第44話 戦争終結

「ふうっ疲れた..ただいま!」



「お帰りなさい、ソード」


「お帰りなさい」


「お帰りなさい、ソード様」



普通に仕事をして帰ってきたようにソードは帰ってきた。





外には魔族が沢山居る。


だが、強化されたコテージに賢者が本気張った結界に手が出せるわけが無い。


そして疲れて来たら交代可能な聖女が居るし、疲れてきてもお互いがお互いを癒せる。



「聖歌姫ことロザリア」にすら出来る事を、本物の聖女や賢者が出来ない事は無い。


無詠唱でそれこそ年単位で張っていても問題は無いだろう



しかも城でなく小さなコテージだ。


最早要塞としか言えない。





遠見の鏡で見ていたローアンや王族は飽きれていた。



「流石は勇者殿だ..普通に家に帰るように帰っていったな」



粛清が終わった教会と違いアカデミーは落ち着かない。



「賢者も、聖女も偽物というが、その偽物もまるで化け物では無いか?」



「ええっ、そしてあの二人、に一人平民が加わり、それが勇者ソードの愛おしい女性です。 教会は「愛し子」計画の者は粛清して全員処刑しましたよ、今でも勇者ソードはその事を怒っていますからね..アカデミーはどうでしょうか? 「人工勇者」の関係者の処分は如何かな」



「ローアン様..それが..」


「今直ぐ殺しなさい..そうしないと貴方の命も保証できません」



「各国の王は知らない..それを貫きとおした方が良いでしょう」



「「「「「解りました」」」」」



「あれ程の魔族に囲まれていても問題が無い..最早別次元の存在としか思えない」


「恐らくは中で食事をとり休息をとっているのでしょう?」



それは正しかった。





「このシチュー凄く美味いね」


「はい、腕により掛けましたから..喜んでもらえて私も嬉しいです」



「ありがとう」



「しかし、魔族と戦っている中で食事するなんて考えられないわね」


「同感..周りが全て魔族に囲まれているなんて信じられないね」


「平和としか考えられません」



「これは、僕ちゃんじゃ無くてルシオラとユシーラだからね」



「本当にそうだね」


「気が付かなかったな」




「そうでしょう? 僕ちゃん達だけなら、人類が全員死んでしまっても平和に生きていけるよね」



「結界を張っていれば良いんだ」


「それだけで安全この上無い」


「うふふふ、此処は本当に安全なんですね..勇者様が居て、賢者様や聖女様が居る、世界で一番安全な場所ですね」



「当然だわね」


「うん、当然」



食事をして歓談して、睡眠をとり、シャワーを浴びてソードは再び出かける。


「行ってきます」


「「「いってらっしゃい」」」




外は魔族ばかりだから狩るのは簡単だ、昨日と同じ様に淡々と作業をこなす。


場所が変わっただけで、同じ事をしていく。


そして...僕ちゃんは叫んだ。



「何度も僕ちゃんは言うけど、魔族を殺すつもりは無いんだよ..今迄何で勇者達は少人数で戦っていたか考えてよ..お互いに犠牲を出さない為だろう! 僕ちゃんはお前達を皆殺しに出来る、だけどしたくないからこうしているんだ..」



黙って魔族は聴いている。



「お前達だって家族はいるだろう? こんな大虐殺で殺されたらどう思う? こういう大規模な事を人類が起こした事はあったか?」




「我は、魔族の公爵で、ゾルである..勇者の言い分は聴いた..どうやら齟齬があるようだ、明日一日戦闘を中止しよう..私が魔王様に状況を説明して進言する、明日一日休戦してくれないか?」



「受け入れるよ..吉報を待っている」




明後日 ゾルは約束通り現れた。



「魔王様もこれ以上の戦闘は望まない...これより兵を引かせるから追撃はしないで欲しい」


「約束するよ..今回の責任は!」


「それはこれから魔国に帰ってからだ..だが、魔王様は少なくとも謝罪はするそう言っていた」


「信じるよ」



「勇者ソード..極力殺さず戦ってくれた、そなたに私個人として敬意を表する..さらばだ」



「僕ちゃんも、貴方の英断に感謝だ..さようなら」



人類の存亡をかけた戦いはこうして幕を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る