいのかもしれない。
馬鹿か俺はそもそも何で一緒に風呂に入ることを前提に考えているんだ。それぞれの器具の扱い方を一から教え込めばそれで済む話だ。危ない。危うく俺は前の世界でいうところの中学生くらいの女の子と一緒にお風呂に入ることになりかけるとは。
「付いて来い」
そう彼女に声をかけてお風呂場に連れて行き、諸々の器具の説明をした。俺の話を聞く彼女の姿勢は真剣そのものだった。
「これで理解できたか? ならさっさと入ってこい」
「あ、あの……」
「私なんかが入っていいのかなんて聞くなよ? 俺が入れと言ったのなら入れ。それだけだ」
「……わかりました」
彼女はそのまま器具の扱いを理解して入浴していた。さて、必要であった奴隷、駒は揃った。明日冒険者ギルドにて登録を済ませるだけだ。
冒険者になったらまずは必要最低限の資金を手に入れながらあいつらの行方を追うことだ。例えここが俺の居た場所とかけ離れていようと冒険者として地位を上げて行けば必然とコネは増えて、情報量は増していくはずだ。
次は彼女をどう育てていくかだ。正直前衛は俺一人で事足りている。俺になくて今後必要なのはなんだ? あの子犬と戦った時何があれば有利に立ち回れた?
そこまで考えて俺は彼女の今後の方針が固まった。これでかなり有利に楽に戦闘を行えるはずだ。
「ご主人様! あの、少しよろしいですか?」
風呂から上がったのか彼女は俺に問いかける。
「どうした? 何かあったか?」
「あの、できれば入ってきてもらえますか?」
次は何かと思い、はぁと溜め息を吐きながら洗面所の扉に手をかけ開いた。
扉の先に居たのはブラジャーを付けていない下着姿の彼女の姿がそこにはあった。綺麗な白い肌に髪色と同じ青の下着を身に付けた彼女は見た目に反してかなりの色気を出していた。
「お、おい! なんて格好で呼んでいるんだ!」
「申し訳ありません! ですが、このブラジャーという物の身に付け方がわからないのです」
嘘だろ……、まさかブラジャーを俺に付けろと言っているのか? だがもうすでに彼女の裸体を見てしまっているし、一度だけだ。一度だけ付けてやって覚えさせよう。
「はぁ、わかった。前を向いていてくれ」
こうして俺は彼女に渡されたブラジャーを手に取り、彼女の細く綺麗な手に紐を通して胸を覆い背中に回してホックを閉じた。はぁ、緊張した。まさかここで千歳との経験が生きてくるとはな。いや、別に俺が付けたとかじゃないよ? 千歳が付けているのを見たことがあるからできたんだ。
「ありがとうございます! すみません、迷惑ばかりかけて」
「気にするな、覚えてくれればそれでいい」
そして俺も入浴を済ませて二人で食事に向かった。
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