第30話 時の死神
男は始終穏やかな笑みを湛えたままでいる。
ラングは男に背を向けてツカサの肩を掴み、それから左の脇腹を触り服をめくり確認をした。
ツカサの服は竜巻でぼろぼろ、血に染まり鉄の匂いをさせていた。
ラングに買ってもらった胸当ては左脇で留めていた革のベルトが千切れ、かろうじてぶら下がっている状態だ。
「怪我は」
「な、治した、ロナが!そうだ、ロナが!」
「何があったんだ、ツカサ、あの女どうしてロナを!」
わっ、と【真夜中の梟】のメンバーにも詰め寄られ、ツカサは言葉が喉で詰まった。
ツカサの短剣を使っての暴挙、やったのはミラリスだが原因は短剣を奪われた自分にある気がしていた。
ロナの怪我はすぐに治療しないと命を落とすものだった。あの時点でまだ息があったことが奇跡のようにも思えた。
がくがくと膝が震えて倒れ込み、ラングに支えられながら膝を突いた。
「ごめん、ごめん、俺が短剣、ミラリスに取られ」
「落ち着け、まずは何があったかを話してくれ、なぁ」
「ごめん…!ロナ、ごめん!」
ぼろぼろと涙が零れた。
体が自分で抑えきれない程ガタガタと震え、両腕で抑えてもまだ全身が揺れていた。
「ははぁ、これはなかなか、酷いな」
びくりと体が震える。
酷いと言われたのが自分な気がして、ツカサは地面に額をつけるまで項垂れた。
ラングの腕が体の下に入り込み、無理矢理ツカサの体を起こした。
『折れるな、堪えろ、受け止めろ』
情けない顔をしていると思う。唇を噛み締める力もなく、鼻が垂れているのも感じたが拭う気力もない。それでも、小さく頷いた。
「何があったんだ」
カダルが自分を抑えてツカサに尋ねる。
泣いてしまって横隔膜が痙攣し、ひっくひっくと子供じみた音のせいで言葉が出ない。
「聞くよりも見た方が早いだろう」
いつの間にか近寄っていた男がとんとんとカダルの肩を叩いた。
必死になりすぎていたのか反応が遅れた。それとも男が異質なのか。カダルは反射で腕を振り抜くがその時にはもういない。
男は横笛を取り出すと軽やかな短いメロディーを奏でた。
ふわりと大きなシャボン玉のような物が宙に浮かび、水面のように揺れるそこにツカサとロナ、ミラリスが映し出された。
魔力を練るツカサ、
ツカサが魔法を撃とうとしたところで、ミラリスがツカサから短剣を奪い、ロナが咄嗟にミラリスに手を伸ばした。
そして暴発。
シャボン玉は体を切り刻まれ吹き飛ばされたロナを追った。
僅かな時間のあと、ツカサが駆け寄って来るところにミラリスが飛び出し、ロナを連れて【離脱石】を使った。
ほんの一、二分の出来事だった。
前衛に出ていたエルド、カダル、マーシ、そしてラングでさえも何も出来ない状況で、不穏分子であったミラリスが最悪の行動を行なった。
「ロナ…」
カダルが微かな声でシャボン玉へ言った。誰もそのシャボン玉が何かとは尋ねなかった。そんな余裕はなかった。
あの怪我だ、手当てが数秒遅れればそれで命を落とすだろう。
「なんであのクソ女、あんなこと!」
「故郷では、ダンジョン外に金を渡して治療する奴がいる」
ラングの言葉にマーシはくそ、と悪態を吐いて床を踏みつける。
「ツカサのヒールが、一番近いってのに…!」
「間に合わなくて、ごめん」
「いや、悪い、ツカサを責めてるわけじゃないんだぞ」
「そうだ、ミラリスのやりように言っているんだ」
「わかって、る、でも、俺がもう少し早く」
「過ぎたことをうるさい」
「ラング!テメェ」
「ジュマのダンジョン外に、人はいる」
は、と息を飲んだのは何人か。
統括のジルがいて、手当てが出来る要員を置いていないはずがない。何があったと聞く前に行動に移してくれるだろう。
ミラリスが邪魔さえしなければ、だが。
「外は、どうなっている?」
「さぁ、私がそこまで世話をする必要はないだろう」
穏やかな笑みはそのままに、男は横笛を振ってシャボン玉をぱちんと消した。
カダルは強く目を瞑り、何かを堪えて座り込んだ。それが諦観なのかはわからない。
「外に戻ろう、【帰還石】使おう、今ならまだ間に合うかも」
マーシが全員に訴えた。
戦闘中でもない今、全員で帰還することはもちろん可能だ。
「ジルを信じよう」
エルドが低い声で言った。すぐの帰還はないということだ。
それぞれに思うところがあるのだろう、それ以上反論もなければ異論も出て来ない。
男はわざとらしく伸びをして注目を集めた。
「それで、お茶はあるのかな?」
「今淹れよう」
ラングが応え、組み立て式竈を取り出していつもの作業に入った。
ボス部屋の真ん中、焚火のぱちぱち言う音が響く。
転がっている財宝を拾う気力もなく、全員が沈黙してラングを見守っていた。
湯が沸くとラングは空間収納から瓶を取り出し、茶葉をコップに入れて湯を注いだ。
男に差し出せば素直に受け取り、疑うこともなく茶を啜る。
「あぁ、美味しい」
「そうか」
ラングは他の全員にも配り、自身もお茶を啜った。
ツカサは泣き腫らした目でお茶を飲んだ。少しだけ渋みのある紅茶だ。舌を鈍く嫌がらせる渋みに薄めたい気持ちになった。
「ここで何をしている」
ラングがすぱりと切り出した。
先ほど見せられた芸当からしてただの冒険者ではない。一瞬で着替えをして見せたのも、その男が自身の力の一端を見せたに過ぎない。
「修理を少々」
「修理?」
マーシが首を傾げた。
男はくすりと笑って横笛を軽く振り、宙に円を描いた。
「ここで会ったのも何かの縁だろう。理解が及ぶかどうかは置いておいて、少しだけ真理に触れさせてあげようじゃないか」
先ほど同様にシャボン玉がふわふわと波打ち、赤髪の冒険者が映る。その後ろにはたくさんの冒険者がついて来ている。
「先頭は【銀翼の隼】のリーダー、アルカドスだな」
エルドが鋭い目をして呟く。
「なぁ、あんた、これはもしかして、あー、なんていうんだ?」
「過去の映像…?」
「えいぞう?」
「七十八階層踏破に来た時の?」
「ほう、流石イーグリステリアの世界の子だな」
聞き慣れない言葉に首を傾げた。
にこりと微笑まれ、横笛で続きを促された。映像が進む。
アルカドスは全員を引き連れてボス部屋に入った。
そこにいたのは青いドラゴンで、咆哮を上げた後氷のブレスで前衛を固めてしまった。
動けなくなった冒険者は簡単に爪で切り裂かれ、地面に足だけを残して野菜のように転がった。
アルカドスは守護のある盾を持っているのだろう、ブレスが割れて自身にかかることはない。
魔法の支援を受けながら、図体の割に俊敏なドラゴンと大立ち回りを見せた。
振り回される尾に飛ばされ、壁に血をつけて息絶える冒険者。【銀翼の隼】主力メンバーだろう者たちがアルカドスのサポートに回り、徐々に徐々に爪を砕き、尾に切れ込みを入れ、魔法でブレスを軽減したり逸らしたりしていた。
激戦の末、アルカドスの剣が深々とドラゴンの首に刺さり勝利を収めた。
だが酷い光景だった。
千切られた体が、砕けた鎧が、様々なものが飛び散って床に転がっていた。
「捨て駒に連れて来たのか」
マーシが固い声で言った。
主力メンバー以外の扱いはまさしくそれだった。
誰かが攻撃しそちらを向けば隙が出来る。そこを攻める戦い方だった。
戦法としてそれは正しいが、なんの準備もなく、なんのサポートもなく、ただ撃ちだすだけの弾のように使ったのだ。
他のパーティで生き残った者たちは、仲間の死体の陰で震えていた者たちだった。
「これで七十八階層踏破とは、お粗末な」
ドラゴンの後に出て来た素材や魔石、宝箱をアルカドスの主力メンバーがアイテムバッグに仕舞った。
仲間の死体に隠れて震えていたり、恐怖から失禁している冒険者を罵倒し、死んだ仲間の武器や使えるアイテムを拾わせた。
それを奪い取ると離脱石を押し付け、ボス部屋から帰還させた。
一見すると慈悲に見えるが、扉を出て七十九階層への記録を転移石に取らせないためだ。転移石はフロアに足を置かなければ記録されない。
【銀翼の隼】は他の冒険者を犠牲に七十九階層への切符を手に入れたのだ。
「酷いな」
カダルが呟く。
冒険者として情けないかもしれないが生き残った者は強運の持ち主だ。
いずれ【転移石】の上書きが出来る方法がわかれば、七十九階層へ移動できるメンバーが徐々に増えるだろう。だが現状、それは望めない。
七十九階層は【銀翼の隼】が独占したことになる。
ぱちんとシャボン玉が弾けた。
しんと全員が言葉を失っていた。
冒険者として暦の浅いツカサでさえ、あの攻略が良い攻略と言えるものではないとわかった。いや、攻略自体に良し悪しがあるというよりは、冒険者としての行動の善し悪しだ。
「お前たちがどう認識しているかは知らないが、ダンジョンは生きものだ」
お茶を啜り、喉を潤しながら男が穏やかな声で言った。
「
男がにこりと笑ってツカサを見て来る。何か返事を待っているようだ。
「決まりごと、ですか」
「そう、あぁ、君は習っていないのか?」
じ、とツカサを見つめる目が、不思議な動きをしている。
「パーティの推奨人数は聞いているようだな」
記憶と経験を見たのだとわかったのは、ラノベとゲーム脳のおかげかもしれない。
その一言をヒントに男はまた笑みを浮かべたままツカサを見ている。
考えろ、何が言いたい?
「ジャイアントスネークに壊滅させられたパーティが、四人が推奨だと」
ふ、と思いついたことがあった。
「攻略にルールがあった?人数が多かったからエラーが起きた?プログラム異常?」
「プログラムという言葉は良くないな、敢えて進言するがここは現実だ」
「あぁ、はい、それはもう痛いほどわかってます。言葉のあやです」
「もちろん、私も承知しているよ」
楽しそうに返してくるその言葉に揶揄われていることを確信した。
けれど否定がなかったので恐らく正解でもあるのだ。
「ダンジョンが生きものなら、大勢の冒険者がボス部屋に入って攻略したのがいけなかったんだ、きっと」
体に例えてみればわかりやすい。
ダンジョンの中、
いつもなら風邪程度になるところがインフルエンザに罹ったような状態になり、血管である通路に強い魔獣が徘徊することになった。
そうすると
「だから先人が四人と言ったんだ。どこからが上限なんだろう、検証出来ているのかな。でもそういう数が出て来るってことは多くのダンジョンは四人までが許されるんだなきっと、ジュマはどうなんだろ、俺たち今六人で」
「ツカサ、ツカサ、わかるように話してくれ」
マーシに声をかけられてハッとした。謝って浮かんだことを言葉にした。
「今回のダンジョンの異変は【銀翼の隼】が大人数で攻略したことで、ダンジョンの防衛機能が動いているんだと思う」
「ご名答、ご明察。では私は?」
「医者みたいなものかなって、思いました」
「近からずも遠からず」
「どっちですかそれは」
「愉快な子だ!」
初めて声を上げて笑われて何やら居た堪れなくなる。涙を拭う程笑って男はツカサに体を向けた。
「別に隠すことでもない、自己紹介からしようか。私はセルクス」
立ち上がり、横笛を手に綺麗なお辞儀をする。
ふわりと楽な服装から最初に見た美しい刺繍の白いローブ姿に変わる。
左頬にはタトゥーが浮かび上がり、横笛だったものは装飾の美しい光輝な大鎌に変わっていた。刃先は恐ろしいほどに青白く澄んでいる。
「我が名は
よろしく、と会釈され、後ずさったのはマーシだ。
「し、死神の神様!?」
「私はただ、終わった命を次へ
そもそも、神がこんな風に人と関わって良いのだろうか。
ツカサはあまりのことに驚くことも騒ぐことも出来ないでいた。
「修理、なんだ?」
ラングが動じもせずに尋ねる。反応が期待していたものではなかったのだろう、男、セルクスはつまらなそうにまた楽な服装で座り直した。
「ダンジョンも一つの命だからな、丁度暇だったのもあって治しに来た。お代わりをもらえるだろうか?」
ラングがお湯をコップに注いだ。二番茶は薄いのだろう、僅かに眉を上げたが文句は出て来なかった。
「じゃあ、神様が治せばダンジョンは元に戻るということですか?」
「平たく言うとそういうことだ。仕事を増やさない為に、二週間ほど閉鎖してもらえると私が楽をできる」
ほっと全員が息を吐いた。今回の依頼は七十八階層まで辿り着き、原因を解明することだ。今の会話が本当であれば二週間後には元通りのダンジョンになっている。
同じことを防ぐためにはボス部屋に入る人数を限定する必要が出て来るだろう。そこはジュマの冒険者たちが考えることだ。
「じゃあさっさと戻ろう!ロナが心配だ」
マーシが立ち上がり全員を急かす。エルドとカダルも頷き、ラングは焚火を落とした。
財宝を持って行って良いかと尋ねれば、セルクスは肩を竦めて許可をしてくれた。
「私には不要なものだ、構わない」
セルクスが横笛をくるりと振って見せた。転がっていた財宝や素材が浮かび上がりツカサの眼の前に来る。
空間収納を開いてみれば、そこにするすると入り込んだ。神だ。
ハッとしてツカサは日本語で叫んだ。
『あの、神様なら、俺とラングを元の世界に戻すことはできますか!?』
ぱちくり、という言葉が合うだろうか。
セルクスは目を大きく見開いてツカサを見ていた。その顔は予想外のことを言われた顔だ。
「ツカサ、何してんだ早く!ロナの」
とーん、と音が響いてマーシの声が止まる。
振り返れば全員が微動だにせず止まっていた。漫画やゲームで良く見る時間停止というやつか。
『少しだけ話しをしようか』
『ラングも、話しに』
『あまり時間がないので君だけだ』
返事をするまでに少しだけ悩んでしまった。ラングも会話にいた方が確実に漏れが無くなる。ツカサ一人で会話することの責任が重い気がした。
ラノベやゲームの主人公のように何かに導かれてとか、使命を帯びていればまた神に出会うこともあるだろう。けれど、今のところツカサにはそう言った要素が皆無だ。
これが最初で最後の邂逅かもしれない。
『わかりました』
言葉と行動には責任を伴う、その覚悟を持つんだ。
本質では理解が出来ていないが、ツカサはセルクスを見上げた。
『良いだろう、先程の質問へまずは質問を返そう』
ぶわっと風が吹き抜け刺繍の輝く白いローブになったセルクスがゆっくりとその眼をツカサに向けた。
嘘を許さぬ神の眼。ツカサは心臓を握られた気がした。
『汝、自ら望んでここに来たのではないのか?』
『――違います』
ツカサははっきりと答えた。
セルクスはまた少し驚いた顔をした後、優しく微笑んだ。
『そうか、では答えよう。無理だ』
答えは厳しい物だった。
『神様なのに無理なんですか』
『神だからこそ無理なのだ』
嫌味を込めて返せば誠実に返されてしまい、ツカサは自分の浅薄さに恥ずかしくなった。
時間を止められることから相対している人は確かに神だろう。その人が寛大で誠実だからこそ、今会話が出来ているのだ。
『どうしてだめなんですか、家族が心配してると思うし、学校だって受験も!ラングはお弟子さん、息子に子供が、孫が出来てるんです!』
『そうか』
『どうしてなんですか!理由を教えてください!』
『ダンジョンの話しと同じだ、少年。生けるものであればすべてが
権限がないから出来ないのだと言われても、神なのだからイレギュラーはあるだろうとも思う。
『戻れないんですか、俺も、ラングも』
『探せば方法はあるだろう』
『どこに?どうやって?』
『それを示唆する権限も私にはない』
『神なのに!』
『神だからこそだ。神が理を侵す訳にはいかない』
あんな。
あんな想いはもうしたくなかった。
痛くて苦しくて、死ぬんじゃないかと思った。
【友達】は死にかけて安否もわからない、死んだと言われたくなかった、戻りたくなかった。
ここで帰ることが出来れば結果を知らないままで、生き延びたという幻想を抱いて生きることができる。
なのに、かえれない。
『いやだ、もういやだ』
『少年、ラングが言っていただろう、折れるな、と』
『だって!人が簡単に死ぬ世界なんて!』
『どの世界でも人は死ぬ』
水面のように静かな声色に体の震えが自然と収まった。
『目を逸らすな。命は生きればこそ必ず死ぬ。絶えず死を友として生きるのだ。さればこそ私は導くことが出来る』
詩を歌うようにセルクスが囁く。しんしんと降り注ぐ雪のように冷たくて優しい声だ。
不思議な響きが胸に直接届く様な気がした。
『イーグリステリアの世界の子よ、真実を求めるのならば歩みを続けるが良い』
横笛を上から下へ振り下ろせば、美しい大鎌に変わる。
『汝に
大鎌の柄がとすりと肩に乗った。そのまま少しでも腕を動かせばツカサの首は落ちるだろう。
けれど、恐怖よりも興奮が勝っていた。
これは騎士の叙勲と同じことなのだと本能で理解した。作法を知らないはずなのに体が動く。
ツカサは瞑目し逆らわずに両膝を突いた。
強制されたわけではない、重さに抗うことももちろんできた。何せその鎌はセルクスの手によりしかと支えられ、ツカサの肩には触れていただけなのだから。
選択したのはツカサ自身だ。
『歩みを止めるな。その歩が進むは死出の道、けれど、それは命の定め』
自身のことも、他者のことも、同じである。
慰められていることに気づいて、随分と人間臭い神様だなと思った。
肩に触れていた大鎌が消え、顔を上げた。
『少年、名を聞こう』
『三峰司です』
『これは神としてではなくセルクスとしての助言だ』
『え?』
『正義はやり方を間違えれば正義ではなくなる。時に沈黙が宝石となり、何にも代えがたい信念となる』
目の前にいる神様がただ普通の人間に思えて混乱した。
先ほど荘厳な雰囲気でツカサの前にいた神はどこに行ったのだろう。
『忘れるな、司。運命を切り開くのも掴むのも、自分の行動次第だ』
『…はい』
頷いて応えた。すべてを理解は出来ていない。
唐突に情報が自分の中で溢れ出してしまい理解力が落ちた気がする。胸やけを感じた。
「ところへ早く戻らないと!ツカサ?」
マーシの声がして振り返る。
「戻るぞ、大丈夫か」
「あ、うん、大丈夫」
「諸君、よろしく伝えてくれ、二週間だ。次があれば私は来ないこともよぅく伝えておくように」
「二度目はないってか、神様だねぇ」
「柔軟に受け入れてもらえて感謝している」
「こちらこそ、ダンジョンをよろしくお願いしますよ神様」
自身の眼で見たものを信じる冒険者だからこその柔軟さでもあった。
道端で会っただけなら神と言われて信じることもなかっただろう。不思議な術を見せられ、ツカサがそれを肯定し、その在り方を見せられたからこそ信じた。
そうして冒険者の信頼を勝ち取った所作に感服した。
「また会おう、ツカサ。力の使い方を間違えるな」
不敵な笑みを浮かべてセルクスが言った。はい、と応えたが何のことだろうか。
そういえば何故ラングの名前を知っていたのだろう。
疑問に思った質問はカダルの唱えた
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