第19話 3回目の配信(1)〜ふと素顔を見るとギャップを感じて何か来るものがあるよね〜
前回のコラボ配信から数日後、今俺たちは3度目の配信をしていた。
元々はここまで早く次の配信をする予定ではなかったのだが、チャンネル登録者が伸びに伸びて只今9万人、流石に10万人行くまでにもう一回くらい配信やった方が良いんじゃないか、ということで今の状況になっている
「皆さんこんにちは〜、メア・ホワイトと———」
「ジン・ノービルです」
俺たちのなんの変哲もない質素な挨拶を皮切りにコメント欄が凄い勢いで流れていく。
おおー!これがウィーチューブドリーム!
……あれ?これ意味違うかもしれん。
・待ってた!
・5万人突破おめでとう!
・配信2つで5万人突破は草
・なんならあともうちょっとで10万人だけどな
・やばすぎ
・もう企業勢並みの勢いだよな
・まぁ、一応ナコたんの力もあるけどな
・だとしても凄すぎる
・記念配信とかやるの?
「改めて、チャンネル登録者五万人ありがとうございます!……ほら先輩も!」
「あ、えーと、ありがとうございます?」
「なんで疑問形なんですか、こんな時まで人見知り発動しないでくださいよ」
「良いんだよ、感謝はどれだけ気持ちが籠ってるかが重要だから」
「先輩の声からは微塵もそれを感じませんでしたけど?」
「……俺はポーカーフェイスだから」
「声に関係ないじゃないですか、それに先輩心理戦クソ雑魚ですし」
「…………えっと、記念配信は————」
「あ、逃げた!」
分が悪くなって背中を向けた俺にしっかり矢を放ってくる雪。
うるせぇ!戦略的撤退だ!
逃げるは恥だが役にたつ、なんと素晴らしい言葉だろう。◯野源を俺は尊敬するよ。まぁ、タイトルに◯野源関係ないだろうけど。
「明日も学校あるから早めに終わらなきゃいけないだろ?」
「……確かにそうですね。今回は先輩の思惑に乗ってあげましょう」
俺の無理矢理の説得に雪は不機嫌そうに納得して、続けて先ほど俺が言いかけた話をする。
「あ、それで記念配信はですね、先輩とも話し合ったんですけどしません。っていうかできません。逆に何するんですか?日が浅い私たちが。先輩の一人漫才とか?」
「何で俺だけなんだよ、お前もやれよ!というかその場合お前は何やるんだよ!」
「……現場監督?」
「ニートじゃねーか‼︎」
俺だけでで1時間一人漫才とか地獄だろ。いやまぁ、だから一人漫才なんだけどさ。
「んー、じゃあ凸待ちでもやります?」
「俺たちの交友関係ナコミだけなんですが?」
凸待ち一人とかそれもう雑談配信じゃねーか。なんなら凸待ち0人よりも悲しいかもしれん。あれはそういうムーブだしな。
「じゃあ……、歌枠でもやります?」
「俺が歌えると思うか?」
「無理ですね」
「だろ?」
「何で先輩が誇らしげなんですか……」
「友達のひい爺ちゃんの遺言が誇りを持って生きろだったからな」
「それただの他人ですよ!」
ま、嘘なんですけどね。そもそも友達全然いないし。俺も友達欲しいよ櫻井さん……!丸いピンクのやつでもいいから!
・ジンくんコミュ障出てて草
・やはりお前はこちら側だったか
・元気出せよ同士
・でも、こいつ彼女いるぞ?
・殺せー‼︎
・一生そこで元気出さないでいてくれ
・手の平ベイブレードで草
・いつかバーストしそう
・かなりグロテスクで草
・まぁ、たしかに記念配信でやることないしな
・ジンくんの一人漫才ちょっと見てみたいw
・凸待ちに来たナコたんずっと居座ってそう
・凸待ちじゃなくてそれはもうコラボ配信では?
・まぁ、後ろに来る人もいないしな
・歌枠見たい!
・ジンくん……音痴なのか……
・誰だよ友達のひい爺ちゃんwww
「さて、そんな茶番はどうでも良いんですよ。結局言いたいのは記念配信はなし、ってことだけですから。……それはともかくとして!今日はゲーム配信をしようと思います!」
「……え?そうなの?」
「なんで先輩が知らないんですか!」
「いや、だって言われてなかったし……」
「メールで送りましたけど?」
へ?そんなことは無かったと思うが……、基本雪からのメールは全部見てるはずだし————あ。
「そういや麻雀中で無視しちゃった気がする……」
「何やってるんですか!こんな可愛い後輩からのメッセージなんですよ⁉︎にゃんにゃん鳴く猫に構ってないで1秒でも早く既読つけて返信してくださいよ!」
「流石に無理あるわ!」
・おー、ゲーム配信!
・何やるの?◯ぺとか?
・最近話題のバナナゲームじゃね?
・あー、あのフルーツをどんどん大きくしてやつか
・あれ?ジンくん?
・なんで知らないんだよwww
・にゃんにゃん言う猫www
・ポンにゃ
・チーにゃ
・ロンにゃ
・草にゃ
・うーん、模範的な束縛系彼女の図
・メアちゃん絶対重いタイプじゃんw
雪は”重い”という単語に反応してピクリと振動したが、流石に進まないと思ったのかスルーして説明を続ける。
「こほん、今日やるゲームはですね……Gartick Ph◯ne です!」
「おー、あのお絵描き伝言ゲームのやつか」
「そうです!これなら私達が一緒にできて視聴者も参加できます!良いアイデアでしょう?」
自信満々に胸を張る雪。まぁ、はる胸はないのだけれど。
「……なんか失礼なこと考えてません?」
「まさか、俺は良いと思うぞ、小さくても」
「……うるさいですね、喧嘩売ってます?買いますよ?」
・なるほどGartick Ph◯neか
・ちょっと今からダウンロードしてくるわ
・そろそろ見せてやるか、美術1の俺の実力ってやつを
・足手纏いは帰ってもろて
・誇らしげなメアちゃん可愛い
・会話だけでジンくんが何を考えてるのか手を取るようにわかってしまう
・なるほど、ジンくんは貧乳派と……メモメモ
「とりあえずやっていくか。……あ、でもお前は何でやるの?」
「そこは大丈夫です、私今日ノーパソと液タブ持ってきたんですよ」
なるほどな、それなら大丈夫かな。
俺がその言葉を聞いて納得していると、雪は俺の隣に座ったまま目の前の机の上にそれらを置いて準備をし始めた。
「え?」
「え?」
数秒間の沈黙。
「いやいやいや、Gartick Ph◯neやるなら離れなきゃいけないだろ」
現在、俺と雪は肩が触れ合うくらいの距離に座っている。こんな距離でやったらお題が見えまくりだろう。
俺はゲーミングPCだから必然的に離れられないので雪が離れることになるのだが……、なぜか雪は当然のように俺の隣に座ったままである。
「……そんなに先輩は私と離れたいんですか?」
「べ、別にそういうわけじゃないけど……」
珍しく少し落ち込んでる雪のそんないつもと違う表情に俺は思わず否定を返してしまう。
......何だこいつかわいいかよ。
俺は雪にもそういう部分の可愛いところあるのか、と感慨深く思っていたのだが……、次の瞬間雪の顔は悪魔のような笑みに豹変した。
……やべっ、騙された!
「ほう?先輩は私とくっ付きたいと。それはそれは、まぁ、私は可愛いですしそういう気持ちになるのも分かります。先輩がどうしてもって言うならいくらでもくっ付いてあげますよ?」
いきなり元気になり、ここぞとばかりに言葉攻めにしてくる雪。
「別にくっつきたいなんて言ってないんだけどな?」
雪は俺の言葉を無視して、俺の腕に腕を絡ませて体を押し当ててくる。
別にくっ付きたいなんて言ってないって言っただろ!
「ほらほら、しょうがないですね先輩、どうですか私の感触は?柔らかいですか?良い匂いしますか?正直になっちゃって良いんですよー?」
悪魔のような笑みで俺の顔を愉快そうに見てくる雪。これでちゃんと可愛く見えるのだからそこの部分は流石である。
ていうかこれ、なんか変な気分になってくるんだけど!確かになんか肌柔らかいし、良い匂いもする。しかも本人も意図してないだろうが微かに胸も当たってやがる……!
俺はなんとか理性を抑えつつ手を振り払おうとするがビクともしない。
うせやん。男で年上の俺が後輩女子に力で負けるとはどういうことやねん。そういえば愛してるゲームでハグされた時も引き剥がせなかったような……。
……もしかて俺は非力なのか?
……………。
……こうなってはしょうがない。アレを使うか。
俺はそう決断し、掴まれてないもう一つの手を雪の顔目掛けて伸ばした。雪は俺の手を受け入れるように少し恥ずかしそうに目を瞑る。そんな雪に俺は指先を軽く曲げて—————
「あだっ」
額にデコピンを喰らわせた。
「何するんですか先輩!こんな可愛い乙女の顔に向かって!」
少し涙目になりながら文句を言ってくる雪。文句を言いたいのはこっちなのだが……。
「うるせぇ、ささっとやるぞ。離れやがれ」
「先輩照れ隠し————」
「よし、みんな今日は見てくれてありが——」
「分かりました!分かりましたから!離れます!離れれば良いんでしょう?まったく!」
雪は頰を膨らませながら渋々といった感じで椅子から立ち上がった。
最初からそうしときゃぁ良かったんだ。
・メアちゃん、ちゃんと持って来れてえらい
・当然のようにジンくんの隣と
・ジンくん大困惑で草
・いや、移動しないと答え見えるやろw
・あっ、ジンくんそれは……
・ジンくん騙されてて草
・演技派メアちゃん
・メアちゃんニッコニコでかわええ
・くっ付きたい!
・変態ニキは帰ってもろて
・あっ、メアちゃんが抱きついた!
・てぇてぇ
・くっ、うらやましい……!
・そこ変わってくれジンくん
・金ならいくらでも払う
・でもお前らだと抱き付かれないぞ?
・いやっ、ワンチャン……
・ないです
・くっ、お前は仲間だと思ってたのに……!
・一方的な思い込みで草
・拗ねてるメアちゃんかわいすぎ
しかし……、はぁ、何とか乗り切ったか。次からは発言には気をつけるようにしよう。そうだ、雪の前でそういうところを見せてはいけない!どうやっても揶揄いのタネになってしまう。
俺はそう反省しながら、ふと隣の雪を見た。
顔は下からではよく見えなかったが、真っ黒な艶やかな髪の間から耳が見えた時あることに気づく。
そして俺はそんな様子の雪の姿を眺めながら思う。
あいつもちゃんと恥ずかしかったんだな、と。
耳を真っ赤にした雪は俺に顔を見せないようそそくさと部屋の反対の机に移動していく。
不覚にも真面目に可愛いと思ってしまった今日この頃であった。
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お知らせというか報告ですが、15話の最終場面を少し書き直しました!展開や結末としては変わらず、ただ文を変えたので物語等には全く影響はありません!
これからも『後輩とVtuberやったら何故かカップルチャンネルとして人気が出てしまった』をよろしくお願いします。
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