深夜の生物系の研究室、ひと休みがてら繰り広げられる、吸血鬼に関してのちょっとした与太話。
どこか知的なコラムにも似た読み味が魅力の、現代もののドラマです。
生物学的なアプローチによって『吸血鬼』というものを紐解く、ちょっとした思考のお遊びのようなもの。
専門的な内容ではあると思うのですけれど、でも決して難解ということはなく、理解できる内容をわかりやすく噛み砕いて説明してくれるところがとても好きです。
ある種の頭の体操みたいな、言うなれば「この問答そのものが気持ちいい」という読み味のお話。
とはいえ、やっぱり好きなのは物語の着地の仕方。
ただの問答や与太話に終わらない、ひとつの『物語』としてのつまりは『サゲ(オチ)』のようなもの。
このオチが、ちょっとネタバレになってしまうのですけれど、しっかり〝ついていない(断定はしていない)のについている〟のが大好き。
リアリティラインの境界に引かれた線が、とても綺麗な形で想像の余地を与えてくれる、この読後感がたまりません。
上品で綺麗で知的な、すっきりした読み味が嬉しい物語でした。