第9話 コラボ決定〜事前に許可はとっておこう〜
俺は朝、プルプルプルッという、スマホの電子音で目覚める。スマホの画面には天音雪の名前が。
あいつ、こんな朝早くに何の用だよ。俺はスマホの画面をタップし、電話に出る。
「こんな朝早くになんの用だ。」
『全然朝早くないですよ。何時だと思ってるんですか今。今日学校あること忘れてません?始業式の日から遅刻する気ですか?』
スマホをスライドさせて時間を確認すると、現在時刻は丁度8時を示している。
うちの高校の登校時刻は8時20分までなので、確かに遅刻しそうだが、今日はクラス分けの紙が張られるので、多少遅れたところで問題ないだろう。
そう思いながら俺は準備を始める。もちろん通話は繋いだままだ。
「んで、どうしたんだよ。」
「あ、それはですね。先輩、私たちのチャンネルの登録者数見ましたか?」
「いや、見てないけど……」
確か昨夜寝る前に見た時は3500人くらいだった気がする。俺は、パンを食べながら、スマホを操作し、自分のチャンネルを確認する。
「んっ!ごほっごほっ。登録者1.2万人⁉︎」
昨日の3倍以上じゃねぇか!一晩で何があったんだよ⁉︎
「どうやら、昨日の配信がかなりバズったみたいで、登録者が急激に増えたんですよ!」
バズった?確かに評判は良かったが、バズるほどだっただろうか?というか、どこにバズる要素があったのか教えてほしいくらいだ。
「もしかしたらクラスメイトの中にも視聴者がいるかもしれませんね?先輩、ダメですよ?いくら可愛い後輩とやってるからって周りに言いふらしたりしたら。」
「するわけないだろ。なんでわざわざ言うんだよ。んなことしたら嫉妬の目線だけで死ねるわ。……でも、教えてくれてありがとな。んじゃ、俺はそろそろ時間やばいから切るわ。」
「先輩が…素直にお礼を言った……⁉︎まさか先輩、偽物ですね!」
「偽物じゃないし、俺だってお礼ぐらい言えるわ!それよりも時間無いって言ってんだろ!もう切るぞ。」
俺はそれだけ言って電話を切り、制服に着替え、家を出る。今は8時15分。家から学校まで10分くらいなので、20分には間に合わないが、5分くらいだったら別に問題ない。
そう思いながら俺は急いで学校へ向かうのだった。
★★★
「はぁはぁ、危なかった。」
俺は教室に入って息を整え、指定の席に着く。遅れるところだった。……いや、まぁ遅れているのだが、そういうことじゃなくて……。
「ははっ、ギリギリだったな。大丈夫か?初日からそんな調子で。」
そんなことを言うのは俺の前の席の住民、
「うるせぇ、どうせお前もそんな変わらないんだろ?」
「くっ、なぜバレた!」
「お前はいつも遅いからだよ」
そんなことを話しつつ教室を見渡す。
知り合いは数人ぐらいか。あ、奏もいるな。あいつも同じクラスのようだ。
でも、あれ?人数少なくないか?
「なぁ、なんか少なくないか?特に男子が。」
「あぁ、一年生の教室に行ったよ。なんでもすごくかわいい新入生が入ったとかで。」
すごくかわいい新入生?それってまさか……。
「なぁ、それってもしかして天音雪か?」
「知ってたのか。そういや、お前の中学って名東区の方だったもんな。天音さんもそっちの方みたいだしもしかして中学一緒だったのか?」
「あぁ,そうだよ。面識は無いがな。」
バリバリの嘘である。しかし本当のことを言うわけにはいかないだろうし、言ってもメリットがあるわけでもない。
「逆に面識があったら驚愕ものだよ。お前と天音さんは明らかに別世界の人間って感じがするし。」
残念ながらそんな別世界の人間たちはガッツリ面識がある。なんか、的外れなことを言うこいつがすごく滑稽に見えてきた。
「陰キャで悪かったな。」
「別に悪いとは言ってないだろう?」
「陰キャなのは否定しないのか」
「だって事実だろ?」
にしし、と笑う彼方にムカついたが事実なので何も言い返せない。
俺たちがそんな会話をしていると丁度教師が入ってくる。いつの間にか男子生徒の大半も戻ってきているが、その中には息が切れている者も多くいる。どうやら教師を見つけて、急いで帰ってきたみたいだ。
しっかし、あいつも大変だね〜。うちのクラスだけでこれだけの人が行っていたんだから、全学年合わせると相当だろう。
俺はあくまで他人事に考えながら、教師の話に耳を傾けるのであった。
★★★
学校が終わり家でごろごろしていると見慣れた後輩が制服姿で俺の家に来ていた。
「どういうことですか先輩!」
俺の家に押しかけてきては、いきなり文句を言ってくる雪。ちなみに今は11時15分、学校は始業式のため11時に終わっている。つまり、こいつは学校が終わってからそのままうちへ来たということだ。一歩間違えたら学校中大騒ぎである。
「どうしたんだ?そんな怒って」
「なんであの女とコラボすることになってるんですか‼︎」
「はぁ?なんだそれ?そんなの俺が聞きたいんだが?」
「え?違うんですか?」
「逆になんでそんなことになってんだよ。」
「いや、だって、ほら」
そう言うと雪がスマホを見してくる。どうやら奏とのやりとりのようだ。
奏:雪。コラボすることになったからよろしく。明後日の20時からだから。あ、オフコラボね。
雪:はぁ⁉︎ちょっと待ってください!なんでそんなことになってるんですか!ちゃんと私の許可とってくださいよ‼︎というか、コラボなんてしませんよ‼︎
奏:あ、御影の家集合ね
雪:人の話を聞いてください‼︎やらないって言っているでしょう‼︎
奏:うーん、でも御影はやりたいって言ってたよ?あ、あともう告知出しちゃったし。
雪:え?先輩許可出したんですか?
……って、そんなことより人に許可取る前に勝手に告知出さないでください‼︎
奏:それじゃあ、よろしくね〜
雪:だ・か・ら!人の話を聞けって言っているでしょう‼︎
うわー、いい感じにあいつのマイペースさに振り回されてるなー。
「で、こう言ってますが、先輩どうなんですか?許可したんですか?」
ドスの効いた声で聞いてくる雪。
「ま、まぁ,いつかコラボしたいなー、的な事は話の流れで言った気が……しなくも、ないが……。」
「何やってるんですか、先輩!まったく、というか、相手の許可なしにコラボ告知するとかどういう頭してるんですかあの女!」
「それはお前もだ!お前も勝手に俺のイラスト頼んでただろ!」
「……私そんなこと知りません。」
気まずそうに目を逸らす雪。俺はそんな様子を見ながら、雪と奏にはちゃんと事前に言うように、言い聞かせておこうと思うのだった。
ちなみに、あとで奏に聞いたところ、告知の件は嘘だったらしい。いわく、「流石に相手の許可を取らずにそんなことする人なんていない!」とのこと。その話を聞いた雪は大変気まずそうな顔をしていたとさ。
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