第39話 自分が偉くなっていたのに気が付きませんでした
ルビナスさんの服を買いにまた洋服屋に来た。
「これはこれは勇者様、ご来店有難うございます」
流石、商売人今度はちゃんとした対応をしている。
直ぐに奥に通され、お茶とお菓子が出て来た。
多分、これが本来の上客に対する対応なのだろう。
直ぐに商談には入らない、世間話をしてそれからようやく商談に入った。
「それで、勇者様、本日はどういったご用件でしょうか?」
「新しくパーティーに入ったルビナスに服を買いに来たんだ、また金貨30枚で10着位と下着を数着お願いしたい」
「その方にですね」
「ルビナスには家事などもして貰うから、そう言う事も考えた服も幾つか入れて欲しい」
「最初に言って置くけど、ルビナスも私と同じソードの妻だから、そのつもりでデザインお願いしますね」
「私と同じ」
《言わないで良かった..警戒していて良かった..危うく使用人や雑用と間違える所でした》
「大丈夫です! 魅力を引き立てるご洋服を用意させて頂きます、それで幾日位でご用意すれば宜しいのでしょうか?」
「この間みたいに無茶は言わないけど、この後、聖都に向うから急ぎでお願いします」
「それなら、3日間位頂けますでしょうか? あとお許し頂けるならこれを店頭に掲げたいのですがお許し頂けますか?」
「勇者ソード様ご用達の店」と書いてある看板だった。
「確かにご用達だから掲げても良いよ、3日間なら問題ないよ」
「有難うございます」
「それで今回も展示品の手直し品を先に一枚譲って貰えますか?」
「畏まりました、直ぐにご用事致します」
素早くルビナスを採寸していき、それに合わせて展示品の服を手直ししていく。
流石に手早い。
完成すると早速ルビナスに着替えて貰った。
「それで、こちらの服は如何なさいますか?」
「もし出来るなら手直しして綺麗に出来る」
「勇者様、これを手直しするのですか?」
「ソード様、新しい服も買って貰ったので、それは要りませんよ」
「だけど、僕ちゃんがルビナスに出会った時に着ていた服だから何となく処分するのが勿体なくて」
「うふふっ、確かにそうですね」
「それじゃ、金貨2枚出すから、その服のクリーニングと手直しもお願いします」
「畏まりました」
私なんて金貨2枚の価値も無いのに..実際に今迄、そういう扱いしかされた事は無い。
そんな私のお洋服に金貨32枚何て。
「また、そんな顔しているのね!」
「だって、私なんて只の平民で村人なんですよ! それなのにこんな..」
「解って無いわね? 私だって元聖女よ..元なの、つまりそれだけなら只の平民、良い所シスターね」
「私も元賢者で、今は賢者じゃない」
「そんな、詭弁です、お二人はそれでも凄い人じゃないですか?」
「そう凄いわよ? 今の私達は聖女や賢者と同じ位の力があるわ! 貴方にもね」
「気が付いていないの?」
「私に何があるのでしょうか?」
「あるわよ! 勇者の妻という凄い地位がね!」
「やっぱり気が付いて居なかった..今の貴方の地位は帝国の王妃や王国の王妃以上! いやソードの性格だと何かあったら力を貸すから帝王や教皇より上なのかも知れない」
「あはははっ、うふふふふ、そんな事ある訳ないじゃないですか?」
「あるわよ! 紙切れ1枚書いただけだから実感が湧かなかったのね? 世界で1番偉い人間は誰かしら?」
「勇者様..ですね」
「その勇者の妻が、たかが王の妻より身分が低い訳が無い...貴方は今、身分で言うなら世界でもしかしたら4番目に偉い」
「ユシーラ様!」
「様は要らない、同じ妻なのだから! だけど、多分世の中で私に様をつけないで呼べる人間は数少ない、その中の一人が貴方...」
「あれっ..本当にそうなります..ね」
「今頃気が付いたの? 貴方はもう平民じゃないわ! 貴族を通り越して、王族を飛び越えて「勇者の家族」になったのよ、もう自分を平民とか村人なんて呼ぶのは辞めなさいね」
「わわわっ私が、そんな出世していたなんて気が付きませんでした!」
《気が付いて無かったのね..》
《暫くからかうのに面白い..》
「これからもっとカルチャーショックを受けるわよ?」
「覚悟は必要」
「解りました」
「ルビナスの洋服が仕上がったら、聖都に行くよ、過酷な旅になる可能性もあるから、思いっきり羽目を外そう」
「「うん」」
今迄で羽目を外していないなら、羽目を外すとどうなるんでしょうか?
元、村人の私には想像もつきません。
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