第38話 三人目

「これは、恩を返すどころかどんどん恩が増えているような気がします..」


「諦めた方が良いわ、ルビナス」


「そうそう、気にしたら負けだよ」



食事をし話が終わったら、何故か三人は複雑な顔をしていた。


たかがレストランで高級な食事をしただけなのに。




話が纏まった後、ソードが向ったのは貴金属店だった。


「また、指輪が欲しいんだけど!」


「指輪ですか? どの様な指輪がご希望でしょうか?」



「無いと思うけど、僕ちゃんが買ったのと同じ指輪があると良いんだけど..流石に無いよね?」


「あの追加で欲しい?そう言う事でしょうか」


「あと一つ欲しい」


「一つで宜しいのであれば、ちょっとオーナーに聞いてきますね」




「ソード様、前の指輪と同じ物がもう一つ欲しいという事ですか」


「あくまで出来ればと言う事だよ、貴重な物で手に入らないのは僕ちゃんも聞いているからね」


「その方ともご結婚、そういう事ですか?」


「うん、そうなんだよね! 可能なら同じ物が希望なんだけど無理だよね!」



「本来は無いのですが..特別にこちらを提供させて頂きます」



「これは..僕ちゃんには同じに見えるけど!」


「少しだけ作りが甘いのです、このリングはそちらを作る時に最初に作った試作品です」


「試作品?」


「はい、貴重なレインボーオリハルコンを加工するのですから一発本番じゃ怖いと職人が言うので練習で作った物なのです」


「見た目変わらないし、それを譲って貰えるかな?」


「本来はこの様な試作品は売らない物なのですが、勇者様ですから特別にお譲りします」


「ありがとう..それで幾らになりますか?」


「無料でございます」


「いや、それは申し訳ない」


「これは貴重ではありますが、あくまで試作品! お値段はつけられません」


「ありがとう」


「どう致しまして」




「あのルビナスさんは一生僕ちゃんの傍を離れない、そう言う事で良いんだよね?」


「はい、一生お仕え致します!」



《多分、彼女驚くわね!》


《私が驚いた位だからね》




「僭越ながら、前回と同じ様に立会人の欄には私オーナーのゼンドルと先程ご案内したマリルのサインをして置きました、こちらにサインしてギルドに提出すれば、登録が終わります、まずはサインをお願いいたします」



「それじゃ、ルビナスさんこの書類にサインして」


「これは何の書類ですか?」


「良いから、良いから」


「解りました」


ルビナスさんがサインした後、僕ちゃんもサインした。




「はい、それじゃこの指輪をあげるから左手を出して!」


「あの、ソード様、先程のサインとこの指輪には一体どういう意味があるのでしょうか?」



「ずっと一緒に居るんだから、結婚した方が良いと思わない? だから、これはその為の書類!」




「結婚ですか!私と、勇者様のソード様とですか?..私は物凄く嬉しいですが..他の方は宜しいのですか? 私ただの村人、平民ですよ」



「良いんじゃない? 私としては勇者って10人も妻を娶る事が出来るから1枠でも減った方が嬉しいわよ、それに貴方は介護もしてくれるのでしょう? 良いわ..言っとくけど生涯貴方は私の介護から逃げられないのよ..終わったわね」



やはり聖女様なんだ、こんな事言っているけど、目が凄く優しい..今迄の人とは全然違う。


「ルシオラ様、有難うございます」



「良いのよ、それに貴方にはこれから家事から何から全部押し付けるんだから感謝する必要は無いわ」



「それでも有難うございます」



「そうそう、私は介護の他にも落ち着いたら研究も手伝って貰うから覚悟してね」


「ユシーラ様、有難うございます」



よく考えたら、私は今迄友達って居なかったのかも知れません。


言っている事は辛辣ですが、自分の親も含んでこの方たちが一番優しいのですから。




ギルドに書類を出しに行った。



「ほうー、もう三人目か? 昔、俺にハーレム野郎とか言っていたのは誰かな?」


「僕ちゃんだね! だけど、僕ちゃんはセトと違ってちゃんとしているよ? 全員結婚しているんだから」



此奴は懐に入れた人間には異常な程優しい。


何しろ、全員の共通の口座以外に、ルシオラにユシーラにルビナスの口座を作って考えられない程のお金を積み立てている。


俺のは頼んで辞めて貰った。


最も、貰った時点で既に金貨2000枚積み立てられていたんだが。


過保護すぎる、本当にそう思うがそれが彼奴の想いなんだろう。



「言う事はそれだけか?」


「それだけだね!」



「僕ちゃんは1人だけを生涯愛するんだって言っていた、可愛い弟みたいなソードはもう居ないんだな」




「そう言えば、そんな事言ってましたわね」


「言っていたね」




「解った、解った、僕ちゃんが全部悪い..これで良いんだろう」



「まぁな、だけど、良かったな、ちゃんと家事が出来る仲間が出来て」


「本当にそう思うよ!」



「セトにソード、それは一体どういう事かしら?」


「私達が出来ないと」




「あのさぁ、俺が食事をソードに作らせていたのは、お前らの食事が作れないからだ、決して虐めじゃ無いんだぞ」


「成程、あれはそう言う事だったんだ」



「そういう事だ」



「仕方ないじゃないですか? 私は教会に居た時から不得手でしたから」


「研究者は拘らないから」






「皆さん、本当に仲が宜しいんですね!」




「「「「勿論」」」」



こんな素晴らしい輪の中に入れるなんて思って居ませんでした。


ただお仕えするだけで良かったのに..


これじゃ私の借金は膨らむだけで生涯どころか未来永劫返せませんね!


こうしている間にも膨れ上がっていくんですから。



「うふふっ」



「どうかしたの? ルビナス!」


「何でもありませんわ、ルシオラ様」



「そう、なら良いわ」



こんな輪の中に村人の私が居るんて夢の様にしか思えません。


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