第21話 お絵描き配信(3)〜白い四角は大体ハンペン。なお、豆腐は認めないものとする〜

「最初は……、私のお題ですか」


 雪がスタートのボタンを押すと、まずは雪のアルバム、もとい雪のお題のしりとりが表示される。そして、雪のアイコンから伸びる吹き出しに書かれているお題をAIが読み上げていく。


『犬に追われるジン・ノービル』


「何で俺が犬に追われるんだよ!」

「だって先輩犬苦手じゃないですか」

「だから言ってんだよ!」


 人の苦手なものを書かせるな!


 へ?……俺に心当たり?別にないよ?俺の前世はマザーテレサだし、まさかそんなことするはずがない。


 さて、そんな弁明の最中も絵しりとりは進んでいく。


『犬に食べられるジンくん(私も食べたい)』


「なんで犬に食われてんだよ!」

「良いじゃないですか、犬、可愛いですよ?」

「全く関係ねーよ!あと、解答者怖すぎるって!」


 最終的にはこのお題は『肉を食べる犬』となってしまった。俺が真っ黒なせいで肉片と一緒に書いても俺だと認識されなかったらしい。……悪かったなススワタリで。たとえ目玉をほじくられても出て行ってやらんぞ!


 ちなみにだが、俺はここのお題を文面として答えたので勝負に関しては全く関係なかった。


 ……俺に回ってきた時は肉片を食べている犬の絵だったため、うわーグロイなー、などと思っていたが、まさかそれが俺だったとは。


 南無三南無三。


「それにしても先輩良かったですね、これで可愛いものの一部になれましたよ?」

「何も良くねーよ。サイコパスの思考かよ」

「でも、可愛いと好かれますよ?」

「……誰にだよ」

「うーん、私とか?」

「んじゃあ、いいや。犬の一部となってまでお前に好かれようと思わん」

「先輩、その言い方だと少なくともいつもは私に好かれようとしてるってことになりますけど?」


 あっ、またやらかした。くそぅ、前回気をつけようって決意したばかりなのに……。


「……先輩後輩としてだよ。……他意はない」

「ふふふ、そうですか」

「……なんだよその顔は」

「いやいや、何でもないですよ?ただ先輩は可愛いなー、って思いまして」

「……うるせぇ、次行くぞ」


 俺は微笑ましそうに笑っている雪から顔を晒しつつ、無理矢理次のアルバムへ移行する。……調子が狂うな、まったく。


 ・ジンくん犬苦手なのか

 ・だから犬かw

 ・なんか犬に飛びつかれてジンくん血出てるの草

 ・上のコメントに少し狂気を感じる……

 ・あっ、犬に食べられるジンくんになった!

 ・草

 ・犬は犬でもポメラニアンとトイプードルw

 ・トイプードルとポメラニアンに負けるジンくんは弱すぎて可愛い

 ・あ、ジンくん消えた

 ・まぁ、真っ黒だししょうがない

 ・ジンくん正直分かりやすい特徴ないしな、オッドアイくらいしか

 ・メアちゃん、それは良いとは言わないよ

 ・思考が完全に危ない人で草

 ・メアちゃんに好かれるなら肉片でも良いかもしれん

 ・ちょっと今から野生のシベリアンハスキーとドーベルマンとジャーマンシェパード探してくるわ

 ・コメント欄の命軽すぎて草

 ・難易度が高すぎるw

 ・あっ、ジンくんまた失言を……

 ・てぇてぇ

 ・ちゃんと否定しない辺り実際にそうってのがまたてぇてぇ

 ・メアちゃんすごく嬉しそう

 ・めっちゃ幸せそうな声出してて草

 ・見ろさっきのリスナーども、お前らがたとえ肉片になって犬の一部になっても可能性はない

 ・ぐあぁぁぁぁぁぁ!

 ・ぐはっ!やるなジン……!

 ・完全な一人芝居ですね

 ・目と目が合う前に勝負しかけて、目が会った時にはもう既に負けてるの草

 ・……まぁ、そもそも他のVと違ってガチでメアちゃんのこと好いてる人はここにはいないだろうけど

 ・そんな人にとってはこの配信は生き地獄だしな


「お、次のアルバムは俺のか」


 画面が切り替わると、1番上のアイコンが俺になり、吹き出しからもゲームの最初で設定したお題が表示されていた。


 先程と同じくAIがそれを読み上げる。


『お化けに追われるメア』


「先輩も同じじゃないですか!」

「良いじゃん可愛いから」

「......何ですかいきなり。いや私も嬉しくないというわけじゃないですけど会話の流れにそぐわずいきなり……」

「ちげーよ、お化けの方だわ」

「………………まぁ知ってましたけどね?」


 俺の言葉に明らかに不機嫌そうな声で返事する雪。うーん、人間ここまで分かりやすく嘘をつけるとは驚きである。


「さてこのお題がどうなるのか……」

「私は個人的にもゲーム的にもどうもなってほしくはないですけどね」


 俺たちがそんな会話をしていると一枚目の絵が表示される。


 しかし……、


「下手ですね」

「下手だな」


 その絵は何とも酷い出来だった。特徴的な雪のデザインはなんとか分かっても、お化けは全く分からない。次の回答者は雪だったのだが、その雪が出した答えが……、


『ハンペンに追われるメア・ホワイト』


「自分でそれ書くのかよ……」

「しょうがないじゃないですか……。四角い白い物体なんてハンペンにしか見えませんよ」


 呆れたようにそう言う雪。


 もっと別の白い四角い物体はあるだろうに何故よりにもよってハンペン……?


 ……この後ご飯でも作ってやるか、きっとお腹が空いているのだろう。


 さて話は戻り、雪の次の人の絵は上手く書けていた。しかし、ハンペンの書き方が分からなかったらしく、またもや白い四角が雪の後方に置いてある形となってしまった。


 そのため角度を変えて見ると雪の上に被さる形と見えるようになり……、


『ハンペンに押しつぶされるメアちゃん』


 こんなことになってしまった。


 そして最後の絵は、この部屋最高の画伯が手がけたことで……、


『ハンペンに食べられるメアちゃん』


 それはもう酷いお題になったのだった。


 さて、そんなアルバムを見て雪はというと、


「もう意味わかんないです‼︎何がどうしたらお化けに追われている私が、はんぺんに食べられている私に変わるんですか!おかしいでしょう⁉︎先輩もそう思いません?」


 もちろん大変ご立腹な様子である


 そして、そんな雪に同意を求められた俺はと言えば……、


「ふふっ……ふっ、た、確かにな……、ふっ、おかしいな、ふふっ」


 大爆笑していた。いや何とか笑いを堪えているが……、もう限界だ。


 だってしょうがないだろう?俺が犬に食べられているのを見て散々揶揄ってきた奴が、まさかのはんぺんという生き物ですらないものに食われているのだ。笑わずにはいられない。


「何笑ってるんですか!」

「ふふっ、良いじゃん、可愛いし」

「はんぺんのどこが可愛いんですか‼︎ただの真っ白な食材じゃないですか‼︎」

「いやでも……ふふっ、モテるぞ?」

「モテないですよ‼︎どうやってその思考に至ったんですか‼︎」

「大丈夫俺は…………、ごめん、やっぱ無理かも」

「そこで言い直さないでください!」


 ・お、次はジンくんのか

 ・ジンくんのお化けもメアちゃんと同じ理由なのかw

 ・やっぱり似たもの同士

 ・てぇてぇ

 ・あっ、メアちゃんが勘違いしちゃった……

 ・不機嫌そうなメアちゃん可愛すぎる

 ・こんな分かりやすい嘘初めて見たwww

 ・このお題もしかしてアレか……?

 ・あー、雪ちゃんも困惑しながら書いてたやつな

 ・画伯誕生www

 ・単純なお化けがハンペンに見えるのはもはや才能では?

 ・あ、これは

 ・雪ちゃんの画面で見た絵だ

 ・てか、はんぺんだってこと当たってるのおもろすぎwww

 ・コメントじゃ違うって言われてたけどなw

 ・てか何でみんなはんぺんってわかるんだよw

 ・なんで雪ちゃんがはんぺんに潰される絵に赤が必要なんですかね?

 ・こんなことしたら……

 ・あ、やっぱりなった!

 ・あ、食べられた。

 ・メアちゃん激おこで草

 ・最後のやつ大戦犯だろwww

 ・ジンくん大爆笑してるwww

 ・可愛いってw

 ・まぁ、言われてみれば可愛いかも

 ・洗脳済みで草 

 ・モテるはデマすぎるwww

 ・いやジンくんも無理なんかい

 ・俺はいけるぞ⁉︎

 ・呼んでないので帰ってもろて


 こうして、俺たちのお題はなんとも言えない形で終わってしまった。……いやこれがこのゲームの醍醐味なんだろうけど。


 さて、次はいよいよ勝負である。今何かできるわけではないが、なんとか勝てるよう頑張りたいものである。

 

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 すいません。明日から四日間テストなので投稿できないかもです。一応2日に1話投稿を心がけているのですがキツそうです。




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