第19話 魔王と魔族
「人間側が戦力を集結しているだと」
「はい魔王様」
人類は何を考えているんだ..そんな事をしたら神と戦った時の神魔戦争と同じになるでは無いか。
あの時は神も邪神も魔族も滅びかかった。
さしずめ相手が人間だから人魔戦争という事になるのか。
全面戦争、それだけは避ける不文律があった。
特に取り決めは無いが、お互いに全滅を避けるための常識があった筈だ。
だが、実際に各国の強者が終結している。
もしかしたら、聖剣の入れ替えがバレたのか?
確かにあれは常識破りだ。
あれが元で全面戦争になるのか?
聖剣と勇者パーティーが勝てないならそうなるのかも知れぬ。
我々魔族は勝ち過ぎたのかも知れぬ。
原因が我々にある、だが、このまま座している訳には行かない。
もう、「何でもあり」の戦争が始まる。
ならば、こちらも手をこまねいている訳には行かない。
「その話が真実なら、大量転移魔法を使え! 各国が手をとり合い我らを襲って来るのならその前に叩かないといけない」
「はっ」
「魔族を動員して聖都を襲い、各国が手をとり合う前に始末をつけるのだ!」
こうして聖都の周りには魔族の軍隊が転移されていった。
ただ、真実かどうかは慎重に考えなくてはならぬ。
もし、全面戦争を人間側が考えて無いなら、これは行ってはいけない事だ。
魔族側が全面戦争の引き金を引く事になる。
「魔王様、部隊の一つから連絡がありました、勇者パーティーが去っていくから攻撃するかどうかの指示が欲しいとの事です!」
状態について詳しく聴いてみた。
勇者パーティーは全員片腕がない状態でしかも聖剣を持った者も一緒。
そして魔族領と反対側に歩いていっている。
何かが可笑しい。
これは、本当に勇者や聖剣に頼らずに戦う、そういう決意なのでは無いか?
《最早、勇者等は飾りに過ぎない》
《数で圧倒すれば魔族など簡単に倒せる》
《幾ら、魔王が強くても6000人の聖騎士なら倒せるだろう、最早勇者や剣聖が戦う必要が無い》
その情報から考えるなら、勇者達はその責任を取らされ、その処罰として腕を失った。
そして追放された。
そう考えるなら、人間が勇者では無く、「数の暴力」で戦う事にした。
それしか考えられない。
如何に余でも6000人の聖騎士は相手に等出来ぬ。
情報が欲しい、少しでも情報が欲しい。
「それで勇者たちの様子はどうだったのだ」
「それが案外陽気で《お払い箱の勇者様~田舎の街に逃げ帰り、魔族相手に戦わないで イチャコラとー》と歌を歌っていたそうです!」
合点がいくぞ!
もう戦う必要が無くなったからなのだろう。
魔王にしても勇者にしても常に死を背負い生きて行かなくてはならない。
その重責から完全に解き放たれたのだろう。
「捨て置け、最早勇者には何の意味も無い! それより今は人間たちに感ずかれる方が不味い! 包囲を完成する方が先だ」
勇者よお前達の戦いは今終わったのだな..これからは人類が魔族の敵だ。
最早、お前達が余の前に立つ事は無いのだろう。
「勇者よ待ちかねたぞ」
もうその言葉を言う事は無い。
だが、それを余は寂しく思う。
それから3週間後、聖都は大量の魔族に襲われる事になる。
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