第17話 世界を巻き込む
アルフでこの「忘れられた聖剣」を抜いた時からつけられている事は知っていた。
魔法を使わない状況なら斥候以上に気配の察知ができる。
これも剣聖が優れている点。
セトから勇者を取り上げて僕ちゃんが勇者になった後は普通なら死ぬ運命しかない。
今の魔王は異常な程強いのだから。
だけど、これは「自分の幸せを捨てて戦う」からの話だ。
自分達が良ければそれで良い。
そう考えれば、幾らでも戦い方はある。
世界全員で戦えば恐らく人数の多い人間が勝つ様な気がする。
命を懸けて戦う事を強いられた少女にした事を僕ちゃんは忘れない。
ローアンから聞いた教皇派の良い訳は「世界を救う為に必要な犠牲だ、1人の犠牲で世界が救われる」だそうだ。
世界を救うために犠牲になれ、それが皆の考えなら同じ様に僕ちゃんも考える。
だから僕ちゃんは聖都の人間430万人..これを魔王軍にぶつける。
常に見張りが居たから、情報を流すのは簡単だ。
簡単に言うなら「聖都ユーラシアに各国の精鋭を集める、そしてその精鋭を持って魔族の討伐を行う部隊を作り攻め込む」そういう嘘の計画を流した。
《最早、勇者等は飾りに過ぎない》
《数で圧倒すれば魔族など簡単に倒せる》
《幾ら、魔王が強くても6000人の聖騎士なら倒せるだろう、最早勇者や剣聖が戦う必要が無い》
こんな情報を織り交ぜながら、そしてその為に各国の王がユーラシアに集まるのが..今回。
という感じだ。
この情報を流した後、見張りの気配が消えた。
どう動くか解らないが、これで魔王に話は届くだろう。
最高のシナリオは、聖都を魔王軍が本気で襲う事。
これで、魔王軍の戦力が削がれれば、魔王にたどり着くまでの過程が楽になる。
もし、そうならなくても我々以外にも魔王軍は警戒し戦うだろうから、僕ちゃんたちにくる何割かは他に流れる。
それで、何人死のうが僕ちゃんは知らないけど、人に押し付ける事が間違いだと僕ちゃんは思う。
「自分でもちゃんと戦ってね」それしか言わないよ。
「勇者様頑張って」と死ぬ運命に送り込んだ他人なんて、何人死のうと僕ちゃんは痛くない。
どうなっても、僕ちゃんには良い事しかない。
僕ちゃんの予想では大群で襲ってくる可能性はかなり高い。
普通なら、それで聖都は終わる。
だが、今の聖都には各国の王が居る。
だから、各国の精鋭部隊を引き連れてきている。
聖都には、「麗しの聖騎士オルト」率いる聖騎士隊が居る。
「聖歌姫ことロザリア」率いる癒し手部隊。
それに今なら、帝国からは「血狼のフォング」率いる疾風騎士団。
王国の「インペリアルプリンスのアルト」率いる王宮騎士団。
他にも沢山の有名な騎士団や魔術部隊が居る。
自国の王が居るのだ、死ぬ気で戦うだろう。
これなら、案外良い戦いが出来るんじゃないかな?
たった3人で頑張る必要は無い、全世界を巻き込めば良いんだよ。
聖都で間に合わないなら、次は帝国の王都、全世界を巻き込んで戦えば良いんだよ。
全世界がボロボロになる位になったら魔王軍も弱体化するから、その時になってから魔王については考えれば良いんだよ。
それでもまだ手強ければ、死ぬまで逃げていれば良いんだよ。
だって、僕ちゃんなら、魔王以外なら対処できるんだから。
強くて勝てないなら、魔王城に行かなければ良いんだよ、それだけだよね。
これが第三ラウンド、聖都VS魔王軍。
まぁ確定じゃ無いけどさぁ。
僕ちゃんたちにとっては、「聖都を離れて情報が届きそうもない、安全な場所に行く」場合によってはやり過ごす。
リアスは魔族領と反対側だから、比較的安全だと僕ちゃんは思う。
だけど、万が一全方位囲まれて居たら困る。
最悪、こちら側にも魔族軍が居る可能性があるが、僕ちゃんや片腕を無くしても銀嶺の翼はAランク位の力はある。
ちゃんと準備はしたから突破は余裕だと思う。
どう転ぶのかな? 僕ちゃん的には 聖都VS魔王軍が起ると良いな。
だってその方が後は楽なんだからね。
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