第30話 広がる絶望
門が破られ、街に魔物や魔族が流れ込んできた。
最早、門番や警備兵は役に立たなかった。
責任感のある者はそのまま殺され、責任感の無い者は放棄して逃げ出した。
「うがぁぁぁぁぁぁ」
「助けてくれー」
「聖都が襲われるなんて、何が起きたんだ」
ただただ、惨劇が続いた。
魔族や魔物に入り込まれた聖都は悲惨だった。
貴族階級以上は、民衆を見捨てて貴族街に逃げ込み、王城に逃げ込んだ。
そして、本当の地獄が始まった。
魔族はおろか魔物とすら戦う力の無い人が取り残され餌食になっていた。
冒険者も逃げ出そうとする者、戦おうとする者も全て餌食になっていった。
「妻だけは、妻だけは助けて下さい」
「子供だけは助けて」
命乞いの言葉は届かない。
本来、ゴブリンやオーク等は女が犠牲になれば助かる場合もある。
だが、今回は後ろに更に強者が控えている。
その為、女子供関係なく殺していくゴブリンもオークも殺戮マシーンにすら過ぎない。
本来なら王と言う名前を冠するゴブリンキングやオークキングすら雑魚なのだ。
その下の者には何も決める権利は無い。
人の死体が無造作に道に捨てられている。
数の暴力で殺されたから女性が凌辱されていない...それだけが唯一の救いなのかも知れない。
さっき迄串焼きを売っていた店の前では串焼きと一緒に子供の足を食べているゴブリンがいる。
頭が潰れた死体を抱えるオークはこれから食べるのか大事そうに抱えている。
道に捨てられている死体は..恐らく彼らの食糧になるのだろう。
その中で普通に人間の家で食事して居る者も居る。
多分、彼らは魔族なのだろう。
今迄、此処は人間の国だった。
見渡す限りの人間が居た。
だが、最早ここは人間の国には見えない。
誰が此処が聖都だと解るのだろうか?
知らない人が見たら魔都にしか見えないだろう。
恐らくは、今では王城に閉じこもっている人間と魔族や魔物なら後者の方が遙かに人数は多いだろう。
聖都の王城では大騒ぎになっていた。
「勇者達を呼び戻すしかない..」
「それは竜騎士に頼むしかない」
「今のところは空から来ていないが、相手は魔族だ、空を飛べる者も大勢いるのだ、竜騎士が居なくなったら終わりだ」
「だが、オーブが使えない今、それしか連絡のとりようが無い」
「だが、勇者が来てどうにかなるのか?」
「無理だ...」
此処にも絶望が広がっていった。
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