第13話 査定地獄と剣聖の怒り
ギルドには悪いけど僕ちゃんには時間が無い。
折角、こんな強い聖剣が手に入ったんだ、僕ちゃんを馬鹿にした、勇者セトや聖女ルシオラ、賢者ユーシラに仕返しをしたい。
僕ちゃんを馬鹿にした報いを思い知らせてやる!
馬鹿にして! 馬鹿にして! 馬鹿にして!
聖都にこれからセト達は行く。
そこで、叩きのめしてやる。
思いっきり恥をかかせて二度と勇者なんて呼ばれないようにしてやる。
もう、僕ちゃんは勇者セトより強い。
だけど、相手には賢者と聖女が居る。
僕ちゃんは1人だ。
三人相手にするにはまだ強くならなくてはならないし、アイテムも必要だ。
場所は、聖都、時間は勇者達が教皇に会う時、そこで思い知らせてやる。
僕ちゃんはワイバーンの岩場に来ている。
情報通り2体のワイバーンが飛び回っている。
ワイバーンの討伐は意外に簡単なんだよ、上級冒険者でパーティーなら1体は簡単。
空に飛びあがる前に殺しちゃえば良いんだ。
だけど、2体になると極端に難しくなる。
一体を倒している時にもう一体が飛び上がる。
そして襲ってくる。
その為、2体相手となると20人以上のA級で襲い掛かるのが通常。
最も、岩場に陣取られると近づいてくるのが解るから、討伐は凄く難しくなる。
恐らく討伐はまず無理だ。
だが、僕ちゃんは違う、1人で戦いを挑むから関係ない。
岩場に隠れながら近づき一気に斬り捨てる。
可能ならこの時にもう一体のも、無理なら襲ってきた時にそのまま殺す。
それだけで良い。
見つけた..一気に距離を詰める。
まだ相手には見つかっていない..
「ぐわあああああっ」
もう遅い、そのまま一気に斬り掛かる。
狙うはオスの大型個体、あっけなく首がそのまま摺り落ちた。
メスが飛び上がる前にそのまま切り伏せる。
風の刃で斬れる、この聖剣だからこそ出来る事だ。
以前はワイバーン相手に4人で苦戦した。
それが僕ちゃんだけで倒せる、亜竜とはいえこんな簡単に倒せるなら、行けるかもかも知れない。
そのまま収納袋に突っ込み、次に向かった。
次が今回の本番、ドラゴンゾンビだ。
本来なら臭気をまき散らして近づくのも困難。
剣聖だけなら無理。
だがこの聖剣には「聖なる加護」がある。
肉体のあるドラゴンなら怖い。
だが肉体の無いゾンビならブレスも吐かないしタダ強いだけだ。
なら巨大なスケルトンみたいな物だ。
依頼は調査だけだけど、そのまま討伐して帰れば良いはずだ。
確かに大きいし臭気をまき散らしている。
普通ならこの臭気に触れたら死んでしまうけど、聖剣がある。
実際に此処まで苦しくないのだから守られているのだろう。
だったら、簡単だ、むき出しになっている、コアをただ破壊すればそれで良い。
それだけで終わる。
ちゃっちゃと終われせて次の塩漬け依頼を聴かないと、時間から考えて余り時間はとれない。
大物を倒して更に実力をつけないと..
僕ちゃんはギルドに戻ってきた。
「剣聖様、はぁはぁどうにか査定も終わりまして、ギルドカードに振り込み終わりました」
「うん、ご苦労様、それで今日も終わらしてきたんだけど、査定と買取お願いね、流石に今日のは此処に入らないから、裏で出すよ」
「....入らないのですか?」
「うん、入らない」
だったら昨日も裏に出してくれれば良いじゃないですか?
まぁ言えませんが。
「それじゃ出すよ」
何よこれワイバーン2匹にドラゴンゾンビの死体..どうしろって言うの?
だだでさえ、昨日のオークの肉を凍らせて倉庫に保管しているのに、これじゃ倉庫も一杯になるわ。
「さすが噂に聞く収納袋(特大) こんなに入るなんて僕ちゃん思わなかったよ?」
「そうですね、あはははっ ギルマス呼んできますね! 少し待って下さいね!」
もう、どうしようもありません。
「また大変な事になりました、直ぐに来てください!」
「あのよ、剣聖様絡みかな?」
「そうです!」
「行きたくない」
「駄目です!」
「仕方ないな」
「剣聖様、これは一体!」
「この間受けた、ワイバーンの討伐とドラゴンゾンビの調査です、まぁ面倒くさいからドラゴンゾンビは討伐しちゃったよ」
そんな簡単に討伐する物じゃないだろう?
ワイバーンは兎も角ドラゴンゾンビは勇者パーティーが全員揃ってなければ討伐なんて依頼しない、だから調査なんだが。
「有難うございます、剣聖様、早速今日も徹夜で査定させて頂きます」
「うん良い心がけだね! それで相談なんだけどさぁ、僕ちゃんこんな雑魚の討伐じゃ満足できないんだ..この辺りで一番の大物を教えてくれない?」
「強さなら、黒龍様です」
「黒龍様? 何で龍に様をつけるの?」
「それは一部の者が神として崇めているからです」
「そう? 解ったよ、それじゃ査定宜しくね」
ギルドを出た後、僕ちゃんは教会を訪れた。
この街の責任者はローアン大司教、教会重鎮だ。
だから、殆どの情報は把握している筈だ。
勇者達について、聴きたい事があるから聴きに行った。
こういう時剣聖が便利だ、立場が形上だから直ぐにトップに会える。
「これはこれは剣聖様、当教会には何か御用でしょうか?」
「勇者パーティーについて知っている事を教えてくれるかな?」
「勇者様の事? はてさて何の事でしょうか?」
「とぼけるなら」
「おや、剣を抜くのですか? 腐ってもこのローアン、そんな物は恐れません、斬るなら斬りなさい」
鎌をかけて正解だった。
命に代えても守らなければならない秘密がある。
そういう事だ。
「流石は聖職者だ、死を恐れないなんて感心しちゃうよね、だから僕ちゃんはローアンには手を出さない、娘と孫に手を出すよ、お孫さん可愛いよね? 8歳位かな? いきなりお母さんと性奴隷として売られちゃったら泣くんじゃないかな?」
「貴様、それでも剣聖か? 恥を知れ!」
「だけど、そうされる位の事があるんじゃないか? それに僕ちゃんがそれを行っても多分罪には問われない可能性も高いよ..どうする?」
動揺してるね、僕ちゃんが言った事に怒りじゃ無くて動揺..これは有罪だ。
「私は反対したんだ..」
ローアンは話だした。
話し出すと教会の事からアカデミーの事、勇者の生い立ち迄全部話した。
「女神も教会もゴミだね..ただでさえ命を捨てさせたのに、それで聖職者? まぁいいや僕ちゃんには関係ないから!」
「これで娘や孫には手を出さないでくれますよね?」
「何で? 世界を救うために犠牲に成れと言うのが教会の考えなら、ローアンも犠牲になれよな? 娘と孫を売ったお金で僕ちゃんは防具を買うからさぁ、ローアンも世界平和の立役者じゃないかな? 万が一魔王を倒せたら、ローアンが家族を犠牲にして防具を買ってくれたと言ってあげるよ!」
「や、辞めて下さい」
「僕ちゃんは小さい頃、牧師さんに人の嫌がる事をしちゃいけませんって教わったよ? 自分がされたら嫌でしょう?...だからこれで許してあげるよ」
僕ちゃんはローアンが付けている女神のペンダントを引きちぎって床に投げ捨てた。
「これを踏んづけて、糞女神って言ったら辞めてあげるよ」
「それは..出来ない..」
「なら、娘と孫は諦めて、おじいちゃーんと泣きながら売られて行くけど良いよね?」
「糞女神...これで良いのですか?」
「あーあ、大司教が信仰を捨てちゃった..良いよ、許してやるよ、だけど自分の胸に手を当てて考えてね! 貴方達がどれ程クズなのか?」
「私は、私は..」
「あのさぁ 三大ジョブでは無いけど、僕ちゃんは剣聖で女神に祝福されているんでしょう? だから僕ちゃんが言うよ、お前達は間違っているよ!」
さぁ、黒龍ぶっ殺してから勇者達を半殺しにしないとね。
勇者達も教会も国もアカデミーも全部ムカついたよ..僕ちゃん、初めて本気でムカついちゃったよ。
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