第46話 終わり

それから暫くして魔王から書状が届いた。


その中には僕ちゃんへの詫びとお礼も含まれていた。


「命を奪わなかった..それが功を奏したな」



「魔王から手紙を貰う勇者...考えられないわね」


「剣聖で、勇者で今度は国王、本当に忙しいね..」


「まぁ、セトも一緒に国王だけどね」



「うふふ..今度は王妃ですか..何が何だか解りません」


「あの、言葉に騙されちゃ駄目よ? 勇者の妻の方が遙かに地位は上なんだから」


「そうなのですね..はははそうです」



「これからは行儀とか大変かもね」


「そうなんですか」




結局、僕ちゃんが魔族を殺さず終わったから、魔族側が自分の非を認めて魔王が謝罪。


今回の戦の賠償について話し合いが行われた。


「勇者様なのですから話の中心になって下さい」


実質、魔族が怖くて仕方いからついて来て下さい..そういう事なのだと思う。



魔国との境界にテントを張って行われた。


先方は魔王がきていたので、誰も話さないから僕ちゃんが中心に本当に話す事になった。


まずは賠償だが..


お金という概念が魔族には無い。


結果、魔族には余り価値が無く人間に価値がある金や銀、宝石を貰う事と魔国の近くの森での採集権で話がついた。


まぁ魔族にとっては半分ガラクタ..人間にとって国宝級の物、丁度良いかも知れない。


これからは、魔族も人間も揉めたら話し合う...そういうルールが出来た。


最も、魔物は魔族では無いから防げないし見分けがつきにくい魔族もいる、人間にも盗賊が居るからそれまでの話だ、折り合いがつかなかったら争うのは仕方ないだろう。


そして三百年間、お互いの国境を越えて争わない、そう言う決まりが出来た。


境界があいまいな所は知らないが、そこでも話し合いがある、そう考えたらかなり安全だ。


これで、勇者と魔王が戦う事は僕ちゃんの代では無い。


三百年も僕ちゃん達は生きれない..だから、これで僕ちゃんの戦いはもう終わりだ。



そして、魔王を倒さないという事は聖剣の力も失われない..僕ちゃんには都合が良い。



今は沢山の死体の弔いと瓦礫の片付けがようやく始まった。


殆どの人間が死んでしまったから人を集めるのに随分手間取っているようだ。



小さいながら、僕ちゃんとセトの国が此処に出来る。


セトとメグは驚くだろう..何しろいきなり国王と王妃になるのだから..そして結婚式も待っているんだ..


勿論、教えてあげずにただ呼んだだけだ。




これが僕ちゃんが望んだ未来、勇者が魔王の抑制力になり、魔王が勇者の抑制力になる。


戦わない未来..


これが僕ちゃんが考えていた理想の未来..死の運命から完全にこれで抜けられた。


残りの人生は..綺麗で可愛い奥さん3人と親友と面白可笑しく暮らそう..


毎日、遊んで、欲しい物を手に入れて..面白おかしく暮らそう..


ダラダラしながらゆっくり暮らせば良い..


もう僕ちゃんは戦うのはコリゴリだからね..


まずは、親友のセトが付いたら..思いっきり驚かせてやる..



僕ちゃんの戦いは




「どうかしたの?にやにやして」


「笑っているなんて珍しいね」


「うふふ笑顔も凄く素敵ですね」



これで本当に終わった..後は楽しく生きて行けば良いんだ..彼女達や親友と共に..



(FIN)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る