第11話 コラボ配信スタート‼︎~疑問形の否定は信じられない~

「センパ〜イ、お腹空きました。なんかご飯作ってくださーい。」


 ソファーでゴロゴロしながらそんなことを言ってくる雪。そしてもう1人、


「あ、オムライスが良い!あと私のにはハート書いといてね。雪のは何もなし良いから。」


 同じく別のソファーでゴロゴロしながらスマホをいじっている奏。


「ちょっと待ってください!なんで貴女だけなんですか!先輩、私のだけに書いといてください‼︎」

「いや、二人とも書かねぇよ!というか、それより一つ質問良いか?」

「良いですよ?なんですか?」

「じゃあ聞くが……、なんでお前らここにいるんだ?」


 雪はそんな俺の疑問に対して不思議そうな顔をしながら答える。


「なんでって、それは今日がコラボ配信の日だからに決まってるじゃないですか。」


 当たり前のようにそんなことを言う雪。奏の方も同じ理由のようで、スマホから目を外さずコクコクと頷いている。


 もしかしなくとも仲良いな?お前ら。


 そんなことより———


「そうだな。確かに日にちは合っているな?だけどな、配信予定時間って夜の8時だったよな?そして、集合時間は7時だったよな?」

「はい、そうですね。」

「今何時だ?」

「11時半ですね。」

「お前ら何時からいた?」

「9時ですね。」

「私は10時〜。」

「おかしいだろ!早すぎるって、お前ら!俺のこと少しは配慮しろよ!というか、昼飯作れって図々しすぎだろ!」


 そう、こいつら配信予定時間は夜なはずなのに朝から俺の家に入り浸っているのだ。せめてアポは取って欲しい。俺なんか雪の鳴らしたインターホンで起きたのだから。


「良いじゃないですか。朝からかわいい後輩の顔が見れるんですよ?」


 あざとい笑みを浮かべながら顔を覗き込んでくる雪。


「うるせぇ!昼飯作らんぞ⁉︎」

「じゃあ,作ってくれないんですか?」

「……まぁ、作るけど。」


 流石に作らないわけじゃないが……!


「ふふっ、私、先輩のそういうところ好きですよ。」

「うるせぇ。」


 と、俺たちがそんなやり取りをしているといつの間にかスマホから目を外した奏がこちらを睨んでいた。


「はいはいはーい。ワタシの前でイチャイチャするのは禁止だよ〜。もぅ、油断の隙もない。」


「「イチャイチャしてない!」」


「私までイチャつくための道具にするのやめてくれない?」


 ジト目で見てくる奏。……別にイチャついてないんだけど。しかし、そんな心の中の抗議は届くはずもなく、


「……オムライス作ってくるわ。」


 気まずくなった俺はキッチンへ向かう。雪は奏にガミガミと文句を言っている様子だが、奏は聞く耳を持たず、スマホを構っている。仲が良いのか悪いのか分からないやつらだな……。


 俺はそんなことを思いながら卵を破り、オムライスを作り始めるのだった。


 もちろん2人ともハートはなしである。


 ★★★

「ナコ民とメアンデルタールジンのみんな〜、こんナコ〜。ブイファン4期生の白鳥ナコミだよ〜。」


 そんな声が部屋に響き渡る。現在時刻はちょうど8時。コラボ配信のスタート時間だ。


「さて、今日は皆知っての通りオフコラボだよ。早速登場してもらおう!」


 俺は奏のそんな声に合わせて喋り始める。


「えー、2回目の配信がまさかのコラボ。しかもオフということに困惑しているジン・ノービルです。……展開早すぎやしねぇか?」

「気にしたら負けだよ。そんなこといちいち気にしてたらキリがないし。それに実際ジンたち変なことでバズってたしょ?」

「……それもそうだな。」


 ……確かに。そう言われたらそうだわ。


「はい、それじゃあ始めよ————」

「ちゃんと私の紹介もしてくださいよ‼︎」


 そのまま始めようとする奏に待ったをかけるスルーされた雪。なんと見慣れた光景だろう。


「はい、ということでこちら自称ジンの彼女のメア・ホワイト。はぁ、なんでメアがいるんだか。」

「それはこっちのセリフですよ!あなたは通話で十分じゃないですか‼︎というか、自称じゃなくて他称ですー‼︎」


 もう駄目だ。これ。……なんかもうツッコむ気力も失せてきた。


 ・こんナコ〜

 ・ついに来た!

 ・きちゃー!

 ・確かにw

 ・順序絶対おかしいw

 ・変なこと?……気のせいだよ

 ・スルーしていくと

 ・ジンくんめっちゃ遠い目してそうw

 ・自称w

 ・草


「はぁぁ、そんなこと言って家でバズってる様子を見ながらニヤニヤしてるんでしょ?」

「……してませんよ?」

「あれ〜?変な間があったけど、本当に?」

「ほ、本当ですよ。」


 俺と奏から目をそらす雪。……わざとらし過ぎだろ。


「ふーん、まぁいいや。興味無いし。」

「はぁ⁉︎貴女からこの話題振ってきたんでしょう⁉︎」


 雪のそんな様子をバッサリと切り捨てる奏。酷すぎる……。というか雪、そんなことしてないよな……?流石にネタ……、だよな……?


「そんなこと言ってないで取り敢えず進めようよ。」

「貴女だけには絶対言われたく無いですよ!」


 せっかく進めようとしているところに茶々を入れる雪。


 これ、流石に言わないと一生続くぞ。そう思った俺は二人に進めることを促す。


「おい、マジで進まねぇからさっさとやるぞ。」


 俺の言葉に反応し、2人とも流石に長すぎた、と思ったのか進め始める。……最初からこうしてくれれば良いものを。


「少し長すぎたね~。それじゃあ、早速マシュマロを出していこう!」


 奏がそう言うと画面にマシュマロが表示される。


 やっとか……。ホントに大丈夫なのか、このコラボ。幸い土曜日だから少しくらいなら延長はできるが……。


 俺はそんな不安を抱きながらマシュマロ返信に移るのだった。



–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––-––––––––––––––––––––––––

面白いと思って頂けたら応援、フォロー、コメント、★お願いします。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る