第45話 勇者の国 

魔族達は約束通り去っていった。


聖都はもう王城以外には人は居ないだろう。


僕ちゃんは門の前に立ち全員が引いていくのを見送った。



そして、ルシオラとユシーラ、ルビナスを伴って城へと向かう。


そして事の顛末を教皇であるローアンや各国の王に伝えた。


「馬鹿な430万人も殺されたのに..ただで返したのか?」


何処かの王が馬鹿な事を言い出した。


「それなら別に良いよ? もう僕ちゃんは手を出さないから、自分達で魔族と戦えば良いさ...折角戦いが終わったのに、戦いたいなら魔族に戦争仕掛ければ良いんじゃない? それじゃ」


「待って下さい..ソード様、何処に行くのですか?」


「いや、魔族と戦争したいみたいだから出て行こうと思って..どこか辺境で楽しく暮らすよ! それじゃね..」


「待って下さい..」


「ローアン..僕ちゃんが戦争を止めたのは迷惑だったみたいだね..次は止めないから頑張って殺し合えばいいさ..」


「待って下さい..貴様、お前は破門にする、何処の王だが知らないが顔も見たくないわ..これで、これで許して貰えませんか?」


「ローアン様、破門は」


「可哀想だから許してあげて、話を聞いてあげるから」


「解りました..勇者様に感謝するのだぞ」


「有難うございます、勇者様」



もう解ってしまった。


此処にいるのは、もう自由に文句等言えない人物なのだと。


見捨てられれば、即死につながる実力者なのだと。


「魔族側からは魔王の謝罪と何だかしらの償いが来る..それで終わりで良いんじゃないかな?」



「聖都が壊滅したのですぞ..それが謝罪と償いで終わりにしろ...そう勇者様は言うのですか?」


「そうだよ」



「ですが、それでは死んでいった者は浮かばれません」


「責任転換は良くないよ..市民は兎も角、騎士や戦える人は弱いから死んだだけでしょう? それだけだよ」



「幾ら何でもそれは言い過ぎです」



「同じでしょう? 命を懸けて戦って死んだ勇者を「弱い勇者」って貴方達は言っていただろう! 少なくとも今回死んだ人間より遙かに強くて、世界の為に死んだ人達をそう言ってたんだ..同じ扱いにしなければ可哀想でしょう」



言ってしまっていた、勇者側がその理屈を言い出せば...そういう扱いをしていたのだから当然だ。


「言っておりましたな..」



「ならば、弱いから死んだ、それだけで片すべきですよね」


「そうだ、死んでしまった人間より、セトの方が何万倍も強いし手柄も立てていたよね? 僕ちゃん実感したよ..そうだ、小さな国の王様にしてくれないかな?」



「幾ら何でも言いすぎです、死んだ者への敬意も払えないのですか、勇者だろうが!」



「敬意? 払う必要が何処にあるのかな? 僕ちゃん達勇者は今回戦った様な奴と戦い続けてきたんだ、なぁ..たった1回の経験なんてお試しみたいな物だよ...同じような事を僕ちゃん達は何十回も経験してきた..そんな仲間に酷い事したんだよ..お前らが反対すればやれなかったんじゃないのか?  何度でも言ってやる..たった1回経験しただけで偉そうな事いうな..今回起こった事が僕ちゃん達の日常だった..そんな事を黙認したお前らの部下に敬意なんて必要なのかな? 弱いからさせたんだろう? 弱いからだ..なら弱いから死んだ人間に敬意なんて要らないよな!」



「その通りです! 確かにセト殿は今回死んだ者や残っている者より強いのでしょう..解りました、この聖都の一部に自治区を作り国と認めましょう..それで如何ですかな!」



「流石、ローアン話が早いね..これで聖国ユーラシアはセトの同盟国だから何かあったらすぐに飛んでいくよ..あっそうか、僕ちゃん達がそこに住めば目と鼻の先だからもう此処には絶対に安全だね」



「そうですな、国の王は2人にしてソード様とセト様..国の名前は 勇者の国ソートとか良いかも知れません、勇者様達は忙しいから、優秀な代官も教会から派遣しましょう..聖都の城にような立派な城もつくらせましょうぞ」



「流石、ローアン教皇だ..ありがとう..」



「寧ろ小さくて申し訳ない位です..では国作りは私にお任せ下さい..同盟国と後ろ盾は聖国ユーラシアで良いですよね」


「良いよ、任せる」



「それでは、勇者様はお疲れでしょう..貴賓室を用意しましたから、奥方様とごゆるりとお休みください」


「ありがとうローアン..そうだ、落ち着いたら僕やセトの結婚式をお願いするよ」



「立ち会人は私がしよう、第二同盟国は帝国が勤める..宜しいかな?」


「帝王もありがとう」


「いえいえ、当然の事だ..勇者の宣言も私がやったんだからな」


「そうでしたね」


「さぁ..疲れたでしょうゆっくりお休みください」



「ああ、ありがとう」









「はぁ、貴方達は何も学習していないのですね..話が分かっていたのはルビス王だけですか!」



「本当に馬鹿だな」




「何を言っているのか解りません」




「良いですか? 勇者という物は世界の為に戦ってきた..それなのに死んでしまうと「弱い勇者」と馬鹿にしてきた。 それならば、たかが魔族との戦いに死んでしまう人間は、それ以下だから敬意なんて必要ない...そういう事でしょう?」



「だが、何人もの騎士や冒険者が死んだんだ」


「それを言うなら、何人もの勇者が死んでいる..しかも弱い勇者や聖女だからって、死に物狂いで戦っている仲間に、あんな事を強要していた..そんな扱いをしたんだから..弱い人間に敬意を払う必要は無い..それを当たり前の主張にしてしまったのは我々ですよ」



「だからって」



「貴方達は勘違いしている..430万人を殺す様な相手を一人で倒す..そんな人間にだれが文句いえるんですか? もう貴方の国には勇者達は行ってくれないかも知れませんね..それでいいならどうぞ..勿論、教会は貴方達の国の人は破門します」



「不敬を解って言う..魔王より怖い人間に逆らうな..そういう事なんだぜ」



「ええっ、そして神が選んだ勇者に文句を言うな..そういう事です」



ここでようやく意味が解った..つまりは勇者を怒らせるという事は魔王を怒らせるのと同じ事なのだと。



「それで、勇者の国ソートを建国するのに反対の者はおりますか?おりませんね」


誰も反対をする者は最早居なかった。



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