第31話 僕は知っている!
「うわああああああああああああん」
僕は泣きながら走っていた。
僕の目の前で、お母さんとお姉ちゃんが殺された。
少し前の事だ
沢山の魔族が王城に向っていく中、そいつは居た。
「本当に酷いわ、私が一番乗りしたからって、子供に嫉妬するなんてね」
荷物に僕たち親子は紛れて隠れていた。
入口から沢山の魔族や魔物が次々に聖都に入っていった。
このままやり過ごす事が出来れば逃げるチャンスがあるかも知れない。
甘かった、臭いをかぎ分け狼みたいに見える魔物に見つかった。
「ガルルッ」
「あらっまだ虫けらが居たのね?」
「この子、この子だけは助けて下さい!」
「弟だけは助けて!」
僕を庇うようにお母さんとお姉ちゃんが抱きしめてくれた。
「そう、それで良いのね?」
その女の魔族は笑うと、お母さんとお姉ちゃんの首を跳ねた。
首が2人とも静かに落ちた。
お母さんとお姉ちゃんはそれでも僕を抱きしめていた。
「なぁに、その目は私達魔族はね約束は結構守るのよ? 約束通り貴方は行って良いわ」
「お母さん..お母さん、お姉ちゃん、おねえーちゃん」
「あーあ泣いちゃってまぁ」
「お母さんやお姉ちゃんが何をしたって言うんだよ..何もしてないじゃないか..」
「そんな事言うけど、人間は魔族って言うだけで殺すでしょう? 魔物のオークを殺して食べるし、オーガを殺して角をとるわ、そこの馬車の敷物はシルバーウルフだわ、同じじゃない?」
「.....」
「自分達が殺す癖に私達が何で殺しちゃいけないのかしら?」
「だったら、僕が今度はお前を殺す..」
「あんたが? 無理ね! 1000人居ても無理、さっき偉そうにしていたのは英雄らしいけど、ただの虫けらだったわ」
「僕じゃ殺せない...だから殺せる人を連れてきて殺して貰う」
面白そうね...さっき虫けらを殺したら褒めて貰えたわ、そいつは強いのかしら?
また褒められるかな。
「良いわ、連れてくれば! 私はミルクよ、まだ暫く此処にいる..逃げて良いわよ!ワンコにも手を出させない..その強い人をね、それまで殺さないであげるわ」
僕は、死んでいるお母さんの懐から財布を取り出した。
あと、近くにある幾つかの死体からもお財布を貰った..商人の財布には沢山のお金があった。
これで足りる。
「何をしているのかしら?」
「その人を連れてくるにはお金が必要なんだ」
「そう、なら持っていくがいいわ..」
「あの人ならお前なんて必ず殺してくれる」
「そう、さっさと行きなさい」
僕は無言で走り出した。
隣町に行けばあの人が居る。
あの人は最初お姉ちゃんを見ていた。
「あの、何か御用でしょうか?」
無視すれば良いのにお姉ちゃんが話し始めた。
「いや、最近別れた恋人にあんたが似ていたんだ」
「まぁ」
結局、お母さんもお姉ちゃんも話し始めた。
変な奴だったらどうするんだ?
だが、僕は見てしまった..腰に差している剣に、剣聖ソードって書いてあった。
「嘘、おじさんが剣聖ソードなの?」
「違うぞ、坊主、これは剣聖ソード様から頂いたんだ」
「本当に貰ったの?」
「まあな」
「凄いんだね、おじさん」
「まぁな」
僕は大きくなったら冒険者になる。
それが夢だった。
だから、剣聖が自分の名前が入った剣を渡す、その意味を知っていた。
1.自分の弟子で免許皆伝
2.何か手柄を立てて恩を感じたからあげた
3.試合等をしてその腕を認めた
その三つしかないんだ。
剣聖ソードが剣を譲った事は聴いた事が無い。
だから、この人は凄い人の筈だ。
恐らくは勇者と剣聖を除けば最強の人はこの人だ。
この人なら、あんな魔族殺してくれる。
「剣聖ソードが認めた唯一の男、ガンダルさん」が必ず仇をとってくれる。
僕はお金を握りしめ泣きながら走った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます