第16話 和解と旅立ち

無事セレモニーは終わった。


だが、その後の会食等の行事は中止となった。


それは僕ちゃんが辞退した事もあるが、大きく変わった魔王軍との戦いについて練り直す必要があるからだろう。


勇者になってしまった僕ちゃんも出席を促されたが、辞退した。


「教皇と総括が魔族と通じていました、だからそちらの粛清を終わらせてから私が加わった方が良い」


そう僕ちゃんは伝えた。


これで、「愛し子」「人工勇者」の話に加わった者は、無罪の罪だが教皇の仲間として粛清されるだろう。


ローアンとしても反勢力の教皇派を粛清するチャンスがあるのだ殺さない訳はないだろう。


宗教者はお金には汚く無いが、権力と名声には汚いからな。


もう既に吟遊詩人に、僕ちゃんとの出会いの歌を作らせている。


「運命に導かれ、真の勇者と出会った」だって嘘じゃん。


そして、僕は時間がたっぷりあるので元のパーティーのメンバーと話している。



「ごめんなさい」


僕ちゃんは謝る事にした。


事情は事情だけど、片腕を全員から奪ってしまったのだから。




「気にする必要は無いぞ! 此処までしなければ多分俺はまだ戦い続けさせられただろうからな!」


「見抜かれてたのかな!」


「ああ、聖剣が壊された後だが、あそこからお前が俺を攻撃する理由はこれしかないな、俺もお前を追放で無く片腕を斬り落とせば..遅いな、俺はこれで良い、まさかお前に助けて貰えると思わなかった、そしてすまない、お前達はまだ死の運命から逃れられないのに俺だけが」


「うん、平和に暮らせるね、大体可愛い女の子とイチャイチャしていたのに苦しい顔をしているなんて僕ちゃんは気にくわない、書類もあるんだからさっさと行っちゃえよ! まぁ可哀想だから、リアスの街まで送っていくよ、これがセトと過ごす最後の時間だからね」


「俺の方こそすまないな!」


「謝る事は別に無いよ? 僕ちゃんは剣聖で勇者だからセトと違って いつかは魔王を倒すからね」


「お前なら出来るさ」


《馬鹿だな、それでも勝てないのはお前が一番知っているんだろう!》




「私は責任をとって貰えれば良いわ!」


「ルシオラ、さっきも言っていたけど、責任って僕ちゃんは何をすれば良いのかな?」


「私は手が使えないし、本物の聖女なのに偽物にされたかたら教会には居場所が無くなってしまいました!だから死ぬまで面倒みて下さいね!」


「死ぬまで..」


「当然でしょう? 私食事も旨く食べれないのよ? しかも住む場所にも困りそうだからね..その代わりちゃんと面倒見てくれるなら、お返し位はするわ!」


「お返しって何?」


「余伽..馬鹿じゃないの? お返しはお返しよ!」


「まぁ良いやルシオラと一緒に居るのは苦痛じゃないし楽しそうだからね」


「そう? 楽しそうね、うんそうかもね」




「私もルシオラと同じで良いわ、似たような物だからね」


「そう? だけど研究はしなくて良いの?」


「どの口が言うの? 片手が無くちゃ薬品も併せられないわ、少し落ち着いたらソードに助手をして貰うわ」


「それで良いの?」


「それで良い」




「ただ、2人とも僕ちゃんと一緒に居るという事は魔王と戦うという運命が待っているんだよ? そこには当然死もあるんだ」


「ソードばかりに押し付けられないって」


「そうだわ」



「俺だけすまないな」



「セトは気にしないで良いよ!本当に僕ちゃんにとって大切なのは此処にいる3人とルビナスさん位しか居ないからね」


「お前、今そんな事言うと、ほら」



「破廉恥ですわ、あの未亡人がそんなに良いのですか? へぇーそんなに!」


「未亡人でロリ、あれは可笑しい」



「あのさぁ..二人とも幼い子って言って無かった?」



「知らないわ」


「私も知らない」


これは確実に知っていたな..まぁ良いけどさ。



「まぁ良いや、だけど僕ちゃんにとっては大切なのは4人しか居ない、そう考えたら案外魔王との戦いも楽だよ」


「俺も加えてくれているんだな?」



「まぁ僕ちゃん変わり者だから、男の友達はセトしか居ないからさぁ」


「そうか、ソードは変わっているからな!」


「勇者なのに友達が居ないセトに言われたくないな」





ローアンとルビス3世に、肩慣らしでセトをリアスの街まで送っていく話はしてある。


「ゆっくりされたら如何ですか?」


「そうですぞ、ここ暫くイレギュラーばかりお疲れでしょう?」



「うん、だから半分は旅みたいな物だよ、ルシオラもユシーラも片手だから何処まで戦えるか様子を見たいんだ、それにセトとはもうお別れだしね!あれでも友人だからさぁ」



「偽物に勿体ない、ですが、それなら良いでしょう? 気分転換と連携の練習をしたい、そう言った事ですな」


「その通りです」


「まぁ、勇者様は本来は王や教皇より既に上です、「やる」そう言えば良いだけです」



「ありがとう、それじゃ3か月程出てくるよ、その頃にはこの騒ぎを治めて置いて下さいね?」


「「任せて下さい」」


教皇と統括が死んだんだ、正常に戻るまで1か月位は掛るだろう..そこから、まぁ良いや。





直ぐに旅の準備に移った。


「あのよ、ソードこのポーションの凄い数は何だ、まるで討伐に行く準備みたいじゃないか?」


「収納袋は皆持っているんでしょう? 別けてあげるからね」


「ただの旅に大袈裟だと思うわ」


「私もそう思う」



「うん、あくまで御守り、片手が使えない皆に何かあったら怖いからね」


「そう、随分心配性になったのね」


「ソロだったからなのかな」


「勇者のソードが居るし、片手が無くても俺たちは普通の冒険者よりは強いと思うが必要なのか?」


「だから御守り..あと、セトは有事の際に後方を頼むからこれを渡して置く」


「これは、龍の鱗..」


「そう、黒龍の鱗、服の下に巻き付けて置くと良いよ2枚しかないから1枚、背中か腹か自信がない所に巻き付けて置いて」


「解った」


「あとは魔剣グラッドはまだ持っている?」


「ああ、あるぞ」


「ならもう聖剣が無いんだから、それを使えるように腰に差しておいて、ルシオラもユシーラも一応杖は使えるようにしておいてね」


「「解った(わ)」」



「所でソード話し方が少し変わったな?」


「そうかな、何か可笑しい?」



「いや、前よりは良くなったと思う」


「そうね、まだまし」


「確かに前よりはまし」


「そう? なら良いや」



その日のうちに僕ちゃん達は旅立った。









第三ラウンドの開始だ。

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