からふる*アイス

CHOPI

からふる*アイス

「あついー……」

「言うな。余計にそう感じるだろ」

「だって……」

「うるさい、わかった。アイス食べよ」

「お!やった!!」


 蝉の声がうるさい夏。『今年は暑さが――……』となんだかんだ毎年似たようなことがワイドショーから流れるこの季節。何がどう転んでも、結局暑いものは暑い。

「アイス、何あったっけ」

「知らん、お母さんチョイスだし」

「バニラ系食べたーい」

「文句あるなら自分で買いに行けばいいのに」

「暑いもん、嫌だ」

 お母さんが買い物のたびに買ってしまって置いてくれるアイスがあるおかげで、家から出ずにアイスを食べられるこの環境に感謝する。一方の弟はと言えば、マイペースに『えー、バニラはー?』だのなんだの文句を垂れたりする。いや、買って置いてくれるだけ優しいだろ、うちのお母さん。


 兄弟そろって台所の冷凍庫を開ける。箱アイスの他にも数個、カップアイスも入れてくれているあたり、本当に甘やかされている気がしている。あー、でも残念だな、弟よ。

「残念だったな、バニラ無いわ」

「まじかー……」

 ショックで肩を落としている弟を横目に、自分の好きなアイスを取る。水色のソーダ味のそれは夏の象徴のようで、ちょっとだけ安っぽい味も含めて大好きだ。

「兄ちゃん、ほんとそれ好きな」

「夏、って感じが良いんだろ」

「ふーん。えー、どうしよう、オレ……」

 悩んだ末、弟が選んだのはスイカの形のアイスキャンディー。

「久しぶりだ、これ食べるの」

「なんだかんだ、それも美味いよな」

「結局ね」


 アイスを選び終わって、二人で部屋に戻ってアイスを食べる。かじりついたその味は、いつ食べても変わらない、冷たくて甘い、夏の味。

「なんかわかんないけど、青空の味がする気がする」

「……兄ちゃん、頭大丈夫?熱中症?」

「ちげーよ、うるせーな。」

 隣で同じようにスイカの形のアイスキャンディーをかじる弟。ぼーっとしながら、特に何をするでもなく。

「……あー、やば。ちょっと悔しいけど、わかるかも。青空の味」

「……ふん。わかるのかよ」

「まぁ、なんとなく」

 溶け切る前に全部を食べ終えて、二人でごみ箱に向かって棒を投げ捨てる。運良く今日は二人ともちゃんとゴミ箱に入って良かった。



 夏の味。青空の味。

 あなたのアイスは、何味ですか。

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