第4話  保護猫?

「ペットも要らない!、雄は要らない!。」

 随分昔にそう言った、そう俺が言った。

 俺が言った言葉で間違い無い…。


 アパート住まい、ペット禁止、発覚次第即退去、入居時に取り決められた契約内容。


 大家が大のペット嫌い、当人は飼って居るから良く言えるなと思ったが、如何も店子とトラブルで大きな損害を被った様だ、其れだから本人は自宅だから飼って居る、しょうがない…。


 大家がペット嫌いと書いては仕舞ったが、とても良い方で無下に嫌ってらっしゃる訳じゃ無い、朝夕の散歩は勿論空中に貼られた架線、其れと繋がれたとても長いリード、ソコソコ広い庭をお持ちで其の隅々迄行けるギリギリの長さ、自由に駆け回れる長さ、でも門からは決して出れぬ長さ、勿論外に出て人様に迷惑掛けぬ様、そして迷子に為って仕舞わぬ様に…。


 何故そんな事が判るのか?、或る理由で職場を去って次に勤めた会社、インフラを扱う為各家庭に伺う、其の中でもお得意様の一軒が大家さんの御宅、アパートを幾つかお持ちで其処の作業もさせて頂いて居た、今は同じ職種だが其処とは遠く離れた場所に居る。


「鳴けない、自由に駆け回れない、其れではペットが可哀相でしょ?」

 黒くて可愛い少し小さい元気な犬、今はミックスと言う様だが雑種に為る黒い柴犬を飼って居られた、ペット禁止にした理由は先述の事も有り、約束を守れぬ人間が嫌いと申されて居た…。


 大分話が逸れて仕舞った、じゃあ俺が何で最初にそんな事を書いたのか?。


 其の日は秋晴れの良い天気だったのだが、夕方から雷雨に為り落雷が守備範囲内で多発、其れで通常の勤務時間を越えても対応に追われた、最新鋭の水素を使う機械から一般の御宅やアパート、マンションに至る迄皆さんの生活に無くては為らぬ物が止まって仕舞う、修理に駆け回る事と成り帰宅は深夜に近かった、普通なら自宅の明かりは消えて居る、なのに灯は点いていた。


 不思議に思いつつ玄関を開ける、其処に不思議な物が動き回っていた、白いフワフワな小さな毛玉が走り回っていた…、ペットは要らないと言って居たのに…。


 グローブだと揶揄される俺の手、其の片手に余る程の毛玉が居た、賺さず聞いてしまった。

「ペットは要らないと言っただろうが?」

「だって、目が合ったし、可愛いし、連れて帰ってと言われたの!」


 人間モドキを筆頭に、仔猫モドキ三匹の回答…、アレ一匹増えていると思われた?、一番上の仔猫モドキが未だ生活を共にしていた頃の話です、ちゃんと独立して一人暮らしして居ます。


 全員一致した回答、拒否できる立場に居ない俺に反論は許されぬ…。


「其れは何だ?、どっちだ?」

「ウサギだよ、散歩も要らないし、鳴かないし、何よりこんなに可愛いの!」

「其れは十分解ってる、だからどっちなんだ?」

「男の子だよ!」

「オスは要らない、駄目だと言っただろう!」


 此処で人間モドキが口を挟む。

「こんなに可愛い子を何で邪険にするの!、良いでしょこんなに可愛い子、皆に直ぐに懐いてるし、トイレももう覚えてる、飼うと決めたの!」


 拒否権は発動出来なかった、其れを許される状況で無かった…。


 でもコイツホントにウサギか?、ウサギのイメージは耳が長く、白色ならばアルビノで色素が抜けて目も赤いそんなイメージが有った、コイツは黒い目、ライオン何たらのミックスらしくミニウサギとして売られていた様だ、ネザーランド何たら見たいに高級種では無い様だ。


 此処から5キロほど離れたホームセンターで売られて居て、勿論仕事をしている仔猫モドキが、バスが無く乗り継ぎが悪い為往復4キロ程を歩いて購入して来た様だ…、帰り道の最期の方で雨の中を濡れぬ様に庇いながら帰って来たらしい、我が身が濡れるのを構わずに…。


 どんな個体か書いて置くと、トイレットペーパーのお尻セ〇ブのパッケージに写って居る物、モデルチェンジして今は違う個体に為って居るが、同じブランドの鼻〇レブのパッケージの顔。


 兎に角耳が短い、来た頃は仔猫程の長さしかない、成長しても普通のウサギの半分しかない、然も顔が短く丸っこい顔、愛玩用と言った方が良いのか、可愛い顔してる、人受けする様に交配させられた物、そう本来の姿とは違って居る…、そう産まれ付き体に負担を抱えてる筈…。


 すくすく成長はしたが、一回り位は普通のウサギより小さい、ネザーランド何たらの血が混じって居る証拠だ、成長しても丸っこい鼻、顎はやはり普通のウサギよりも短い…。


 短い鼻、其れは顎に無理が生じる、二年経たぬ頃二週間に一度の通院が必要に為って居た、普通の動物病院でも見ては呉れたが、専門と言う訳では無いから如何も要領が悪い様だ。


 其の内ネットで、其れに特化した動物病院が有る事が判った、普通は気付かぬ所に可愛いい病院、自宅の一部を病院にした小さな病院、ウサギと小動物の専門病院が何時も買い物に行っていた郊外の大きめのスーパーの後ろにひっそりと建って居る、如何にも手作りの小さな看板が目印、見落として仕舞う位の看板、可愛い女医さん一人でもう一方が手伝って居られる、譲り合わないとお互いが行き来出来ぬ位可愛い診察室兼治療室、唯、腕は専門医と言うだけ有って確かな方、遠方は片道数時間、一日潰れて仕舞う程時間をかけて北陸等から通われる方も居る様だ。


 また話が逸れて仕舞った、遺憾な如何も俺は…。


 家は全く持って付いて居た、僅か片道6キロ程、然も買い物で向かう所に在り、通院が苦に為らぬ、<明けましておめでとう御座います>、三回程其の挨拶をしただろうか、縁逢って仔猫モドキも職種は違うが、同じインフラの仕事をして居た、秋口には必ず大きな商談会イベントが有る。


 その少し前、残暑が厳しい頃から体調はかなり悪かった、先生も言って呉れた。

「此の躰で此処迄一所懸命に生きて来たんですから誉めてやって下さい…。」と。

 体調がかなり悪く全く元気が無い、其の旨を伝えるも…。

「ひなた君は、もっと早くに寿命を迎えてもおかしく無かったんです、でも五年も頑張って生きて呉れたんです誉めてやって下さい、大好きだったお姉ちゃん達と一緒に居てあげて下さい。」


 一日中人間モドキが診て上げて、夜間は連れて来た仔猫モドキと其の妹の仔猫モドキが診て上げた、秋の商談会イベント最終日が終わり全員が自宅に揃っていた、苦しそうに息をして居たが、深夜に息が楽になり苦し気な顔も穏やかに為って居た頃、皆が顔を揃えて居るのを確認する様に目を開けた、笑った気がした其れは見守る全員を確認したのだろう。


 ウサギは鳴かないと良く言うが…。

「キー!」

 と短く鳴き声が上がった…。

 最期のお別れの言葉を告げて、静かに目を閉じた。


「僕、皆がが揃うこの日まで頑張ったよ、だからもう良いよね?、僕もう頑張らなくても、もう痛いのも、苦しいのも我慢しなくて良いよね?」


 笑った様に見えた、其の顔はそう伝えていた…。


 眼を閉じた顔は笑って居る様に見えた、変な奴だった、ウサギなのに?、本当にウサギかお前は?、朝は出て行く時間が皆違う、特に俺には威嚇する、ウサギの怒り其れは後ろ足で床を蹴り音を発てる事、俺は会社まで通勤は車だが、一番上の仔猫モドキは電車で一駅先だ、通勤に駅前を通過する俺が仔猫モドキを駅前で落として行く、だから俺が嫌われる一番懐いて居る奴を朝俺が連れて行くから…、そして嫌いな病院迄行くのも俺、好かれる要素が見つからないからな…。


 ウサギなら喰う筈の、キャベツ、ニンジンを食べない、固形の餌以外は先ず食べない。


 唯、摩り下ろしたニンジンだけは食べていた、真っ白な躰で黒い眼をして居るのに、其の摩り下ろしたニンジンを食べる時、鼻の頭は赤とオレンジの中間色の染まっていた、其れを見た者達に笑われるのだが、皆が笑って居る事が嬉しいらしく、皆の周りを駆け回るそして、一番お気に入りの仔猫モドキの膝の上に…。


「愛玩用に無理な交配をするんです、だから本来の顎の長さが無いんですよ、だから体に大きな負担が掛かるんです、定期的に通院が必要に為ります、だから私も全力で診ます、一日でも長く大好きなご家族と居れる様に頑張りますから。」

 そう、通院初日に先生に伝えられた、唯。


「ホントにハンサムなのに、可愛いお顔ですね!」と先生も、お手伝いされてる看護師さん?、動物病院でもそう言うのだろうか?、其の方の入れ替わりで手伝われるお母様も、皆に可愛がられる奴だった、普通のウサギの半分しか生きられず旅立って行った…。


 家系なのか因果なのかは俺が向こうに行く迄は解らないが、先述の<ヤマト>、そして此の<ひなた>、何れ書く事に為るだろう、別の個体の事、そして若くして旅立った方、其方は書いて居る別の作品で書く事に為るだろう、そう家の家系では何故か男性が短命である、因果なのか?、其れ以外の要因か?、何時か判る日が来るのだろうか?。


 俺が此処に今生きて居るのが解らない、何故だろうか?、だから此の家に男と言う性別に在る者を入れたくない、大往生と言われる天寿を全うする事が出来れば良いのだが、どうも其れは叶わない様で在る様だから、今は自己所有扱いの建物、ペットを飼えない理由は無いのだが…。



 悲しい別れが多すぎた、ペットとは言え男性に属する者を入れたくはない、其れは短命に終わる事を意味している気がするから…。

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