第13話迷宮の外(3)
冒険者ギルドを後にして、お勧めの宿屋への道中不穏な気配を察知した。やはり後を付けられているか、予想はしていたが以外にも多いな。五―いや七人は居るか。
俺はそのまま歩みを進めて角に差し当たりスキル闇移動で影の中に隠れた。
「んな⁉ どこに行きやがった!」
俺を付けていた連中は全員その場にて視線を泳がせていた。どうやら冒険者の新人狩りといったところか。俺を標的にしたことを後悔させてやる。
奴らの背後に回り影から出て、魔法を放った。
「影魔法・影縛り」
俺の魔法により全員が縛り付けられ身動きが取れなくなっている。
「よぉ、俺に何か用か?」
一人の男の頭を鷲摑みしながら問いかける。
「お、お前いつの間に⁉」
「黙れ。いいから答えろ。俺に何の用だ?」
「あ、いや、その……」
あまりハッキリと物事を言わない男に対して俺は苛立ちを露わにしていた。冒険者ギルドと今で俺が別人に見えるからそんなに怯えているのか? あそこでの立ち振る舞いは今後の生活に欠かせない関係だと判断したから下手に出ているだけであって、俺に害を為す者は容赦なく威圧していく。
金が目当てなのは明白なのだが、これ以上話したところでこいつらはまともに会話をしないだろう。そう思い、俺は影を解き、奴らに向かってスキル魔王覇気を放った。
俺から放たれる膨大な魔力に晒された新人狩りは、抵抗(レジスト)できずに全員意識を失った。ふん、雑魚が。俺を襲おうなんて馬鹿な考えをするからだ。
新人狩りをそのまま放置しながら宿に向けて歩みを進めた。その最中、俺の心の変化に気付いた。今、俺はあいつらを殺そうとした? いや、例え殺していたところで俺の心には何も感じなかっただろうという恐ろしいまでの残酷な心が自身の中にあることに気付いた。人間をモンスターと等しく扱っていた。俺の中に眠る憎しみと迷宮での日々が早くも俺の心に変化を与えていた。
暫く歩きようやく受付嬢のお姉さんに紹介してもらった宿「星の雫亭」に辿り着いた。
見た目は辺りの建物と変わるところはなく、至って普通の家だ。だが俺を騒がせていたのは屋根に取り付けられている煙突から立ち上る煙に混ざり香ってくる料理の匂い。人の作った、いやまともな食事というものを暫くしていなかった俺にとってこの料理の匂いが細胞レベルで反応していた。
俺は駆け足で星の雫亭に赴き、店の店主に金銭を渡し、先に風呂に入りに行き汚れた体を綺麗さっぱりしてきた。そして、ようやく待ちに待った食事にありついた。
食事のメニューはどれも家庭的で俺の心を温めてくれた。
食事を済ませて指定された部屋に移動してベッドに横たわりながら今後の対策を練ろうと思ったのだが、体が休息を求めていたのかベッドに倒れこむと同時に俺は深い眠りに就いていた……。
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