第22話 ギルド婚

貴金属店に立ち寄った。


此処では特に舐められる事も無く、声を掛けて来ない。


普通に眺めている事が出来た。


やはり、僕ちゃん達は余りこういう物は得意じゃないな。


宝石や指輪は綺麗には見えるけど、余り欲しいとは思わない。


多分、ルシオラもユシーラも同じ様な気がする。


ただ、此処で僕はもう買う事を決めた物がある。



てっきり、ルシオラは知っていて告白したんだ、そう思っていたけど違うみたいだ。


よく考えたら教会で生きていたルシオラは知らないかも知れないし、知っていても結び付けなかったのかも知れない。


僕ちゃんは意を決して買う事にした。


「すみません」


「はい、何でしょうか?」


「此処にある貴金属で高級な物って何になりますか?」


「ご用命は何になりますか?」


「指輪です」


「指輪ですか? もしかしてお連れの方とお揃いの物でしょうか?」


「はい」



《三つお揃いで出来たら他には無い物が良いのですよね》


「その通りです」



「あるにはあるのですが、今当店にあるのは凄く高級な物になります、お客様で手が届くかどうか? もし手が届かないようであれば他の金属でお作りします」


「かなり高いのですか?」


「はい、何しろ使っている金属が特殊でしてレインボーオリハルコンになります」


「レインボーオリハルコン? オリハルコンじゃなくて?」


「はい、オリハルコンの中にごく稀に虹色に輝く物があるんです、それを使った指輪になります。デザインは勿論の事、他に見た事が無いので素材その物がこの3つしか存在しない可能性も御座います」



「凄いね」


「更に古代の魔法が掛かっていて一度つけたら他の方にはもう嵌める事が出来なくなります、指輪の所有者は生涯この指輪の所有者になります、デメリットとしてはそう言う物なので転売が出来ない事でしょうか? あと、所有者が亡くなると砕けるという話も聞きますがこれは本当かどうか解りません」


本当に良いなこれ。


「それで金額はどの位になるのでしょうか?」


「はい、金貨100枚になります」


「それじゃ買わせて貰うよ、その代わり立会人もお願いして良いですか?」


「やはりギルド婚をお考えだったのですね、書類を用意して、オーナーを呼んできます、すみませんがお支払いをお願いして良いですか?」


「これで大丈夫ですか」


「これは勇者の身分証明ですね..勇者様でしたか? 大丈夫ですよこれ程信頼のある物はありません」





「何か買われたのですか」


「あれっソードは欲しい物があったんだ意外」


「うん、指輪をちょっとね」





「指輪を買われたのですか?」


「へぇーそう言う趣味もあったんだね」


「違うよ、あのさぁ、さっきの話なんだけど、2人ともこれから死ぬまで一緒に居たいそう言う事で良いんだよね?」




「そう言う事よ、まさか今になって違うとでも言うの?」


「もしかして怖気づいた?」


「違うよ! それなら良かった、そうじゃないと指輪を買った事が無駄になるから確認しただけだよ?」




「指輪と私達が関係あるのですか?」


「指輪?」


やっぱり、知らないんだな、まぁ聖女や賢者じゃ解らないのも当然かな。







「ソード様、準備が出来ました」


「僭越ながら、立会人の欄には私オーナーのゼンドルと先程ご案内したマリルのサインをして置きました、こちらにサインしてギルドに提出すれば、登録が終わります、まずはサインをお願いいたします」



「ソード、いったいこれは何?」


「さっきの指輪と関係あるの?」



「ずっと一緒に居るんだから、結婚した方が良いと思わない? だから、これはその為の書類!」




「けけ結婚ですか!ですが結婚とは教会で行う物では無いのですか?」


「普通は教会でするんじゃないの?」



結婚には二通りある。


一つは教会で愛を誓いあいするもの、多分多くはこっちをイメージする。


もう一つはギルド婚と良い、立会人つきでギルドに結婚届を出すもの。


ギルド婚はどちらかと言えば冒険者や庶民が行う事が多い。


忙しく働く者が利用する物で、立ち合い人の前で愛を誓いあい、自分達と立会人の署名が入った書類を所属するギルドに提出する。


その方が財産を共同で管理できたり、亡くなった場合の残りの財産の所有がしっかりしているので便利だったりする。


その際に、お揃いの物を身に着ける者が多い。


本来は指輪だったのだが、時代と共に変わってきて今では剣を揃えたり、お揃いのスカーフをもったりするようになった。


ちなみに、友人が少ない等の理由で立会人が用意出来ない場合は、今回の様に物を買う時に頼む事も多い。



「教会ではお互い嫌な思い出しか無いでしょう?だからギルド婚にしようと思ったんだ」


「「ギルド婚」」



僕ちゃんはギルド婚について説明した。



「嘘っ..ソード、私をお嫁さんにしてくれるの?」


「さっきの今で結婚、嬉しいけど..ソードってせっかち?」



「確かに唐突だけど僕ちゃん達はこれから又旅を続けるんだからさぁ、ゆっくりできる時に、そう思ったんだ」


まぁ、今後急ぐ事はまず無いけどね。



「そうね、うん、そう言う事なら今しか無いよね!」


「言われて見ればそうだよ、うん」




書類にサインをして、指輪を貰った。



「ソードそれでこれどうするの?」


そうか、彼女達は片手が無かった。


「これはね、左手薬指に嵌めるんだ..ルシオラ嵌めてあげるよ!」


「ありがとう、だったらソードのは私が嵌めてあげるね!」


「ありがとう」



「....」


「どうしたんだユシーラ? ユシーラも嵌めてあげるよ!」


「ソード、私、私、左手が無い、結婚出来ないの..」


「あっゴメンね、その場合は右手の薬指に嵌めるんだよ? 嵌めてあげるね」


「そうなんだね!良かった」



指輪を身に着け、書類を貰った。



「それじゃ、今直ぐギルドに行こう!」


「うん、それが良い」



「いや、まだ..」




「ソードはまだ結婚したくないの?」


「違うよルシオラ、そんな訳ないよ..そうだよね?」



まるで、戦闘の時のような目になっている。


これは...今行くしかないな。



「そうだね、今行こうか?」



「うん、それじゃ直ぐに行こうね」


「うん、最速でいこう」




本当はセトがギルマスになったら一番に提出しようと思っていたんだが...


まぁ良いか..2人とも笑顔だし今更言う必要も無い。



結局、そのまま、三人で書類を出しに直ぐに行った。




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