第5話 シンプルイズベスト
こんにちはスケベオタンコナスこと岡田朝日です。
あの後、踊り場に散らばった教材はどうしたのかって?
もちろん全部うさぎ跳で運びました(嘘)
今日は補習がないため久しぶりにデパートに来ていた。
目当てはコーヒーチェーン店の新作であるニンジンフラペチーノ。
普段なら絶対にスルーするネーミングであるが、何故か無性にそそられた。
たまにはウサギさんの気分を味わうのも悪くないだろう。
待つこと十数分。
注文したニンジンフラペチーノが運ばれてきた。
見た目は鮮やかなオレンジ色で思っていたよりも美味しそうだ。
もしかしてこれは期待出きるのではないか?
そもそもオレにはウサギさんの加護がついている。
ウサギさんが大好物のニンジンを使ったフラペチーノだ。不味いわけがないだろ!
そんな事を考えながら、ストローに口をつける。
これは!
「5点」
****
せっかくデパートに来たので少しブラブラする事にした。
夏休みなので人が多く何とも窮屈な気分だ。
時折見かける若いカップルに中指を立てながら店を物色していると、聞き馴染みのある声が聴こえてきた。
「朝日じゃん、こんな所にいるなんて珍しい。雪でも降るんじゃない?」
そこにはオフスタイルの服装に身を包んだ美香の姿があった。
「こんな真夏に雪なんて降らないだろ。まぁ階段から教科書は降ってくるかもな」
「脇腹が痛そうね。私が見てあげよっか?」
普段ではあり得ないほどニッコリとした顔で見つめてくる彼女。
「じょ、冗談だって!ニンジンフラペチーノでも飲んで落ち着けって」
「ヤダ。絶対不味いもん」
ウサギさん南無。
「で、美香は何してるんだ?」
「友達と新しくできたプールに行くことになって水着を選んでたの」
オレはスッと視線を下に向ける。
服を着ていても分かる大きなお山。
身長は止まったようだが、ここは成長中のようだ。
もしかしたら、そっちに栄養が吸われているのかもしれないな。
「まぁ、買わないといけなさそうだな」
「そ。だから探してたんだけど中々決まらないのよね~」
「大変そうだな」
「自分だと決められないから朝日も手伝ってくれない?」
「え、オレ?」
「そう。どうせ暇でしょ?」
「暇だけどオレ男だぞ?」
「知らない男の子なら恥ずかしいけど、朝日なら気を使わなくて良いし」
「まぁ...良いけど」
「ありがと。ちょっとここで待ってて」
そう言って店内に戻って行ってしまった彼女。
女性の水着売り場と言うこともあって自分が何とも場違いな気がしてならない。
ニンジンフラペチーノを片手に水着売り場の前で静止するオレ。
落ち着かない気分でソワソワする。
これが俗に言う放置プレイか!
くっ美香の奴オレにこんな仕打ちをするなんて!オレが何をしたって言うんだ!
「お待たせ~。これとこれで悩んでるんだけど、どっちが良いと思う?」
美香が白色の水着と水色のシンプルな水着を持ってきた。
どちらも可愛らしいデザインで悪くない。
美香の事なので動物がプリントされた攻めているデサインの物を選ぶと思ったが意外だ。
そう。そこに置いてあるパンダさんの水着のように...
「どこ見てるの?」
「いや、そこのパンダさんをちょっとな」
「私の事バカにしてる...?それともそのフラペチーノみたいになりたい?」
「こ、粉々は嫌だ!粗削りでお願いします」
少々お遊びが過ぎたようだ。
「で、どっちの方が良いと思うわけ?」
「う~ん、どっちも良いと思うけどな。実際に着けて見ないことには何とも言えないんじゃないか?」
「それもそうね。ちょっと着替えてくる」
そう言って試着室に入っていってしまった。
溶けかけのフラペチーノのチビチビと飲んでいると、突然試着室の中から悲鳴が上がった。
「キャッー!」
「美香どうした!?」
「出た!出たの!朝日早く助けて!」
美香に一体何があったんだ!?
オレは美香を助けるべく、試着室のカーテンを開いた。
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