第20話 セトの旅の終わり

リアスに無事着いた。


当たり前だよね、僕ちゃんが居るし、他のメンバーだってAランク以上。


そのメンバーなら大通りを歩いていれば何も起こる訳はないよね。


まぁゴブリンにオーク、オーガは居たけど、全然問題ない。



「着いた、着いた、まずは宿を取ろうか? 今迄みたいに質素な所じゃ無くて一番豪華な宿が良いな」


「ソード急にどうしたのよ!」


「セトどうした」


「倹約位はした方が良いぞ!」


ここははっきりさせた方が良い。



「皆に言うけど、勇者も聖女も賢者も教皇より偉いんだよ..これ位は当たり前だよ」


「だが、俺たちのお金は税金や支援者が集めた物だ」


「そこが僕ちゃん間違いだと思うんだ、セトもルシオラもユシーラも良い人だから洗脳されちゃっていたんだよ?」


「洗脳? 俺がか?」


「私がですか?」


「私が?」



「そうだよ!僕ちゃん達は既に対価を払っているんだよ、誰もが嫌がる魔王討伐という対価をね! 命がけの仕事の対価なら幾ら貰っても良いんじゃないかな?」



「確かにそうかもしれないだが、なんだか使いづらかったな」


「教会育ちの私は、そう言う事に疎くて」


「私も基本研究畑なので」



「そう言う所に漬け込まれたんだよ! 実際に僕ちゃんは皆と別れて冒険者をしたけど、普通に依頼を受けるだけで大金を掴んだよ! たかだか、ワイバーンの依頼だって高額なんだから、魔王を倒せなんて指名依頼を冒険者として受けるなら、国ごと全部貰ったって釣り合うと思うんだ! だから幾ら贅沢しても良いと思わない?」



「ソードはそうだけど、私は元聖女だわ」


「私も元賢者」



「それは気にしないで良いよ?二人が欲しいなら王女のティアラだって国宝級の宝石だって僕ちゃんが貰ってあげるよ」


「そんな幾ら何でも」


「そこまでしなくても」


「もう決めたんだ、自分にも、仲間の為にも妥協も安売りも僕ちゃんはしないって」



「解ったわ、ソードに任せるわ」


「ソードが好きなようにして良い」


「それじゃ任せてね」



結局、僕ちゃんはリアスで一番高級なホテルの最高の部屋を一つとった。


本当は3部屋とろうとしたんだよ?


だけど、頑なにルシオラもユシーラも反対するんだ。


「これからの旅は三人で連携するんですから1部屋で充分です、それに片手ですから離れたら不便です」


「私もそう!片手じゃ不便だから」



「だけど、女の子なんだからそんな」


「責任とる約束です! だから良いんです! まさか責任取らないつもりですか?」


「まさか約束やぶるの?」



「はぁ、2人が良いならそれで良いや」



結局、勇者の身分証を出して国払いで宿を取った。


セトはこういう勇者の身分証明の使い方をしなかったが、僕ちゃんは使う。


「そんな使い方があったのか?」


「セトは知らなかったのか?」


「お金も送金されていたからな」



本当に彼奴らはクズだ、まぁ聴かないセトも悪いんだけど。



「次はセトをギルドに送り届けたらゆっくりしよう?」


「そうね、先に終わらせちゃおう」


「そうだね」



「それじゃ行こうか? セトちゃんもしかして僕ちゃん達と別れるのが辛いのかな?」


「辛いな」


そんな真面目な顔で言うなよ..


「そうか? だったら2日間位はまだこの街に居るから、勇者とか剣聖とか聖女、賢者じゃなく、普通の友達として遊ぼうよ! どうだ」


「良いな、それ、うんそうするか?」



「僕ちゃんは、メグちゃんに会うのが楽しみだ!」


「おい..」



僕ちゃん達はセトをギルドに送って行く。


これで、セトの旅は終わる。




親友セトの為に ちょっときつい展開があります

セトをリアスの冒険者ギルドに送り届けた。


こじんまりしたなかなか良いギルドだ。


此処ならセトも楽しく暮らせそうだ。


魔族領とも離れているからこの先も安全だし。


小さいとはいえ街だから充分生活には困らない。


うん、良い街だ。



「さてと、メグちゃんは何処にいるのかな?」


「お前な..」


「何だ、どうしたんだセト!」


目の前に仲の良い冒険者の男女が居た、男の腕に女がしがみ付く様に腕を絡めている。


「メグ..」


「嘘、セト..ごめんね..」



「嘘だ.うそだ..」


セトは泣きながら走っていってしまった。


「悪い、ルシオラ、ユシーラ!セトを追いかけて」


「解ったわ」


「解った」



2人が出て行くのを見てから僕ちゃんは話しかけた。


「ちょっと話がある」


メグを後ろに男が話した。


「何があったか解らないが、今はメグは俺の女だ、遠慮して貰いたい」


「もう、セトとは終わった事です」



「そう、僕ちゃんは勇者ソードなんだけど? それでもそれを通すのかな? 斬り捨てても良いんだけど?」



「勇者様..すみませんでした、話を聞きます」



今のギルマスに話をし部屋を一つ用意して貰った。



「.....」


「........」



流石に僕が勇者だと聴いて震えている。


しかも剣聖の時の悪評を聴いているから余計怖いだろうね。



「僕ちゃんはね、メグ君を凄く評価してたんだ」


怒鳴られないと解ると少し顔色が明るくなった。


「勇者様がですか?」


「セトは偽の勇者だったけど、本当に凄く戦っていたよ? そして何時か君の元に帰るんだって言っていた」



「ごめんなさい、私、セトはもう死ぬんだって思って、そうしたら凄く寂しくて...」



「そう、それで人類の為に戦っているセトを捨ててそんな男を選んだと?」


「そう、メグを責めないで欲しい、俺が誘ったんだ」


「きみは?」


「俺の名前はガンダル、メグとパーティーを組んでいる」



「それで、セトが帰ってきたんだけどどうする?」



「俺とメグは付き合っているんだ」


「セトには謝るしかありません」



「そう、ガンダルを取るんだね? 後悔しない? それは真実の愛なのかな?」


「俺はメグを愛している」


「私もガンダルを愛しているんです」



「なら良いけど? 一応二人がそのまま付き合った場合と、別れてセトと付き合った場合について話すね」


「幾ら聴いても俺の気持ちは変わらない」


「私も変わりません」



「まぁ、聴いてよ! まず、そのまま付き合った場合ね、君達はもう冒険者は辞めた方が良い!」


「何でそうなるんだ」


「セトは此処のギルマスになるんだよ..居ずらいでしょう?」


「なら、他のギルドへ行くわ」



「暫くはそれで良いよ? だけど、僕ちゃんがセトの後見人になるからセトは出世するよ! 将来的には全ギルドの統括になるかも知れないよ? そんな彼を振るんだ、ギルドでの立場なんて君達にあると思う? 多分上級ランクには慣れないよね?」


「それは」


「酷いです、そこまでする何て..」


「だけど、それ以上に君たちは辛くなるよ? 此処のギルドのギルマスになったのは、メグ、君が居るからなんだ、これは教皇から世界各国の王が知っている、それなのにセトを振ったらどうなるのかな? 今の君は死に物狂いで戦っているセトを待っている少女、だがそれがセトが命がけで戦っている間に浮気した女になってしまう。 これを僕が教皇や帝国のルビス3世に報告しなくちゃいけないんだ...世界の国王全員に嫌われるね、教皇も多分怒るから..君達も君達の家族や知り合いももう教会で治療は受けられないかもね? 多分ポーションももう買えないね! 帝国の優れた武器も買えないから冒険者は辞めた方が良いね!」


嘘だけど、その気になればこれ位僕ちゃんは出来る。



「そんな、冒険者でいられなくなるんですか? 俺」


「そんな夢を諦めるなんてしたくない」


「それで終わらないよ? 僕ちゃんにとっても顔が潰されて、親友を振った女なんて他人だから助けないよ! 僕ちゃんの友達にいつも悪口や愚痴位は言うと思う! 友達って教皇や国王ね? 仕方ないよね..嫌いな相手の悪口位人なんだからさ! だけどそうすると世界の貴族全員に嫌われて市民扱いされなくなるかもね?スラムに住むしかないんじゃないかな? まぁ盗賊や娼婦になって生きるしかないんじゃない?」



まぁ教皇や王様に悪口言えばそうなっても可笑しくないよね?



「あの、勇者様、それ本当に俺にするんですか?」


「私はもう生きていけない、そう言う事なの..」



「真実の愛を貫いて、それしか僕ちゃん言えないな..で今度は君がセトを選んだ場合ね!」



「.....」


「......どうなるんですか?」



「セトはギルマスだから、可能なら冒険者は辞めて欲しい、だけどセトってSSSランクの冒険者これはまだ生きているね! まぁ片手無いから実質Aランクだけど、安全な場所だから昔の約束の様にパーティーを組んでも良いんじゃない? 君のランクは知らないけど最高峰のSSSランクパーティーのメンバーになるよね?」


「SSSランクパーティーのメンバーですか...」


「それだけじゃないよ? 僕が手が足りない時に力を借りるから勇者パーティの補助メンバーだね」


「勇者パーティーの補助メンバー」



嘘でしょう、これは冒険者を極めたそういう状態じゃないの。



「それに、僕ちゃんが聖都に帰った時に君の事を伝えるよ、勿論浮気は口を噤む! だから教皇も各国の王も君の名前を覚えるね!」


「凄い..」



世界中に私の名前が知れ渡るの..


「多分、吟遊詩人が歌を作ったりするんじゃないのかな? それにセトは何時かは総括になるから総括夫人に将来なるね」



「あの」


「それだけじゃない! その結婚式には僕ちゃんが参加するから、当然式は教皇が挙げる! 更におまけだけど、片手が無いセトでもワイバーン位は狩れるから、大きな屋敷位直ぐに買える、何だったら僕ちゃんが将来貰ってあげる」


「本当?」


「勿論、あっそうか? セトは勇者じゃないから、今度話し合って何処かの国の爵位でも貰ってあげようかな? そうしたら子爵夫人とか?」


「爵位..」



これでどうだ? 見た感じガンダルが鉄の剣でメグが銅の剣だ..お金が無いのは直ぐに解る。


これでもガンダルを選ぶならそれで良い。


勿論手出しなんて絶対にしない、助けもしないけどね。


此処まで言っても動かないなら、それは真実の愛なのだろうから諦めるしかないな..





「さぁ、メグ、どっちを選ぶか聴かせて欲しい、意思は尊重するよ!」



「私が間違っていました..私は今でもセトが好きです! ううん愛しています!」



「良かった、これで僕ちゃんの顔も建つ、ありがとうメグ、君は仲間だ!」



「私が勇者様の仲間!」


「セトの恋人なんだからそうでしょう?」


「そうですね!」



「おい、メグお前は俺を..いや、それより俺はどうなるんですか? 絶対にセト様や勇者様に嫌われましたよね!」


「そうだね! 今君は何ランク?」


「Dです」


本当に低いな...生活に困る筈だ。



「それなら、そうだ、君はメグを妹のように思ってパーティーを組んだ、そう言う事にして貰おうかな? その代わりB級の推薦状を書くよ、悪いけど聖都で頼むね、流石にセトに会わせたくないからさぁ..どう?」



「良いのですか?」


「良いよ、それにこれとこれとこれもあげるよ...ちょっと待ってね!」



僕ちゃんは収納袋から 鋼鉄の剣、ポーション、金貨3枚をとりだした。


鋼鉄の剣の柄には、剣聖ソードと彫ってあげた。


剣なら、勇者よりこっちの方が良いだろう。



「鋼鉄の剣に高級ポーションに金貨..」


「更に柄には僕ちゃんの名前を書いておいたよ! 剣聖の愛刀を貰ったって自慢になるよね? これでどうかな?」


「充分です、有難うございます」



安い愛だね..これでセトが喜ぶなら充分だ。



「それじゃ、ガンダルはもう行ってくれるかな? 早目に此処を出て行ってくれると助かる」


「直ぐに宿を引き払っていきます」


「そう、それじゃ悪いから馬車のチケット代にもう1枚金貨だすよ、これなら今日中に出ていけるよね?」


「はい、直ぐに出て行きます」




「あの、私はどうすれば良いのでしょうか?」



「仲間がセトを連れにいったから、セトと上手くやって! ガンダルは?」


「お兄さんみたいで世話になった人でパーティー仲間」



「さっき謝ったのは?」


「セトが大変な思いしていたのに自分だけ楽しい生活を送っていたから、でどうでしょうか?」


「うん、良いんじゃない!」







それから暫くしてルシオラとユシーラに連れられてセトが帰ってきた。


あはは泣いてやんの!



「今更、話す事は無い、俺は遅すぎたんだ..」


「セトは何を泣いているのかな? 悪い癖だよ! 何時も僕ちゃんの言う事聴かないで突っ込むよね? 誤解みたいだよ!ちゃんと話して!」


「誤解? 」


「そうだよ!ちゃんと話して! メグもあの場合は直ぐに追いかけなきゃ駄目だよ!」


「ごめんなさい!」



少し、話しているとセトの顔が笑顔になった。


メグも..顔を赤くして凄い笑顔だ。


女って怖いな、本当にそう思った。


だけど、セトが幸せそうだからそれで良いや。



メグは僕ちゃんにとって仲間じゃない。


しいて言えば、セトの飼っている猫みたいなものなんだよ!


親友が飼っている猫ならエサやおやつをあげるよね?


だけど、知らない猫にはエサなんてあげない..それだけだよ!



本当の事を知ったらセトは怒るだろうな!


だけど、セトは僕の親友だから、セトが欲しがるなら王女だろうが王妃だろうが貰ってあげるよ。


それだけの事はもう世界に対してしているんだから。


これは僕ちゃんが死ぬまで黙っていれば良い事だ。


僕ちゃんは馬鹿だからこんな事しか出来ないんだ..悪いね。

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