第24話 三人の夜
食事は個室にして正解だった。
貴族だったセトは兎も角、僕ちゃんもルシオラもユシーラも正式のマナーを知らない。
しいて言えば、ルシオラはまだ綺麗に食べるが、僕ちゃんもユシーラも綺麗とは言えない。
しかも、よくよく考えればルシオラもユシーラも片手が無いんだから更に上手くは食べられない。
当たり前だ、僕が直ぐに気づくべきだった。
「ルシオラ、ユシーラ食べさせてあげるよ!」
「「えっ」」
「それじゃ、ルシオラから、ほら、あーん」
ルシオラは恥ずかしそうに顔を赤くしながら、口を開けた。
「あーん」
嬉しいけど、何だか恥ずかしいわね、これ。
「次はユシーラね、はい、あーん」
「あーん、もぐもぐ、これはこれで良いわね..」
これはこれで何だか嬉しい。
うん、幸せを感じる。
《こんな事をして貰えるなら片手が無くても良いかもしれない》
《いいいな、これ》
「気が付かなくてごめんね! 次からはフォークで食べられるように、ちゃんと切った状態にして貰うから」
「えっ、そうよね..」
「あはは、そうして貰えると助かる」
食事を終えて宿に帰ってきた。
つい意識してしまい、どうして良いか解らなくなる。
何か話さないと、間が持たない。
どうしようか? 考えていると、ルシオラが話しかけてきた。
良かった。
「あのさぁ、ソードはい! これ読んで!」
「これはさっきの報告書だよね! 解ったよ」
報告書の内容はルビナスさんについてだった。
僕ちゃんの子は身籠ってなくて、今現在はもう既に再び嫁いだそうだ。
「まぁ、彼女は未亡人だし、次の男性を探すのは仕方ない事よ」
「そうだね..うんそうだ」
「まぁ、帰れる可能性がある旅では無かったん、だから仕方ないよ」
「うん、ちょっとがっかりしたけど、結婚したなら多分幸せになれるだろうから良いや!」
「そうそう、もうソードは2人もお嫁さんを貰ったんだから、気にする必要は無い筈よ..それより私達の事を考えてね!」
《いや、それもそうだけど、ルシオラが依頼したのは多分、この街にきてセトと別れた時だこんな短期間で調査して連絡が取れるのだろうか?》
「あっ、ソードが寂しそうな顔をしている! そんなに未亡人が良かったの?」
「ソードーっ」
「違うよ、その話はもう大丈夫だから..そうじゃなくて、多分その調査依頼を頼んだのは此処についてからセトに頼んだんだよね? 凄く速いなと思って」
連絡が速い..それも頭に入れないといけない。
「普通じゃない? ギルドからギルドへオーブで連絡をして貰って、そこの冒険者にお願いして状況を聴いて来て貰うだけなんだから」
「オーブってそんな使い方しちゃいけないんじゃないか? 本来は緊急連絡だけだよね?」
「それは元勇者でこれからギルマスになるセトですからどうにかなるわ」
「それに勇者絡みなら使っても問題無し」
「そうか、オーブか、すっかり忘れていたよ」
オーブの連絡速度、それも今後考えないと不味いな。
「確かに、そうそう使わないわね...そうだ、多分二枚目に彼女からの言付けが書いてあるはずよ!」
あの日は私には夢の様な一日でした、気に掛けて頂き有難うございます。
でも夢は覚める物です。あれは平凡な女と英雄がすれ違った一夜の夢です。
夢から覚めた私は現実世界で生きて行かねばなりません。
頑張って生きていきます。
勇者になられたそうですね、おめでとうございます!
だから勇者様も頑張って生きてください!
オーブは長い時間は使えない、多少は端折られているかも知れない。
ただ、一杯一杯だった、僕ちゃんを体を使ってまで慰めてくれたのは事実だ。
「頑張って生きて下さいか」彼女らしいね。
愛ではないのかも知れないけど「恩」は忘れないよ。
君は打算でなく僕ちゃんに接してくれた数少ない人だからね。
「もう良いんじゃないかな?」
「うん、さっきも言ったけど、幸せならそれで良いよ..」
また会話が止まってしまった。
よく考えてみたら彼女達と夜を過ごした事は無い。
テントも別だった。
「さてと、最初はルシオラに譲るわ、ソードはさっさとシャワーを浴びてきなさい!」
「えーと」
「さっさと行く!」
「はい!」
「ユシーラ」
「ほら、お待ちかねのソードだよ? そんな顔しないの! 過去は過去!これからはソードだけの物になるんだから!」
「それもあるけど、私何すれば良いか解らないのよ、前の時はそのね」
そうか前は、薬使って無理やりしていたんだっけ。
「やりたいようにやれば良いのよ..貴方がソードにしてあげたい事全部してあげれば良いわ、それにソードだって2回目で、最初の相手は見栄えは兎も角未亡人だったんだから問題無いんじゃないかな? 折角、最初を譲ってあげたんだから楽しみなさいよ..あっ終わったら呼びに来てね! 隣の部屋で待っているから!」
「あの、一晩譲ってくれるんじゃないの?」
「そこ迄は優しく無いわよ! 私も..最初を譲ってあげただけでもかなり妥協しているのよ!」
「そうね..ごめんなさい」
ルシオラが乙女になっているわね、耳まで赤くして可愛いわね。
前とは全然違うわね。
こうなるまで辛い事ばかりだったんだから..
「それじゃ、私はもう隣の部屋に行っているから後でね!」
「もう少し、ユシーラお話しない?」
「ソードが出て来た時二人いたら気まずいでしょう? 良い!しっかりして、ソードがシャワーから出て来たら今度はルシオラがシャワーを浴びるのよ、解っているよね?」
「ううっその位は解る」
「それじゃ頑張って」
行っちゃった..どうしよう?どうしよう?私ちゃんとしたのって、した事ないのに..
「ルシオラお待たせ」
出てきちゃった。
「わわわ私もシャワー浴びてくるわ」
ルシオラは今迄悲惨だったから最初は経験豊富な女として(前世)譲ってあげないとね。
上手く行かなかった場合も慰めてあげれるから後を選んだんだよ。
聴くのも悪いわね、ノック以外は聴こえないサイレスの魔法を掛けた。
随分頑張るのね、本2冊も読み終わっちゃったわよ。
トントン..トントン
ようやく終わったのね。
「ソードは?」
「シャ、シャワーを浴びているよ」
「どうだったのかな?」
嬉しそうなのは解る、だけどどうして此処まで顔が赤いの?
凄く恥ずかしそうに俯いているけど..まさかソードがアブノーマルだったとか?
「うううっ凄く恥ずかしかったの、嬉しいけど、凄く恥ずかしいのよ、結婚しているけどお嫁さんに行けない位恥ずかしいの..」
まぁルシオラは本当の意味では初めてだからそうよね。
「まぁ良かったじゃない! それじゃ選手交代ね」
まぁ私は取り乱したりしないよ...
「ううん、頑張ってね..」
何を?
「それじゃ終わったら今度は私が呼びに来るから三人で一緒に寝ようか?」
「うん、ありがとう...頑張ってね」
だから何を?
「あっ、ソードシャワーから出たんだね?それじゃ私も浴びてくる」
「うん」
あれっ何でソードもついてくるんだろう?
「ソード、流石にシャワーを見られるのは恥ずかしいからベットで待っててくれる」
「えっ、まぁ良いや..暫く此処で待っているから問題が起きたら声かけてね」
「えー、まぁ良いや覗かないでね」
シャワー浴びている間も待ちきれないのかな?
可愛いわね、本当に!
あっ! あれっ! 私片手しかないから真面にシャワー浴びれないじゃない...
「ソード..ゴメン!」
「言わなくて大丈夫だよ、さっきもうそうだったから」
「ごめん」
さっきのルシオラの気持ちが凄く解ったわ。
満足に体が洗えないから、最初のシャワーでソードに全部洗って貰って。
いたした後の片付けも全部ソードがして..凄く恥ずかしい。
そして、一番恥ずかしいのは、終わったあとの体も全部ソードに洗って貰わなくちゃならない事だ。
しかも下半身まで。
トントン、
「終わったよ」
「どうだった? 恥ずかしかったでしょう? 」
「ルシオラが言っていた意味が解った..これは本当に恥ずかしいわ..」
手が片手無いから、いたしている時も上手く隠せないし、恥ずかしくても顔も全部は隠せない。
「そうでしょう? 私さっきは顔から火を吹いちゃうかと思った」
「そうだよね、だけどこれは慣れるしかないと思うよ」
「そうだね、それでソードは?」
「もう寝ちゃったから、左右に分かれて川の字で寝ない?」
「うん、それが良いね..」
こうして三人の夜は過ぎていった。
2人が、2人で入って協力して体を洗えば良いという事に気が付くまで一か月も掛かった。
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