第13話 愛してるゲーム〜きれいな百合は存在しない〜

「んじゃ、時間的に丁度良いし次で最後にするか。」


 あれからかなりの数のマシュマロを返して配信の終わりの時間が近くなってきた。


 もう大変だった。全部カップルに関することだし、何個かまともなやつはあったが、ネタになりにくかったし。


 さて、そんなコラボ配信もそろそろ終わりを迎えるのだが―――


「そうだね~。じゃあ次の質問は……。」


 奏が俺の言葉にそう返すと物凄く楽しそうな顔で最後のマシュマロを選び始める。


 もう嫌な予感しかしない。


「決めた!じゃあ最後のマシュマロはこれにしよう。」


 俺がそんなことを考えている間に奏は決め終わったようで配信画面に映し出そうとしている。……マジで洒落にならないのだけはやめてくれよ?


[三人で愛してるゲームしてください!]


 …………。


「……なぁ、これ、お前もやるんだぞ?」

「そうですよ。それにこの書き方だと私達もやれ、ってことですよ?正気ですか?」


 マシュマロの内容を 思わず二度見してしまった俺と雪は奏に確認する。いや、奏が最後に選んだものとしてはわりと普通だとは思うが……自分がやることに躊躇いがないのだろうか。


 まぁ、俺はもちろんやりたくないが。


「ん?わかってるよ。それに視聴者からの要望には応えないと。あ、そっか。もしかして恥ずかしいの〜?」


 あっけらかんと、そして口角を吊り上げながら俺たちの質問に答える奏。


 というか絶対そんなこと考えてないだろ。自分がやりたくて選んだよな?……ちっ、ミスったな。あいつに選ばせたのが間違いだった。


 とにかく今はやらない方法を考えないと……。


「あー、すまん。今ペットのマンドラゴラの叫び声で近隣住民から苦情来てるから配信終わるわ。」

「ジン、マンドラゴラどころかペットすらいないでしょ。」

「すいません、うちのマンドラゴラも走り回ったみたいで……」

「メアもペットいないでしょ!というかなんで2人ともマンドラゴラ?流行ってるの?」

「え?流行ってるわけないじゃん。そもそもそんなもんいないし。」

「ええ、そうですよ。馬鹿なんですか?」

「うん、一回殴って良い?」


 俺たちの当然の答えに拳を握りながら満面の笑顔でこちらを見てくる奏。しかし、その笑顔の後ろにとてつもない殺意を感じる。


 ・もう最後か

 ・最後何になるかな?

 ・ナコたんがめっちゃ楽しそうに笑っているんだが

 ・俺にはわかる。絶対なんかやばいやつが来る

 ・愛してるゲームw

 ・思ってたより普通だった

 ・普通か?

 ・うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ

 ・ただ自分がやりたいだけだろ

 ・よし!

 ・マンドラゴラw

 ・伝説上の植物じゃねぇか

 ・言い訳が見苦しすぎるw

 ・本当にマンドラゴラなら苦情が来る前に死んでるんだよな〜

 ・メアちゃんもマンドラゴラ飼ってるのかよw

 ・伝説上の植物流行ってるは草

 ・ナコたんかわいそす


「はぁ、じゃあやるならとっとと終わらせるか。んで、誰からやるんだ?」


 こんなことをしてても時間稼ぎにしかならないとが分かってしまった俺は奏に変わって配信を進める。奏はまだ何か言いたげな表情をしていたが俺たち2人は揃って無視を決め込む。自分勝手?知らんな!


 結局、順番はじゃんけんで決めることになり、雪VS奏、奏VS俺、雪VS俺の順になった。


「はぁ、何であなたとやらなきゃいけないんですか……。」

「それはこっちのセリフ。私とジンだけで良いのに……。」


 そんな文句を言い合う2人。奏は自分自身が始めているというのに……。


「じゃあ、私から始めますか。愛しています。」

「うん、私も。愛してる。」


 何の躊躇いもなく、無表情で言う雪。そして同じく淡々と返す奏。どちらも感情が籠っているわけではなく、ただただ機械的に返している。もちろん百合展開があるわけではない。


 俺視点から見れば無表情で告白しあっているというシュールな絵面で面白いんだが……、これ、一生勝負つかなくないか?


 まず、同性同士でやるのが間違いな気がするのだが……。俺だって男の娘ならまだしも彼方に言われても気持ち悪く思うし。 


 あっ、だけどハリウッドな師匠とかに言われたら赤面するかもな〜、笑いすぎで。


 俺が例の芸人が「愛してる」と言っている映像を思い浮かべ、心の中で笑っていると、ついに雪の我慢の限界がやってきた。……早かったな。


「あ〜〜〜〜!もうやってられますか、こんなの!貴女なんて大っ嫌いですよ‼︎」

「ふ~ん、じゃあ私の勝ちね。約束通りジンとの 1日デートの権利はもらうからね~。」

「おい待て!俺はそんなこと聞いてないぞ!」

「そもそもそんな約束してないですよ‼︎早く先輩から離れてください!」


 勝利宣言と共に腕に抱きついて来た奏を無理矢理引き離す雪。……別に胸の感触が無くなって残念とかは思ってないよ?


 ・メアちゃんとナコたんもやるんだ

 ・2人ともめっちゃ嫌そう

 ・自分で選んで自分で嫌がってるの草

 ・全然感情こもってなくて草

 ・これ絶対勝負つかんやろ

 ・これ何の意味があるの?

 ・なんか思ってたのと違うんだが

 ・果たしてこのやりとりに意味はあるのか

 ・ジンくんめっちゃ笑っててかわいい

 ・本人の知らない場所で約束されてて草

 ・嘘なんかいw


 こうして愛してるゲームの一回戦目は終わった。どちらかと言えば愛してるゲームより我慢比べの方が正しい気がするが……。


 まぁ、俺も面白かったしリスナーも楽しめたのだから良いとしよう。


 俺はそんなことを思いながら次の自分の番に向けて覚悟を決めていくのであった。


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 投稿が前回より遅くなると言ったな。あれは嘘だ。……勉強のやる気が出なかったのだ。


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