第20話 お絵描き配信(2)〜悪いことの良い言い換えは大体”特徴的”〜

「では、早速やっていきましょう!」


 雪の掛け声と共にゲームが始まる。


 このゲームは最初に全員がお題を書き、それを次の人が絵に書いて次の人に渡し、その次の人がそのお題を考えて回答して、また次の人が……、と続けていく所謂お絵かき伝言ゲームだ。


 最大30人でやるのだが、それだと時間がかかり過ぎてしまうため今回は8人でやっている。


「まずはお題か……」

「あ、先輩、言い忘れてましたがセンシティブなやつはなしですよ?」

「分かってるわそんなこと。言われるまでもなくお前のそういうことは書かねーし、描かねーよ」

「……なんかそう言い切られると逆にムカつきますね」

「なんでだよ!」


 雪と雑談しながら俺は『お化けから逃げ惑うメア』と入力する。……なぜお化けかって?それは雪がホラーが苦手だからである。


 別にその絵を見て雪が怖がったりすることはないが、いつも余裕そうな雪が怖がっているのは、たとえ絵だとしても良いものがある。


 ……おい、今性格が悪いって思ったお前!うるせぇ!こっちはもっと性格悪いやつの被害者だぞ!


 ......おっと、ゲームが始まったな。


 えーっと、お題は......、ジンメアてぇてぇ、か。


 いや、来るのは予想してたけど……。まじでこんなことしてるから俺らがどんどんカップル扱いされるんだよ!


「先輩どんなの来ました?」

「……何とも納得のいかない話題が来たわ。お前は?」

「……私もあまり描きたくない話題が少々」


 どうやら同じようなお題らしい。何とも芸のないメアンデルタールジンどもである。


 ・センシティブなお題はなしか……

 ・まぁ、当然やね

 ・【このコメントは削除されました】

 ・うわっ、危なそうなコメントしてるやついる!

 ・ナイス削除

 ・人の彼女にセクハラとか最悪じゃん

 ・いや、もしかしたらジン君のほうかもよ......

 ・ホモか......、よろしい通れ

 ・ホモには寛大なメアンデルタールジン

 ・やらないか

 ・ほう、お前もか......、ちなみにどこ住み?

 ・会いに行こうとするなwww

 ・なるほど不憫なメアちゃんか......、アリだな

 ・メアちゃんはどんなお題にするんだ?

 ・うーん、二人とも同じようなお題で草

 ・明らかにこのお題の数多いだろ


 ちなみにだが俺と雪にはコメント欄が見えないように消している。逆にリスナーからは俺たち二人の画面が見えている。


 ……なんか好き放題言われている気がする……。気のせいだと信じたいが。


「よし描き始めるか」


 俺は液タブを手に取って書き始める。この液タブは俺の、ということではなく雪のお古だ。いつか雪から押し付けられたやつを物置から引っ張り出してきたのだ。なので俺が普段から絵を書いているとかそういうことではない。


「そいえば先輩の絵見たことないですね……。得意なんですか?」

「ふっ、まぁ、中学の時の美術の先生に素晴らしい、と言わせる程度には得意だな」


 高校では選択科目で美術はないが、中学の時は作品の度に先生に褒められていた。


 あ、ちなみに高校で美術を選択しなかった理由は中学の卒業式にその先生に言われたことが原因だ。


「お前は確かに美術の才能は素晴らしいが、高校ではぜっっったい美術選ぶなよ?いや、お前が下手とかそういうことじゃないんだけどな?だけどな絶対美術はダメだぞ?絶対だからな?」と迫真の顔で言われた。


 理由は分からなかったが、その先生のことはたくさん褒めてくれて好きだったので、言う通りにしたのだ。


 あの人、元気にしているだろうか?……もうそろそろ天に召されたかもしれないな。結構年寄りだったし。


「へー、あの先生厳しい人なのに……」

「まぁ、楽しみにしとけよ」


 ふっふっふ、力の差を思い知らせてやろう。いつもの借り、返させてもらう!


 俺はタブレットにペンを滑らせていく。まずは顔から。黒のインクで画面上のキャンパスに輪郭を描いていく。


 えーと、ここは真っすぐでその後凹んで?その後はギザギザしてまた真っすぐで、その後は……。俺は黙々と描き続ける。


 これは最高傑作の予感……⁉


 よし、あとは服と色を塗って……。


 ここは黒でここは緑、ここは......、薄焦げ茶色で……、よし!できた!


「……完成だ!」

「先輩早いですね」

「ふっふっふっ、確かに早いが、クオリティは伊達じゃないぞ?」


 俺の中の最高傑作だ。レベルが違うぞ?


 ・お、書き始めた

 ・先生に褒められて自信持つとか可愛いかよ

 ・俺も褒められたことあるぞ、特徴的な絵ですね、って

 ・それ下手な絵のことを言うんやで

 ・ただの悪口の言い換えで草

 ・でもなんかジンくん上手くね?

 ・ホントだ!マジで上手い!

 ・あ、でもメアちゃんもめっちゃ上手いぞ

 ・いやこいつら上手すぎだろ

 ・ん?でもあれ?なんかジンくんの絵おかしくね?

 ・うぇ?お前何書いてんの?

 ・は?どゆこと?

 ・え?は?マジで……?え?

 ・コメント欄大混乱で草

 ・いやマジでジンくんのやつ……え?

 ・メアちゃんは安定に上手いんだけど、ジンくんのやつ……、いや上手いのは確かなんだが……、え?え?え?


 ふっ、コメント欄の賞賛が聞こえてくるぜ。(幻聴)


「……じゃあ先輩勝負しません?私の絵と先輩の絵をリスナーは見比べてもらって、負けた方が相手の命令を一つ聞く、でどうですか?」

「……いや、やめとくわ」

「何であそこまで自信持っててそこで引くんですか……」

「だってお前絵習ってたじゃねーか‼︎普通に勝ち目ないわ!」

「でも、あくまで私が習ってたのは美術的な絵ですよ?それなら先輩にも勝ち目があるんじゃないですか?」

「むっ、確かに……。いや、しかし……」


 その勝負をやるのに命令を一つ聞くってのはリスキーすぎる。


 しかし、そんな迷ってる俺に対して雪は一言。


「逃げるんですか、先輩?」

「……いいだろう。俺が格の違いを見せてやる」

「わー、流石おイキりられてる先輩、煽り耐性がゴマ粒並みです」


 別に挑発に乗ったわけじゃない。ただ、ここでやらねばって思っただけた。……だから挑発に乗ったわけじゃないのだ。ないったらないのだ。


 ・勝負いいね

 ・……ジンくんのやつ勝負できんのか?

 ・うーん、まぁできなくはないが土俵が違う感じがする……

 ・へー、メアちゃん絵習ってたんだ、道理で上手いわけだ

 ・しっかりジンくん乗せられてて草

 ・うーん、煽り耐性ゼロ!


 それから何枚か絵を描いて、答えを書いて、いよいよ全部終わり、みんなの絵とお題の確認となった。


「先輩良いですか?」 

「もちろん、お前こそ負ける準備はできたか?」

「いやいや、私が先輩に負けることなんてありませんから、私天才ですし」

「いやいや、絵に関しては俺も天才だから」

「……まぁ、良いでしょう。どうせこのボタンを押せばすぐわかります」


 こうして絵しりとりの答え合わせ、および俺たちの勝負が始まるのだった。


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 すいません。テスト前なのでちょっと少なめです。ホントは勝負が終わるまで書こうと思ったんですが……




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