第5話  地域猫 NO.?

 メインのご飯、一寸足りない時のお八つ、通って来る理由は色々だろう。


 特に仔猫産んだばかりの母猫、獲れる餌だけでは足りないと見える、母猫は痩せている、普通なら複数の子を育てて居る筈なのだが、お腹が大きい時に通って居て、お腹が小さく為っても通てる、一回り小さい其の個体に人間モドキが話しかけている…。


「赤ちゃん如何したの?」

「ニャ?」

「だから大丈夫なの?」

「ニャ!、ニャニャ!」

「そうなんだ。」

「ニー!」

「歩ける様に為ったら連れて来て。」

「ミーニャ!」

 そして食事を終えて帰って行く、そう人様の前では人の言葉で話しかける…。


「何て言ってるんだ?」

「連れて来るって言ってたよ?」

「そう…なんだ。」

 やはり会話が成り立って居る様だ、やはり人間モドキ!。


 今回は此の母猫の話じゃ無かったな、同じく一回り小さい個体の話、白黒で鉢割れの個体、俺が嫌がる個体の話、別に飯喰いに通って来るのも、モドキが庭?、駐車場だな、で遊んで上げようが構わない、姿形から多分<ヤマト>の兄弟だろうダブって見えて来る。


 生後四五ヶ月位にふらりと現れた、一寸小さくて良く生き延びて来たなと感心してた、少し前二か月過ぎた頃の仔猫三匹を連れた母猫と、此処へ何度かやって来た事が有った様だ。


 其の時から他の兄弟より発育が遅れていたらしい、だからモドキが勝手に<チビ>と呼んで居たらしい、庭でモドキは紫陽花を育てている、本来は鉢植えの開花状態で購入するのだが、一寸手が出ないような価格なのだ、花の時期も終わり半値以下の投げ売り処分価格だったり、数年経てば花が咲くそんな物を購入、数年がかり手入れをして咲くのを待って居る、だから文句も言えないが、嫌!、一つ有るこれ以上駐車場へ侵出しないで呉れ!。


 どうも駄目だ直ぐに脱線してしまう、猫の話しに戻そう、暫くして其の母猫が現れた時には其の〈チビ〉は居ない、他の二匹は連れて居たのに…。


「間引かれたのね…、チビは…、あのお母さんじゃあの仔無理だったんだね…。」 

 窓越しに餌を喰む三匹の親子を寂しそうに眺めて居たのを憶えている。


 何も言えなく為って居た、間引くと言う言葉をどんな気持ちで口にして居るのか、其の心中は如何考えても想像すら出来ないが…。


 何時もの様に遅い帰宅、帰ると掃き出し窓にモドキ三匹が集まって居る、<また新しい新入りでも来たのか?>そう思いモドキ達の上から覗き込む。


 駄目だったんだ、そう思って居た個体が其処に居た。

「生きてた!、生きてたんだよ!」

 満身の笑みで答えて居たのを今もでも、思い出せる。


 それからは、毎日日参して居る隙在らば保護猫の餌を喰って居る、地域猫確かに優しい響きだが、何の事は無い野良猫である、食器等を共用するのはリスクが高い、恐いのは猫エイズ、感染して居ないとは言い切れない、モドキも判っている様で其の仔猫が食べた後は其の食器を洗ってる、成猫と為っても一回り以上小さい、性別は雄、男の子か…。


 喧嘩を自分から仕掛けはし無い様だが、小さいから追われる、そして怪我をする、二度程病院へ連れても行った、飼い猫に出来るかとモドキが何度も挑戦したが生粋の野良、隙あらば出ようとする、そして腹を空かせても餌の場所に近付かない…。


 愈々腹を空かせて戻って来る、痩せた体で喰いに来る、他の個体が居る内は餌場に近寄れず、満足して帰って行った後にやって来る、勿論粗方喰われて残っちゃい無い、モドキがそっとその個体に餌を上げる、当家在住の保護猫が食べる分を、偶に部屋に上がり込み座布団の上に寝ている…。


「何で此処に寝てるんだ此奴?」

「多分表が恐いんだと思う、他の子に苛められるから。」

「じゃあ何で家に入れとかないんだ?」

「如何しても外に行きたがる、閉じ込めると近寄らなくてご飯を食べられないの。」

「ケージに居れて居てもダメなのか?」

「ストレスが溜まって、自傷行為始めるの、家の中に放して居ても同じなの…。」

「そうなのか…。」

 是が生粋の野良と言う事か…。


 多分人間以上に自由と言う事を理解して居るんだな、自由にしている事にはリスクが伴う、好き勝手と言う事では無い、他の猫に苛められる事、他の動物に追われる事も含めて、前にも書いたが、アナグマ、アライグマ、後狸も居る、何故解るか?、眼にしたくも無いが道路上で息絶えている、そう跳ねられて息絶えている、勿論猫もそうだ成猫、仔猫構わずに、一人で出歩く筈の無いサイズの仔猫迄、原因は判って居る母猫の後を追って渡るから…。


 保護猫NO.3、そうそんな獣に襲われるから、事実腹を空かせて夜に猫の餌を喰いに来ていた、其れで此の<チビ>は襲われた、だから病院に連れて行った、そんな怖い目に逢ってでも表の世界で生きる事を選んで居る、家の中に居れば安全で空腹に耐える事も無く、同種族、他の種族に襲われる事も無いのに、其れでも外の世界を求めている。


 リスクは充分判って居ると思う、自由の意味も、其れを知って居る筈なのに自由を求める、そう俺達人間以上に猫の方が自由の意味を知って居る、本当に小さい躰なのに。


 同族同士の喧嘩で追われて、怪我したのだろう、<チビ>は雄、そう書いた、可哀相なと言うか此れは俺達に男にしか判らんだろうが、今回の怪我は重かった、男なら絶対に嫌な筈、大事な処を怪我してたんだ、遅番で出勤前だったから仔猫モドキが、捕まえた<チビ>と人間モドキを車で病院に送り、人間モドキが手術し病院から連れ帰って来た。


 安全な筈、痛い筈、恐い筈、初日は良かった、二日目から自傷行為が始まる、暴れて手術した所も口を開く、再手術、其の侭病院で預かりもしその兆候が出たら、鎮静剤を投与するといわれて、唯、良かったのは動物病院だ、他の生き物の匂い、鳴き声で大人しくした様だ、再手術の際に耳に切り込みが入った、同じ男としては何とも言って上げられ無いが…。


 退院し家へ帰って来たがやはり駄目で、治った部分は良かったがまた例の行動をし始める、モドキが何度も話し掛ける、掛ける、掛ける。


「此処に居れば怖く無いよ?」

「お腹空かないよ?」

「夜も温かいよ?」


「・・・・・。」

「好きなだけ遊べるよ?」

「おもちゃも有るよ?」


「ニャ!」

 交渉は決裂した様だ、残念ながら…。


 怪我の治療はした、取り敢えず傷が開く事は無い、ケージの中、家の中、其れでも自傷行為が収まらない、眠くて寝てる時には大人しく座布団の上に居るのに、そんなに表が素晴らしいのか、俺には理解が出来ない、隙在らば入り込もうとする猫は幾らでも居るのに…。


 三日後に表の餌を準備して居る間に逃げ出して行った、やはり広い世界で生きて居たいんだろう、大変な筈なのに、男だからかな…。


 病院の検査で、猫エイズにかかって居る事も、長生きは出来ない事も聞いて居る、だから人間モドキは家に置いて置こうと必死だった、気を引いて、猫じゃらしを振り続け、寝て居ると撫で続けたのに、其れ以上の物が<チビ>の眼には映っているのだろう…。


 生きて行くのが大変なのは、猫の世界でも同じ事、嫌もっと過酷な筈、其れでも選ぶと言うのか、人間の方が直ぐに楽な方に流されるのに、自由の意味を猫の方が知ってるとはな…。


 今も餌を食べに時々通って来る、表でモドキの声もする…。

「ニャ、ニャ、グーグーニャ!」

「ミー!」

「グーグーニャ!」

「ニー、二ー!」

 此の声は間違いなさそうだ、体が小さく成猫に成っても子猫の様にしか鳴けないから…。


 まあ取り敢えず、元気にはして居る様だし、嫌われても無い様だ…。

 何故なら、花の手入れをする人間モドキの傍で、手入れしている間傍に居る様だ、苛める奴をモドキが怒り、叱るから、だから安心しているのだろうな…。


 長くない猫生を満喫して生きられる事を願うだけ、近況は写真が見付かり次第書かせて頂きます。

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