第40話 ソード、聖都へ

いよいよ聖都へ旅立つ。


恐らくは聖都は今は凄く大変な事になっていると思うな。


僕ちゃんはしっかりと準備した。


ポーション類は元より、食料にルビナスの装備。


何かあったらいけないので、ミスリルで一式オーダーで作って貰った。


かなり驚いていたけど、知らない。



そして、旅立ちに用意したのは龍車。


これは小型の竜に引かせた馬車みたいな物だ。


竜が引く事によって警戒して魔物が現れなくなる。


「こんな凄い物、簡単に使って良いのでしょうか?」


「龍車は流石に..ない」



もう慣れた筈のルシオラやユシーラも驚いている。



セトに至っては


「何か掴んでいるのか?」と頻りに聴いてくる。



「僕ちゃんの予想では、恐ろしい事が起きている気がする...間違っていたら、まぁ無駄遣いしている、それだけで済むから用心した」


と伝えた。



セトが「それなら俺も」と言い出したが、「もうギルマスなんだから勝手に動いちゃ駄目でしょう」とたしなめた。


折角、幸せな未来が用意出来たんだ、僕ちゃんとしてはメグと一緒に子供でもコロコロ産んで幸せな生活を送れば良いんだよ。



もう、こんな危ない事しなくて良いんだからさぁ。


まぁ、ついてきても一切戦わせないつもりだけどね。




「それじゃ、セト行ってくるね!」



「ああ、何でそこ迄の装備で行くのか解らないが、行ってこい!」


「次は私も連れて行って下さいね!」




「セトにメグ達者でなー」



「何が何だか解りませんがいってきます」


「行ってくる」


「行ってきますね」




龍車は勿論、御者が操縦するからやる事は何も無い。


ただ、話したり、トランプしたりしながら移動するだけだ。


龍車は本来、王族が載る様な物だから快適だ。


走る応接室、そんな感じだ。



魔物も竜を恐れて余程の物じゃ無ければ出て来ないからやる事も何も無い。



「これは流石にやり過ぎなのでは無いですか?」


「流石に、そう思うよ」



「私の考え違いでは無かったのですね..もしかしたら皆さんには当たり前なのかな、そう思っていました..良かった」



「僕ちゃん達は勇者パーティーなんだから、これからはこれ位は当たり前、そう思われるようにしようと決めたんだ、だから慣れてね」



ルビナスは何だか落ち着きが無いしルシオラもユシーラもちょこんと隅に座っている。


折角なのだから、お茶でもしながら寛いでいれば良いのに..



聖都近くまで特に問題が無く進んでいた。



「平和に見えるわね..やはりソードの思い違いじゃない」


「今の所、問題は無い」



「思い過ごしだと良いね」



多分、思い過ごしじゃない、既に違和感が現れている。


聖都方面からくる人が異常に少ない。



聖都の門の近くまで来た。


異様だ、人間の声がしないで魔物の雄たけびが聴こえる。



龍車から降りてコテージを用意する。


このコテージはあの後、お金に飽かせて鬼の様に改造してある。


大量の聖水を滲み込ませて分厚いミスリルで補強してある。


最早、これはシェルターだ。


これに賢者のユシーラとルシオラが結界魔法を掛ければ魔王でもない限り壊せないだろう。



勇者の目は遠くまで見通せる。


聖都は魔族の手に落ちていた..いやまだ王城は落ちていないだろう。


ここから晩回戦だ。



「皆は此処で待っていて、何があってもこのコテージから出ちゃ駄目だよ!」



「ソード、あれは1人じゃ無理だよ私も行く」



「結界魔法が必要、賢者の出番」



「ユシーラ、ルシオラ、来ちゃ駄目だ、そんな事したら僕ちゃんは戦えない、それにこんな所にルミナス1人置いておけない」



「どうして、こんな時の聖女じゃない..勇者と共に私は」


「そう、だよ賢者は」



「ごめん、2人が来るなら、僕ちゃんは戦えない..人なんて何人死んでも構わない..此処にいる3人とセトだけが生きていれば良い、2人が来るなら僕ちゃんは聖都を見捨てる、2人が死ぬ可能性があるなら逃げるよ」



どうしてこんな過保護になっちゃったのかな..多分私が付いていくって言ったら、本当に見捨てちゃう気だ。


賢者としては寂しいけど..妻..そう言う事だよね。



「解ったわ、頑張ってねソード! その代わり何かあったら絶対に帰ってくるのよ! 聖女の名に懸けて死んでさえいなければ絶対に治すわ」


「ここは私が結界をはる..賢者が本気で張った結界は絶対に壊れない..何かあったら此処まで死ぬ気で帰ってきて」



「私は何も出来ませんが、美味しい食事を作って待ってます」




「うん、行ってきます」



ソードは三人の妻にそう伝え聖都の門へと向かっていった。


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