第42話 薔薇は美しく散って汚名を残す..ソード突撃

やはり僕ちゃんの勘は正しかった。


聖剣を持った勇者にはどんな魔族も勝てない。


恐らくは、魔王と魔族は対の存在の様な気がする。


多分、僕ちゃんを殺せるのは魔王だけだ。



だからこそ、無双できる。


魔物は片っ端から殺す。


魔族は基本殺さない、どちらか解らない相手は放置。


それで良い筈だ。


「我こそは勇者ソード、逃げる者は追わない、だが挑んでくる者は五体満足でいられると思うな!」


そのまま突っ込んでいった。



遠くから聖剣を軽く振っただけで魔物も魔族も吹き飛んだ。


だが、その場に留まった者が居る。





「貴様、何者だ!」


「もう名乗っただろう!僕ちゃんは 勇者ソードだ!」



「勇者ソード? 勇者はセトの筈だ」


「僕ちゃんはセトの次の勇者だ」



「だったら怖くねぇな..魔王様だって生まれて直ぐは強くはねぇー 生まれたての勇者等..えっ」




力の加減をする、聖剣はほぼ使わず、収納袋から普通の剣を取り出した。


聖剣は他の剣と違って持っているだけで充分能力を発揮する様だ。



これでいい。


聖剣を使うと多分、簡単に殺してしまう。



だが、それでも、それでも勇者の一撃は簡単に魔族の牙を折る。



「お前達は、多くの人間を殺した..だけど僕ちゃんは殺さない..手加減はしてあげる、だけど、それでも死んでしまったら ごめん」



胴体は狙わない、足や手を狙う。


それでも、どんなに手加減をしても、足は千切れたり腕は飛んでいってしまう。



「僕ちゃんはお前達と違う、喜んで殺したりはしない..逃げるなら追わない..消えろ!」




「ばばばば化け物だ.」


「逃げろ、逃げるんだ..死んじまう!」



風で吹き飛ばされた五体満足な者からこぞって逃げ出した。






王城は正に落ちる寸前だった。


此処には「聖歌姫ことロザリア」率いる癒し手部隊の結界も歌いどうしでもう歌えなくなる寸前だった。



王国クレの「インペリアルプリンスのアルト」率いる王宮騎士団。


魔道公国マロウの「黒魔術士オルトル」率いる暗黒魔術師団。


傭兵王国グルノの「英雄オウダ」率いる特殊師団。


彼らは健在であったが、この結界が崩れた後、自分達では守れないのを悟っていた。




平民が多いとはいえ430万近い人間が死んだ。


その中には冒険者、騎士も含まれる..何より恐怖なのは自分達と同格の英雄クラスの人間が玩具の様に死んだ。


死を覚悟するしか無かった。





「アルト殿一体何をしようとしているのだ」



「クレ王..もう終わりです..これが私の最後の仕事です..未熟な私をお許し下さい」



「アルト殿、それが君の判断なら、仕方ない...それが一番僕の幸せなのでしょう」


「はい」


アルトは剣を抜き、その剣でクレ王の首を跳ねた。



「魔族に蹂躙されて殺される位なら..楽に死なせました..僕はこのまま死にます..お前達は好きにしなさい..一緒に死ぬも良し、逃げるのも自由です..今迄ありがとう」



そう言うと、その剣で自分のクビに刃を当てそのまま引き抜いた..



「インペリアルプリンスのアルト」率いる王宮騎士団は全員がそれに追従するように死んだ。



惨めに死んでいくよりは美しく死にたい。


薔薇の様に華がある、そう言われた騎士団は魔族軍と戦いもせずに、文字通り散った。



彼らは知らなかった..死ぬことは無かった。


何故なら、勇者が既に聖都に到着し戦い始めていた。



ただ、後数時待っていたら..その報告を受ける事が出来た。


その為、英雄と言われ、クレ王国の薔薇と呼ばれたアルトは後の世でこう呼ばれる事となる。


「美しいだけの人形の様な役立たず」と..


子供達は、後の世で歌う。



英雄アルトは役立たずー美貌があっても強さは無いー..だから魔族と戦わず..王様殺して死んじゃった。



そして、能力が無いのに美貌だけで出世する人間を「アルト」みたい..そう呼ぶようになった。





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