第3話 可愛いウサギが跳ねてるぞ



 こんにちはエッチな男こと岡田朝日です。


 あいつはどうなったのかって?

 あぁ生物のワークならオレの家で寝てるよ

(家に忘れてきた)


 今日も今日とて補講をこなす日々。

 怒っていると思われた美香だが、ケロっとした顔で何事もなかったように話しかけてきたので大丈夫だろう。

 もしかしたら本当に何もなかったのかもしれない。

 そうだよな?熊さん!


 補講を終えたオレはオアシスたる自宅に帰るため階段を降りていた。

 その時、高く積まれた教材を運ぶ女子生徒の姿が視界に映る。


「あれ?朝日じゃん。まだ帰ってなかったの?」


「そういう美香こそ何やってんの?」


「山田先生に頼まれて教材を運んでるの。あー重たいなー。誰か手伝ってくれないかなー」


「あーはいはい。手伝いますよお嬢さん。で、どこまで運べばいいの?」


「ありがと。3階の理科準備室までお願い」


「了解。おおっと。結構重いな」


「か弱い女の子には酷な作業でしょ?」


「か弱い女の子は生物のワークで叩いてきたりしな...」


「何か言った?」


「何でもございません!」


「よろしい」


 小倉さんは暴力を振るったりしない素敵な人です!


 黙々と教材を運ぶ出すオレ。


 文句も言わずに手伝ってあげるオレはなんて優しいんだろう。 きっとこれで昨日の事もチャラになったはずだ。

 チャラにしてください。お願いします。


「あとこれを運んだら終わりだから」


 分担したことによって作業はすぐに終わりそうだった。

 両手いっぱいに教材を持つ彼女の後を追う。


 このまま何事もなく終わる。そう思っていたのだが...


 階段の踊り場にさし掛かった時、突然強い風が吹き上がった。


「キャ!」


 小さく悲鳴をあげる美香。オレは何事かと思い階段にいる彼女を見上げた。


「ウサギさん...だと!?」


 すると、そこには汚れを知らない純粋無垢なウサギさんがこちらを覗いていたのだ。


「あ、朝日上向いちゃダメ!見ないで!」


「見てない!見てない!」


 見てます。見てます。


「ダメ、もう!両手がふさがって!本当に見てないよね!?」


「本当に見てない!絶対に見てないから!」


 めっちゃ見てます。ガン見です。ありがとうございます。


「なんで!ずっとめくれてるの!」


 捲れたスカートを戻そうとピョンピョンと跳ねる美香。

 あぁ、なんて元気なウサギさんなのだろうか。

 にっこりと笑うウサギさんを見てこちらも自然とにっこりしてしまう。

そんな微笑ましい光景を見ていた途端、彼女がバランスを崩した。


「あっ」


 階段から足を踏み外してしまう彼女。


「危ない!」


 オレは持っている教材を投げ捨て、彼女の落下地点に滑り込んだ。

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