第14話 VS 黒龍
僕ちゃんは黒龍の討伐に向った。
この獲物はギルドに渡す気はない。
僕ちゃんに必要だから。
黒龍の討伐、僕ちゃんは少し気が引ける。
何故なら、ギルドの依頼にない様に此奴は温厚だからだ。
別に悪い事はしていない、だが今の僕ちゃんにはどうしても此奴が必要だ。
此奴が救いの道だから。
僕ちゃん、お前にだけは謝るよ。
ごめん。
黒龍は森の奥の岩場に住んでいる。
噂では黒龍や白竜は魔王に匹敵すると言われている。
僕ちゃんや勇者は、もうオーブでは強さを計れない。
多分オーブで計れる強さを越えているんだ。
だったら、強さを測るにはより強い者と戦うしかない。
此奴がもし倒せるなら、魔王と戦っても勝てる可能性がある。
そして、もう一つの事実からどうしても此奴を倒さなくてはならない。
岩場で彼奴は寝ていた。
小山程あるその巨体、魔王に匹敵する。
その理由も解る。
「黒龍、僕ちゃんはお前を討伐しに来た」
此奴は悪い事をしていない、殺すのは僕ちゃんの自分勝手だ。
だから不意打ちなどしない、正面から堂々とそれが礼儀だ。
「人間よ我は討伐される様な事はしたか? 自分からは人を襲った事は無いのだぞ!」
「僕ちゃんも解っている、だがお前、いや貴方は強い、だからこそ戦う、それだけだ」
「成程! 理解した、若い龍がその強さを誇示する為により強い龍と戦うのは良くある事だ、我とて若き頃は戦った、なら受けない理屈は無い」
生まれて初めて戦う絶対強者との戦い。
体がガタガタ震えだす。
だが、聖剣が輝き始める。
やはり聖剣は特別だ、心の迷いや恐怖が一瞬で無くなる。
黒龍はどっしりと構えている。
僕ちゃんは素早く走り、聖剣を使い斬り掛かる。
ドラゴンゾンビの骨を簡単に砕き、ワイバーンをあっけなく切り裂いた、それ以上のスピードだ。
だが、黒龍の鱗は僅かに傷ついただけだった。
「ほう、人間の分際で我に傷をつけるとはお前は勇者か?」
「違う、僕ちゃんは剣聖だ」
「ほう、中々の強者だな」
黒龍はブレスを吐いた。
僕ちゃんには効かなかった。
多分、本当なら僕ちゃんは黒焦げで骨も残らない。
これはあくまでも聖剣が僕ちゃんを助けてくれた、それだけだ。
「これでも死なないとはお前は本当に人間か?」
「僕ちゃんは人間だね」
黒龍は巨体を使い押しつぶそうと迫ってきた。
僕ちゃんは交わして剣を振るう。
もうこれは勝てない。
僕ちゃんの剣は精々鱗が落とせる位だが黒龍の一撃は当たれば終わりだ。
詰んだ
「人間、もう終わりか?」
もう、精も根も尽きた。
「僕ちゃんの負けだ..好きにすると良いよ」
「そうか、良く戦った人間、褒美にこれをやろう」
そう言うと黒龍は自分の爪で体に傷をつけ何かを取り出した。
「これは?」
「我の肝だ、我が認めた人間にのみ与えるのだ、さっさと食え」
龍の肝を食う、そういう伝説を聴いた事がある。
そうすると考えられなく位強くなると聴いた。
僕ちゃんは貰った肝を食べた..凄いなこれは今迄と比べ物にならない位力が漲ってきた気がする。
「肝は龍を倒して食らう、そう聴いた気がするが」
「このたわけ者が、亜流は兎も角、龍を倒した人間は居ないわ!」
「だけど地龍は」
「たわけ者があれはトカゲだ龍でない」
話を聴くと亜流や我々が狩っている龍は..龍では無く似て異なるものという事だった。
「それでは龍を倒した伝説は」
「全て、人間や魔族が流した嘘じゃな..強者の多くもブレスで焼いたら死んだ」
「だけど、僕ちゃんは無事だったけど?」
「たわけ者、それは正々堂々と正面から来たから、手加減した..あれはそうじゃ龍で言う所のじゃれあいじゃ、下位の龍が噛みついて強さを示す、そういう物と同じじゃな、殺し合いまではせぬ、本気のブレスであれば街一つ簡単に吹き飛ばせるわ」
良かった、卑怯な方法取らずに本当に良かった。
「人間に肝を渡すなど数百年ぶりじゃよ」
「有難うございました」
「それじゃ、我はまた眠る、肝をやったから流石にな..とっと立ち去れ」
確かに強くなった気がする。
勇者パーティーには勝てるだろう。
だけど..魔王と戦って勝てるかと言えば、多分無理だ。
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