第28話 鉄壁のアルガード (聖都攻防戦スタート) 残酷な描写が此処から少し増えていきます。
その日は何時もと違っていた。
聖都を襲うのに必要な数の魔族や魔物が揃い、最終段階に進み、大規模な結界を魔王軍が張った。
聖都を覆い尽くす結界、そんな物は誰も想定はしていない。
もしそんな物が作れるなら、聖都に用意しない筈が無い。
だが、魔族は作る事が出来た。
それをこの戦いに投入してきた。
結界に包囲されるなか魔族の軍団が聖都に現れた。
今迄とは違う、見渡すばかりの魔族に魔物。
そのつなぎ目が何処にも見えない。
その事に気が付いたのは勿論見張りだった。
聖都の門の横にある、物見やぐらからそれを発見した彼は直ぐに門番に報告した。
「解った、俺に任せてお前は直ぐに報告に行け!」
「大丈夫なのか?」
「任せろ! 俺に任せれば大丈夫だ!」
「そうだな、お前なら、解った」
「俺と部下2人は門の外に出る、出たらしっかりと門を閉めてくれ」
「本当に大丈夫なのか?」
「ああっ俺に任せてくれ!」
普通の門番ならこんな事は言わない!
だが、この門番は違っていた。
昔、Aランクパーティーに勇者の集いというパーティーがあった。
やがてSランクに至ると言われたそのパーティーはある1人の男を追い出した事により瓦解する。
勇者の様と言われるリーダーマイトに聖女並みの回復魔法を使うと言われたルル、そして賢者並みと言われたリタ、そのメンバーの仲間に盾役の彼が居た。
勇者の様に戦う彼らに、ただ立っているだけの彼は不要、そう言うと リーダーは彼を首にした。
他の2人のフォローも無かった。
生活に困った彼は冒険者を辞め、此処聖都で衛兵の試験を受け門番となった。
そして彼が門番になってからは聖都は昔以上に平和になった。
過去に魔族や小型の龍種が襲ってきた時さえ彼は1人でそれを退けた。
それと同時に「勇者の集い」は彼を追い出した後、依頼を真面にこなす事が出来なくなり、とうとうC級の依頼すら失敗するようになり瓦解していった。
彼らが依頼をこなせたのは彼のお陰であった。
彼がヘイトを使い、自分に常に攻撃が集中するようにしていたのだ。
だからこそ、彼らは誰にも攻撃される事なく、攻撃が出来ていた。
そう、彼が居たからこそのAランクパーティーだった。
聖都の門番では通常あり得ない龍華勲章も貰った彼を尊敬を込め人々はこう呼んだ!
「鉄壁のアルガード」と。
彼がいる限り、この門はいかなる悪も通さない。
それが皆の常識だった。
「行くぞ、2人とも俺たちが居る限りはこの門は絶対に通させない」
「アルガードさんが居るなら大丈夫ですね」
「雑魚は私達にお任せ下さい」
遠くから土煙が上がった。
無数のシルバーウルフが疾走してきた。
「シルバーウルフか、厄介だ」
この程度では彼はひるまない。
だが、その後ろを見た瞬間に彼は恐怖するしか無かった。
「こんなのをどうしろって言うんだよ!」
後ろの門はもう閉まってしまって入れない。
直ぐに報告に行かせるべきでは無かった。
ちゃんと、門を閉めてから数の確認をするべきだった。
自分ならどうにかなる。
そんな甘い考えが死を招いた。
何処までも続く魔物や魔族の行軍、切れ目は見えない。
命がけでヘイトを使い仲間を守ろうとしたが、無理だった。
「きゃあああああああっ」
「うおぉぉぉぉぉ」
百の魔物を彼が集めようが数が違い過ぎたのだ。
仲間の2人は既にシルバーウルフに襲われ食料になっていた。
可愛らしい新たな仲間の剣士は既に下半身が喰われて無くなっていた。
美しい斧使いは逆に上半身を食われて、足が片方しか残っていない。
彼らには一度悲鳴をあげる事しか出来なかった。
「貴様らは許さない、許さんぞ!」
ぐちゃり...
何者かがアルガードの頭を殴った。
その瞬間にアルガードの頭は体にめり込み..死んだ。
死んだ、アルガードをシルバーウルフは一斉に食べ始めた。
アルガードを殺したのはただのオーガだった。
ウルフやゴブリンでは門が破れない、そう考え数体のオーガが前に出て来た。
ただ、それだけ、それだけの事で「鉄壁のアルガード」は崩れ落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます