第3話
「...ん?なんだアレ?」
帰り道の最中にある工事現場で、何か人影が動いたように見えた。ちらっと見えた感じだと、俺の通ってる高校の制服だったような気がする。
「行ってみるか」
俺は興味本位で夜の工事現場に足を踏み入れた。
その現場ではビルの解体工事を行っていたようだ。バカでかい重機などがいくつも止まっていた。その廃ビルの中に向かって、一人の女子高生が歩いて行くのが見えた。どうするべきかと悩んだが、結局俺は後を追う事にした。
崩れそうな足場にヒヤヒヤとしながらも、俺は上の階を目指した。どうやら女子高生は屋上を目指しているようだ。嫌な予感を感じた俺は、ダッシュで最上階を目指す。
「ハアッ ハアッ!」
屋上に着いた。ドアが開かれていたのでそのまま外に飛び出すと、やはり俺と同じ高校の制服を着た女子生徒がいた。そして俺は目撃してしまう。彼女が今まさに全体重を空中に向かって投げだしている場面をだ。
「まっ......!」
声をかける間もなく、彼女は落下した。それから数秒ほどで風船が破裂した時のような不快な音が響き渡る。俺は慌てて彼女が落ちた場所まで走った。
「うわ... めっちゃグロいな」
恐る恐る彼女が落下した地点を覗き込むと、そこにはこの世の地獄のような光景が広がっていた。これだとしばらくはソーセージとか食べれなくなるかもしれないな。
「...思い出した。確か、同じクラスの沼川秋とかいうやつだ。あの死体」
基本的に他人に関心がない俺でも覚えていたぐらいの美人だ。首がねじり曲がり、潰れたパンケーキのような姿になっても、彼女の死体は美しかった。
「あ~あ。ほんともったいないぜ。...死んだら全部終わりなのによ」
さてと、今の俺には2つの選択肢がある。このまま帰って寝るか、それとも...。
___彼女を助けるか。
「まあ、そろそろ刺激が欲しいと思ってたんだ。...やってみるか。___運命改変ってやつを」
俺はビルから脱出し、寄り道をせず一直線に家に帰った。
PM22:00
アパートについて直ぐに、俺は腹筋ローラーを回転させた。残り2時間が過ぎると、日付が変わり、俺はこの日に戻れなくなる。早い話がオートセーブというやつだ。2日前まで戻る事は出来なくはないんだが、酷い頭痛や眩暈、記憶の混濁などかなりヤバい副作用が起こる。つまり、現状だと1日前までしか戻れない。だからちょとだけ急ぐ必要がある。
「59! 60! そうだ!また1日過ごすのもダルいし、今回は時間を指定して戻るか。夜の21:00だったよな」
ゼロ・ワールドで銀のプレートに触れる瞬間に、おおよその時間を思い浮かべておくと、その時間に戻る事が可能だ。数分刻みという事は無理だが、数時間単位でなら何とか可能だ。
「90! おお。きたきた!!」
バチバチとした発光現象が俺の体に起こり始めた。過去に戻るときに必ず起こる謎の現象だな。このまま100回を迎えれば確実に俺の意識は過去へと飛ぶだろう。
「今回のミッションは、沼川秋の自殺を止める事。...よし!行くか!!」
「100!!」
その瞬間。俺の意識は電子の海へとダイブした。
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