第23話 これは贅沢では無いよ

本当はセトがギルマスになってから出すつもりだったんだが。


無事、届け出をだした。



これで、正式に結婚した事になる。


教会の結婚より事務的だが、亡くなった後の対応等はこちらの方が便利なので冒険者はこちらを選ぶ場合が多い。


この世界の結婚は一般的には一夫一妻、だけど地位が上がると少し変る。


例えば男爵など下級貴族は一夫二妻、伯爵以上の上級貴族は一夫四妻、王族は一夫十妻となる。


これは世継ぎに関する事情によるものだ。


ちなみに剣聖は一夫四妻、上級貴族と一緒で勇者は王族と同じ一夫十妻となる。


昔は勇者は幾らでも妻を娶れたらしいが、余りに多くの妻を迎えた勇者が居たのでこの様になった。


ちなみに妻が多くの夫を持つのは基本禁止。


基本というのは女王の場合等幾つかの例外があるから。



一応、僕ちゃんは「勇者」だから、教会宛にも結婚の書類を作り郵送を頼んだ。


ここの教会でも良いが、ローアン宛に送った方が義理的に良いだろう。




二人は凄く笑顔だ。


セトへの報告が明日になってしまうがこの笑顔が見れたなら、まぁ良いや。






「ルシオラ様、調査の依頼の報告書が出来ています」


「ありがとう、流石に速いわね!」


「まぁ、簡単な調査ですから、それとおめでとうございます」


「ありがとう」



何の報告書だろうか?



まだ、この辺りでは勇者パーティーだと知られてない。


だから、この通り普通に行動出来ている。


素性がバレない様にしてくれる、案外このギルドは優秀なのかも知れない。





「さて、そろそろ美味しい物でも食べに行こうか?」


「確かに、お腹もすいたわね」


「ペコペコだよ」



「それじゃ行こうか?」



「また随分、凄い所で食べるんだね」


「凄いね、此処は」


「その件についても入ってから説明するね」



「「解った(わ)」」



今回は、服を着替えた後だから止められなかった。


多分、最初の服装だったら入れて貰えなかったかも知れない。



余り高級店で食べた事が無いから、最初から勇者の身分証明書を出して個室にして貰った。


「最高の肉料理をコースでお願いします!」


「勇者様のお気に召すように、精一杯のおもてなしを致します」



「少し、話をしたいから料理は15分後からでお願いします、飲み物を先にお願い致します」


「畏まりました」




「それでこの凄い贅沢には何か理由があるのですか?」


「知りたい」


「僕ちゃん達は馬鹿だったんだよ! 」



「それはどういうことなの?」


「何かあるの?」


「簡単に言うとかなりの額をピンハネされていたんだよ、僕ちゃん達が稼いだ額ならこんな生活死ぬまでしても使いきれないよ」




「そうなのですか?」


「本当?」


お人よしの勇者セトに、世間知らずの聖女に研究者じゃ、気が付かないよね。


まぁ、その生活ですら、僕ちゃんは羨ましい位貧乏だったけどさぁ。



「まずは、これを見て貰える?」


「袋ですね、金貨が一杯入っていますね、このお金がどうかしたの?」


「凄い大金だね..これだけあれば良い研究資金になるよ」



「これね、ただのワイバーン2体の討伐金、解りやすい様に降ろしてきたんだ」


「ワイバーンの討伐ってこんなにお金になるんですね」


「こんな金額になるんだ」




「あと、ドラゴンゾンビの討伐にオークキングの討伐、ゴブリンキングの討伐も受けたんだけど、それだけでもう10年は暮らせるお金になったんだ」



「そうなんだ、凄いね」


「うん、流石ソード」




「違うって、そこじゃなくて、セトと一緒に僕ちゃんたちはどんな仕事していた? 同じようなレベルの仕事をずうっとしていたじゃない?」


「確かにそうだね」


「うん、していたね?」





「僕ちゃん達が手に入れた秘薬、王城並みに高いらしいよ? セトがタダで送っちゃったけど! その他にも高額で貴重な素材も全部アカデミーや教会に送ってたよね」


「確かに送っていたわね」


「確かに高額な素材だった」




「それらを普通に計算するともう四人で一生贅沢しても使いきれない金額、いや同じ人生をもう一度歩んでも使いきれない金額は稼いでいるんだよ!」


「それ程なのですか」


「確かに高額な物も沢山あったかも」



酷い話だよ、命がけで戦って、あんな事までさせられて、ピンハネされて僅かなお金で誤魔化される。


簡単に言えば、金貨1000枚位稼いでいて金貨10枚渡される、そんな仕事してたんだ。



「そう、だからこれは自分達が稼いだお金をただ使っているだけなんだ」



「そうだったのね」


「言われてみるとそうだね」



「そう、あいつ等は勇者の支援団体だとか聖女の支援は教会がするとか賢者の支援はアカデミーなんて言いながら、本当は寄生虫の様に僕ちゃん達に寄生していたんだよ..実質は、魔王退治を頼んで死に物狂いで戦っている僕ちゃん達から更にお金を巻き上げていた..それに最後はあれだ、酷くないかな?」



「ちゃんと考えて見たら酷い話ね、本当に馬鹿みたいだわ」


「本当にそうだね、冷静に考えたら酷いねこれ」




「そうでしょう? だから僕ちゃん達はこれからは自由にして良いと思うんだけどどうかな?」



「そう考えたら、そうだね、うん当たり前だよ」


「そうだね、私も欲しい物があったら我慢しないよ、だけど文句言って来るかもよ?」




「そうしたら簡単だよ? 「魔王と戦うのを僕ちゃん辞めた」そう言えば文句言わなくなると思うよ?」



「確かにそう思うけど良いの?」


「それで良いのかな?」



「良いんじゃない? それに何時も今日みたいな生活送るって訳じゃないよ? 食べたい物を食べて泊まりたい所に泊まる、その中に贅沢を我慢しないって言う事を加えただけだよ」



「うん、そうだね、自分達で稼いでいるんだから文句言われる筋合いは無いわ」


「私もこれからは欲しい本や道具があったら我慢するのを辞めるわ」



「うん、それで良いと思うよ!」



この日を境に僕ちゃん達は我慢をする事を辞めた。




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